農業および農業関連で起業するには?「作る」だけでは勝てない時代に、地域と企業が取るべき戦略とは

編集部投稿者:

日本の農業は、いま大きな転換点にあります。

農林水産省のデータによれば、2024年時点の基幹的農業従事者数は111万4千人と、2000年の約240万人から20年あまりで半減しました。平均年齢は69.2歳に達し、70歳以上の層が全体の60.9%を占めています(出典:農林水産省「農業構造動態調査」令和6年)。後継者不足と高齢化は、すでに統計上の問題にとどまらず、地域農業の担い手そのものを消失させるレベルに達しています。

一方で、2024年の農林水産物・食品の輸出額は1兆5,073億円と過去最高を更新し、12年連続での最高額更新となりました(出典:農林水産省「2024年の農林水産物・食品の輸出実績」)。国内の農業構造が縮小する一方で、日本産農産物への世界需要は拡大を続けているという、対照的な状況が生まれています。

食料安全保障への関心が国際的に高まる中、農業は「衰退産業」ではなく「国家戦略産業」として再評価され始めています。世界ではAI農業、植物工場、農業ロボティクス、農業データプラットフォーム、代替タンパク質、ブランド食品など、農業周辺で巨大な市場が形成されています。国内でも自治体・金融機関・VC・商社・食品企業が農業関連スタートアップへの投資を拡大しています。

しかし、多くの地域では依然として、農業は高齢者の仕事であり、儲からない、重労働だ、新規参入は難しいという認識が強く残っています。本当にそうなのでしょうか。

現在は、「農業そのもの」だけで勝負する時代ではなく、高付加価値化・加工・ブランド化・流通改革・AI活用・半無人化・観光連携・輸出・コミュニティ形成・データ活用などを組み合わせることで、従来とはまったく異なる収益モデルを作れる時代に入っています。

特に地方自治体や地域企業にとって重要なのは、「何を作るか」だけではありません。誰に売るのか、どの市場を狙うのか、どこを自動化するのか、どこをブランド化するのか、どこで利益率を上げるのか、どこを地域産業として残すのか、という「産業設計」の視点が重要になっています。

本記事では、農業および農業関連で起業する方法について、農作物ごとのビジネスモデル、有機栽培やブランド化、半無人・植物工場型モデル、農業プラットフォーム、加工食品・6次産業化、自治体が考えるべき論点、AI時代の農業起業まで、経営・産業・地域政策の観点から整理していきます。

Contents
  1. 農業ビジネスは「生産」だけではない
  2. なぜ今、農業関連起業が注目されるのか
  3. 農業で起業する方法① 自分で育てる
  4. 農業で起業する方法② 半無人・無人農業
  5. 農業で起業する方法③ プラットフォームビジネス
  6. 農業で起業する方法④ 加工品・ブランド戦略
  7. AI時代の農業起業
  8. 自治体が考えるべきこと
  9. 農業関連で伸びる可能性がある分野
  10. 農業起業で失敗しやすいパターン
  11. これからの農業は「地域産業設計」
  12. まとめ
  13. FAQ|農業および農業関連で起業するには?

農業ビジネスは「生産」だけではない

まず重要なのは、農業ビジネスを「畑で作ること」だけで捉えないことです。現在の農業関連ビジネスは、大きく分けると以下のように分類できます。

領域 内容
生産 米、野菜、果物、畜産など
加工 ジュース、酒、冷凍食品、菓子など
流通 EC、産直、卸、輸出
ブランド 地域ブランド、高級化
テクノロジー AI、ドローン、センサー、自動化
プラットフォーム 生産者と消費者のマッチング
観光 農泊、観光農園、体験型
エネルギー ソーラーシェアリング、バイオマス
金融 農業ファイナンス、保険
データ 栽培データ、気象データ、需給予測

つまり、「農業をやる」というより、「農業周辺でどの利益構造を取るか」が本質です。ここを誤ると、とりあえず農地を借りて野菜を作るという発想になり、価格競争に巻き込まれやすくなります。

