人口減少が続く日本において、地方自治体がどのようにして人口を増加させているのかは、地方創生の鍵を握る重要なテーマです。本記事では、人口増減率ランキング2024上位にランクインした赤井川村や占冠村、留寿都村、南幌町といった自治体の成功事例を取り上げ、それぞれが実施している施策とその効果を詳しく紹介します。観光産業の活用や子育て支援の充実、移住者の受け入れ体制の整備など、地域の特色を活かした取り組みを分析し、人口増加を実現するための具体的な方策を明らかにします。これらの事例は、他の地域が抱える課題に対する解決策としても参考になるでしょう。
人口増減率ランキング2024上位にランクインした自治体の事例
それでは、各自治体の概要と取り組みをみてみましょう。
赤井川村(北海道)【1位】
赤井川村は、北海道後志地方に位置し、人口約1,200人の自然豊かな村です。北海道唯一のカルデラ地形を有し、酪農や野菜・果物の生産を中心とした農業が基幹産業となっています。観光地としては、世界中から訪れるスキーリゾート「キロロリゾート」や「カルデラの森」の美しい景観が魅力です。札幌市から車で約1時間半の距離にあり、余市町や小樽市にも近接する便利な立地も特徴です。
また、移住促進や子育て支援に力を入れており、新規就農希望者や若い世代に人気があります。多文化共生や観光産業を活かした地域活性化にも積極的に取り組み、「暮らしやすい村」として注目されています。
今回の調査では、赤井川村は全道で2番目に高い人口増加率を記録し、下位から数えて5番目の位置となりました。分母が小さいため、わずかな人口増加でも増加率が上がる傾向にありますが、移住定住政策の成果やキロロリゾートの外国人従業員の受け入れ、リゾート関連の移住などが、人口減少の抑制に寄与したと分析されています。
赤井川村の移住・定住支援策
赤井川村の移住・定住支援策について具体的にご紹介します。
(1)住宅建設資金の支援
村内に新築住宅を建設し、10年以上居住する方に対し、以下の支援を行っています。
■専用住宅および併用住宅: 300万円の支援金を提供。
■共同住宅: 1棟6戸以上の住宅に対し、1戸当たり300万円の支援金を提供。
また、新築住宅建設後、3年間は固定資産税が半額となる優遇措置もあります。
(2)子育て支援
子育て世代に向け、以下の支援を行っています。
■医療費助成: 中学生以下の医療費自己負担分を全額助成。
■給食費無料: 小・中学生の給食費を無料化。
■海外研修: 中学生を対象に、オーストラリアでの語学研修を無料で実施。
■スキー場シーズン券無料: 小・中学生にキロロスキー場のシーズン券を無料で提供。
(3)新規就農支援
農業に従事したい方に対し、以下の支援を行っています。
■受入研修: 2年間の研修を実施。
■農地賃貸借助成: 就農後の農地賃貸借を助成。
■ハウス建設助成: ハウス建設費用の半額を助成。
これらの取り組みにより、赤井川村は移住者の定住を促進し、地域の活性化を図っています。
占冠村(北海道)【2位】
北海道の占冠村は、総人口の約27%を外国人が占める多文化共生のモデルケースとして注目されています。トマムリゾートの開発やクラブメッドの進出が村の国際化を後押しし、外国人労働者が観光業と地域経済を支える重要な役割を果たしています。行政も多文化共生を積極的に支援し、翻訳ツールの導入や教育支援などの取り組みを展開。短期滞在が多い外国人労働者とも地域交流を深める努力が進められています。
さらに、外国人労働者とその家族の定住が進むことで、税収や交付税の増加につながり、村の財政基盤が強化されています。子どもたちは異文化環境での教育を通じ、多様性を学びながら成長しています。また、村では水資源や森林の保護にも注力し、持続可能な発展を