なぜ今、農業関連起業が注目されるのか

1. 食料安全保障リスクの高まり

ロシア・ウクライナ問題以降、世界的に食料供給リスクへの関心が急速に高まりました。農林水産省の発表によれば、2023年度の日本のカロリーベース食料自給率は38%で、3年連続で横ばいが続いています(出典:農林水産省「令和5年度食料自給率・食料自給力指標」)。飼料自給率に至っては27%であり、肉類の実質的な自給率(飼料を含む)はさらに低水準となっています。

日本は肥料・飼料・燃料の多くを海外に依存しており、農業は単なる地方産業ではなく、国家インフラとしての側面を強めています。自治体にとっても、農地維持・地域雇用・災害時供給・人口維持という観点で、農業の重要性は増しています。

こうした背景を受け、政府は2024年5月に食料・農業・農村基本法を24年ぶりに改正し、食料安全保障の強化を明確に政策目標として打ち出しました。農業スタートアップにとって、政策的な追い風が強まっている局面です。

2. AI・ロボティクスとの相性が良い

農業は意外にも、AIとの相性が良い分野です。収穫予測・病害予測・自動潅水・画像解析・収穫ロボット・温度管理・需給予測など、多くの領域でデータ活用が可能です。矢野経済研究所の調査によれば、2023年度の国内スマート農業市場規模は375億円に達し、2029年度には700億円規模への拡大が予測されています(出典:矢野経済研究所「スマート農業市場に関する調査(2024年)」)。

特に人手不足が深刻な地方では、「完全自動化」ではなくても、「半無人化」だけで大きな効果があります。農林水産省が実施したスマート農業実証プロジェクトでは、自動操舵・ドローン・自動給水等の導入により、水稲の繁忙月における労働時間が27%超削減された事例も報告されています。

一方で、2023年時点で日本のアグリテック関連スタートアップ数は約120社と、米国の6,319社と比較して著しく少なく、農業生産額に対する資金調達額の比率でも他国に大きく遅れをとっています(出典:Plug and Play Japan「未来を切り拓くアグリテック」)。裏を返せば、日本のアグリテック市場にはまだ大きな成長余地があるとも言えます。

3. 高付加価値市場が拡大している

単なる安価な野菜ではなく、オーガニック・機能性・高糖度・希少品種・地域限定・ストーリー性など、「高単価で売れる市場」が拡大しています。面積勝負だけではない時代になっています。また、2024年の農林水産物輸出実績では、牛肉(前年比12.1%増)、緑茶(同19.8%増)、米(2桁の伸び)など、ブランド農産物が輸出を牽引しており、日本農産物の高付加価値戦略が実際に輸出市場で機能していることが確認できます(出典:農林水産省「2024年の農林水産物・食品の輸出実績」)。

農業で起業する方法① 自分で育てる

最も分かりやすいのは、自ら農産物を生産するモデルです。しかし重要なのは、「何を育てるか」で収益構造が大きく変わるという点です。

米ビジネスの特徴

米は日本人にとって基幹食料であり、市場規模が大きい作物です。農地面積が大きく取れること、機械化しやすいこと、保存性が高いことなどが特徴です。一方で、利益率が低く、価格競争が激しく、大規模化が必要という問題もあります。特に一般流通米は、単純生産では利益が出にくいケースが多くなっています。

そのため近年は、ブランド米・有機米・輸出向け・高級飲食店向け・サブスク販売などにシフトする動きが増えています。単なる「コメ農家」ではなく、「ブランド食品企業」に近い発想で経営設計することが重要です。実際に輸出データでも、2024年の米の輸出は2桁の伸びを記録しており(出典:農林水産省「2024年の農林水産物・食品の輸出実績」)、高品質・高価格帯での海外展開は現実的な戦略オプションとなっています。

野菜ビジネスの特徴

野菜は比較的参入しやすい一方、競争も激しい領域です。しかし回転率が高く、少面積でも可能で、高付加価値化しやすいという特徴があります。ミニトマト・高糖度トマト・ベビーリーフ・ハーブ・機能性野菜などは、高単価化しやすい代表的な品目です。特にミニトマトは、施設園芸・半自動化との相性が良く、スタートアップ領域でも注目されています。農林水産省のデータによれば、施設野菜の分野は稲作・果樹と比較して若年層(49歳以下)の従事者割合が高く、新規参入者にとっての現実的な入口となっています。

果物ビジネスの特徴

果物はブランド化しやすく、利益率が高くなりやすい品目です。いちご・ぶどう・桃・シャインマスカットなどは、輸出市場でも人気があります。実際に2024年の台湾向け輸出では、りんごが前年比41.0%増と大幅に伸びており(出典:ジェトロ「2024年農林水産物・食品の輸出実績」)、品質の高い日本の果物への需要が海外で顕在化しています。ただし初期投資が大きく、収穫まで時間がかかり、天候リスクが高いという課題もあるため、短期回収型ではなく中長期の投資計画を前提とした事業設計が必要です。

有機栽培は本当に儲かるのか

「有機栽培=高収益」というイメージがありますが、実態はより複雑です。確かに単価は上がりやすいものの、収量の低下、手間の増加、認証コスト、雑草管理など追加負担も大きく、単純に有機化するだけでは利益が出ない場合が多いです。重要なのは「誰に売るか」という販路設計です。高級スーパー・富裕層向けEC・飲食店・海外市場など、価格競争が起きない販路を確保することが、有機農業を収益事業として成立させるための必須条件と言えます。

農業で起業する方法② 半無人・無人農業

近年、特に注目されているのが「省人化農業」です。

なぜ半無人化が重要なのか

完全無人化はまだ難しい分野も多いですが、「半無人」だけでも収益性は大きく変わります。自動潅水・環境制御・遠隔監視・AIカメラ・収穫予測を組み合わせるだけでも、労働時間を大幅に削減できます。特に深刻な農業人材不足が続く地方においては、省人化による効果が顕著に現れやすい環境です。

実際、東京大学発スタートアップのHarvestX株式会社は、植物工場向けにいちごなど授粉を必要とする果菜類の自動栽培システムを開発し、2024年に浜松でパイロットプラントを本格稼働させています。また、AGRIST株式会社はAI搭載の自動収穫ロボットを宮崎県を中心に全国展開するなど、農業ロボティクスの実装事例が増えています。

植物工場モデル

植物工場は天候に左右されず、品質を安定化でき、年間供給が可能というメリットがあります。特に葉物野菜での導入事例が増えています。一方で、電気代・設備投資・採算性が大きな課題です。電気代は植物工場の運営コストの中で大きな割合を占めるため、単純なレタス生産では厳しいケースが多くなっています。今後は高単価作物・医療用途・機能性食品など付加価値の高い分野へのシフトが、植物工場を収益化する上での重要な方向性です。

ミニトマト半自動モデル

ミニトマトは比較的高収益化しやすく、環境制御・自動潅水・収量管理との相性が良いため、スタートアップ投資も集まっています。特に「少人数で大規模運営」が可能になりやすい点が魅力であり、収穫ロボットの技術進化も後押しとなっています。inaho株式会社(自律型収穫ロボット)など国内スタートアップのロボットも、トマト類への対応を進めており、ヨーロッパでの実証試験も開始されています。

海外いちごビジネス

日本品種のいちごは海外人気が高く、東南アジアや中東でも需要があります。現地栽培・品種ライセンス・高級市場向けOEM販売などのモデルが登場しており、「日本ブランド輸出産業」として注目されています。ただし、かつて日本のいちごや果物の品種が韓国などに流出した過去もあり(例:レッドパール品種)、品種の知的財産保護と海外展開戦略を組み合わせて考えることが重要です。

農業で起業する方法③ プラットフォームビジネス

農業で最も利益率が高いのは、必ずしも「生産者」とは限りません。実際には「流通・情報・マッチング」を握る企業が強いケースも多くあります。

農業プラットフォームの構造

国内では産直EC・農家マッチング・共同物流・市場価格データなどの領域で企業が成長しました。プラットフォームが強い理由はシンプルで、「農地を持たなくても規模拡大できる」からです。農業そのものは土地制約がありますが、データや流通は拡張性があります。

産直ECの市場は拡大を続けており、コロナ禍以降に加速した消費者の直接購入ニーズが、農家と消費者をつなぐプラットフォームへの需要を後押ししています。農業プラットフォームは、農家の手取りを改善しながら中間流通コストを削減できる構造を持っており、価値提案が明確な事業モデルです。

地方自治体にとって重要な視点

自治体も、農家への補助金支援だけでなく、「地域流通基盤」の整備という観点が必要です。地域共同配送・地域ブランドEC・データ共有基盤・輸出支援などは、自治体主導でも十分に価値を発揮できる取り組みです。特に輸出については、2030年までに農林水産物・食品の年間輸出額を5兆円に拡大するという政府目標がある中で(出典:農林水産省「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」)、地域ブランドを国際市場に接続するための基盤整備は、自治体の重要な役割の一つとなっています。

農業で起業する方法④ 加工品・ブランド戦略

農業で最も利益率が高い構造の一つが「加工」です。

なぜ加工が強いのか

農産物は天候影響・規格問題・価格変動が大きいですが、加工品にすることで保存性の向上・高単価化・ブランド化が可能になります。農産物のままでは値崩れしやすい品目でも、加工によって収益を安定させることができます。

規格外品を活用できる

農業における加工の重要なメリットの一つが、規格外品の活用です。果物は傷・サイズ不揃い・形状の問題で廃棄されるものがありますが、ジュース・ジャム・リキュール・スイーツなどに加工すれば、品質上の問題は解消されます。廃棄コストを削減しながら収益を生み出すという観点では、加工への参入は農家にとって理にかなった選択肢です。

ブランドリキュール・クラフト飲料モデル

特に地域ブランド酒類・クラフト飲料は利益率が高くなりやすい分野です。地域の果物・ハーブ・茶葉などを活用したクラフトリキュールや地域ビール・ジュースは、「地域ストーリー」との相性が良く、観光消費や土産品としての需要も見込めます。原料が多少規格外であっても成立するため、農産物ロスの削減と収益化を同時に実現できる点が、地方にとって特に重要です。

6次産業化の本質

6次産業化とは、「生産(1次)×加工(2次)×販売(3次)」を組み合わせることです。農林水産省の令和4年度6次産業化総合調査によれば、全国の農業生産関連事業による年間総販売金額は2兆1,765億円(前年度比5.3%増)に達しており、農産物直売所だけで1兆878億円、農産加工で1兆128億円という規模になっています(出典:農林水産省「令和4年度6次産業化総合調査結果」)。6次産業化は政策的なスローガンではなく、すでに2兆円超の実市場を形成しています。

重要なのは、「全部自前でやる必要はない」という点です。生産は地域農家、加工はOEM・地域の食品工場、販売はECやふるさと納税という形でも成立します。地域全体でサプライチェーンを構築する発想が、6次産業化を現実的に機能させる鍵です。

AI時代の農業起業

今後の農業は、「勘と経験」だけで運営できる時代ではなくなっています。

AIが変える農業の現場

病害検知・収穫予測・価格予測・販路最適化・需要予測・自動発注など、多くの領域でデータ活用が進んでいます。矢野経済研究所の調査では、2024年度のアグリテック市場規模は前年度比約10%増の332億円と見込まれており、今後も拡大基調が続く見通しです(出典:矢野経済研究所「スマート農業市場に関する調査(2024年)」)。サグリ株式会社のようにAIと衛星リモートセンシングを組み合わせて耕作放棄地や農地の活用状況を解析するサービスや、AGRIST株式会社のAI搭載の自動収穫ロボットなど、実装段階のスタートアップが国内でも増えています。

重要なのは「完全自動化」ではない

誤解されがちですが、AIや自動化の価値は「完全無人化」にあるわけではありません。「人手を20%削減する」「収穫ロスを15%減らす」「病害の早期検知で農薬コストを下げる」といった部分最適の積み重ねが、農業経営の収益性を大きく改善します。特に人材確保が困難な地方では、省人化が生む経営効果は非常に大きくなります。

データを「資産」として考える農業経営

今後の農業スタートアップや農業参入企業にとって重要になるのは、栽培データ・気象データ・販売データを蓄積し、自社の意思決定に活かす「データドリブン農業」への移行です。農業は土地・労働・資本だけでなく、データが4番目の生産要素になりつつあります。政府も「スマート農業技術活用促進法」を2024年10月に施行し、アグリテック導入企業への税制優遇・融資支援を強化しており、制度面でも参入環境は整いつつあります。

自治体が考えるべきこと

自治体は、単なる補助金配布だけでは地域農業を持続させることができません。

地域ごとに異なる農業戦略

農業の最適モデルは地域特性によって大きく異なります。

地域特性 向いている方向性
大都市近郊 高付加価値野菜・産直EC・体験農業
寒冷地(北海道・東北等) じゃがいも・小麦・酪農・輸出
観光地 体験型農業・農泊・ブランド加工品
中山間地域 ブランド果物・地域リキュール・加工品
工業団地・インフラ整備地域 植物工場・施設園芸

自治体が最初に取り組むべきは、自地域の農業がどのカテゴリに該当するかを整理し、「農地維持」という手段を目的化するのではなく、収益性・雇用・ブランド・輸出・観光・加工まで含めた産業化の絵を描くことです。

荒廃農地という構造問題

農林水産省によれば、2024年3月末時点の荒廃農地面積は25.7万haにのぼり、うち再生利用可能なものが9.4万ha(37%)、再生が困難と見込まれるものが16.3万haとなっています(出典:農林水産省農業白書)。高齢化・農業者の死亡・後継者不足が荒廃農地の主な発生原因であり、「農地維持」だけを目標にした政策では根本的な解決には結びつきません。農地を経営資源として活用できる担い手(法人経営体・新規参入者・アグリテック企業等)と接続するための仕組みが、自治体に求められています。

農地バンクと担い手集積の活用

農地中間管理機構(農地バンク)を通じた担い手への農地集積率は2024年度に61.5%に達し、集積・集約化の面では一定の進展が見られます。今後は、集積した農地を活用できる経営力・資本力・技術力を持つ担い手の育成と、アグリテック企業・食品企業・外資を含む民間主体の参入促進が重要な課題となります。

農業関連で伸びる可能性がある分野

今後特に成長可能性があるのは以下の分野です。

分野 理由
高付加価値果物 輸出需要が継続拡大中(台湾・米国・東南アジア向けが好調)
半自動施設園芸 人手不足対策として即効性があり、収益性も改善しやすい
農業AI・スマート農業 市場が375億円規模(2023年)で2030年700億円超の成長予測
加工食品・クラフト飲料 6次産業化市場が2兆1,765億円規模に成長済み
地域ブランド農産物 観光消費・ふるさと納税・輸出と複数チャネルで販売可能
農業EC・産直プラットフォーム 中間流通改革と農家の手取り改善の双方に需要がある
植物工場(高単価作物) 安定供給ニーズが高く、医療・機能性食品との連携も
機能性食品・機能性農産物 健康市場の拡大と農産物の高付加価値化を同時に実現
農産物輸出支援 政府目標(2030年に5兆円)と連動した政策支援が充実

農業起業で失敗しやすいパターン

1. 作れば売れると思う

農業系起業の失敗で最も多いのが、生産に集中しすぎて販路設計を怠るケースです。「どこに・誰に・いくらで売るか」を生産前に固めることが、農業経営の基本中の基本です。特に有機農業・ブランド農産物など高付加価値路線では、販路の確保が収益性を左右します。

2. 単純生産だけで戦う

市場価格が形成されているコモディティ農産物(一般流通の米や野菜など)を、スケールメリットも差別化もない形で生産し続けると、価格競争に巻き込まれやすくなります。加工・ブランド化・直販・輸出など、一般市場価格から抜け出す仕組みを事業設計の段階で組み込むことが必要です。

3. 補助金依存

補助金を活用した設備投資は有効ですが、補助金が終了した後の収益構造が成立しないケースは多く存在します。補助金はあくまでも「事業を立ち上げる際の後押し」であり、補助期間終了後に自立できる収益モデルの設計が不可欠です。

4. 人手前提の経営設計

基幹的農業従事者が2000年比で半減し、平均年齢が69.2歳に達している現状では、人材確保を前提とした農業経営設計はリスクが高まっています。スマート農業・省力化ツール・外国人材・地域協業など、人手に頼りすぎない経営モデルを最初から組み込むことが重要です。

5. 初期投資の回収設計が甘い

施設園芸・植物工場・農業ロボットなどは初期投資が大きく、回収期間の見誤りが致命的な資金ショートを引き起こします。特に果樹など収穫まで数年かかる品目や、機械設備のリース・ローンを組み合わせた場合は、慎重なキャッシュフロー管理が必要です。

これからの農業は「地域産業設計」

今後の農業を持続可能にするためには、「何を育てるか」より「どう地域経済に組み込むか」という産業設計の発想が不可欠です。

農業と観光・飲食・輸出・加工・エネルギー・教育・データを接続できる地域は強くなります。一次産業単体のままでは、担い手不足と価格下落圧力の中で収益性に限界が出やすくなります。

農業法人の設立数は増加を続けており、法人その他団体経営体の経営耕地面積シェアは年々拡大しています(出典:農林水産省「農業構造動態調査」)。「家族農家モデル」から「法人農業モデル」へのシフトが加速する中で、経営・マーケティング・財務・IT・ブランド戦略を持つ経営人材が農業に参入することの重要性は、かつてないほど高まっています。

自治体・地域企業・金融機関・スタートアップが連携して地域農業の産業設計を行える地域は、人口減少時代でも独自の強みを持てる可能性があります。農業を「保護される産業」ではなく、「次世代インフラ産業」として再構築する視点が、今まさに地域と企業の意思決定に問われています。

まとめ

農業は依然として厳しい環境にある産業です。基幹的農業従事者は2000年の240万人から111万人へと半減し、平均年齢は69.2歳に達しています。耕作放棄地は25万ヘクタールを超え、食料自給率(カロリーベース)は38%で低迷しています(出典:農林水産省各種統計)。

しかし同時に、農林水産物の輸出額は2024年に1兆5,073億円と過去最高を更新し、スマート農業市場は年率10%超で拡大し、6次産業化の総販売額は2兆円を超えています。農業は縮小しているのではなく、構造的に再編されているとも言えます。

今後の農業起業において重要なのは、以下の視点です。

まず、農業を「生産」だけで捉えず、加工・流通・ブランド・データ・テクノロジーなど周辺領域も含めた「農業経済圏」として設計することです。次に、「何を作るか」の前に「誰に売るか」「いくらで売るか」を決めることです。そして、AI・ロボティクス・データを活用した省人化設計を初期から組み込むことです。

農業は「昔ながらのやり方を守る産業」から、「地域資源を活かした産業を設計する分野」へと変わりつつあります。この変化をビジネスチャンスとして捉えられる企業・自治体・起業家が、次の地域農業を作っていくことになります。

FAQ|農業および農業関連で起業するには?

農業未経験でも起業できますか?

可能です。近年は施設園芸・農業DX・加工食品・農業EC・農業プラットフォームなど、必ずしも農業現場の経験が必須でない領域も増えています。ただし、生産現場への理解は事業の精度を高める上で重要であり、研修・農業法人への就業・農業大学校などを通じた現場理解の機会を持つことを推奨します。

農業で最も利益率が高いのは何ですか?

ケースによりますが、単純生産よりも加工品・ブランド化・直販・高付加価値果物・機能性食品などの方が利益率は高くなりやすい傾向があります。プラットフォームビジネス(農産物EC・マッチング)は農地を持たずに規模拡大できる点でも注目されています。

小規模でも参入できますか?

可能です。特に高付加価値野菜・ハーブ・ブランド食品・地域特産加工品は、小規模でも成立する場合があります。まずは小さく始めて販路を確立し、需要を確認してから規模を拡大するアプローチが現実的です。

自治体が優先的に考えるべきことは何ですか?

補助金配布だけでなく、販路・物流・ブランド・人材・DX・加工を含めた地域産業設計が重要です。また、荒廃農地を活用できる担い手(農業法人・企業・新規参入者)との連携基盤を整備すること、地域農産物を国際市場に接続するための輸出支援体制を構築することも、今後の優先課題となります。

農業スタートアップへの投資環境はどうなっていますか?

国内のアグリテック市場は拡大傾向にあり、2024年度の市場規模は前年比約10%増の332億円、2030年度には789億円規模への拡大が予測されています(出典:矢野経済研究所「スマート農業市場に関する調査(2024年)」)。政府も2024年10月に「スマート農業技術活用促進法」を施行し、税制優遇・融資支援など制度面の後押しが強まっています。一方、グローバルでは2023年のアグリテック分野への投資額は71億ドルと、2021年のピーク(123億ドル)から縮小しており(出典:Plug and Play Japan)、資金調達環境は慎重に見極める必要があります。

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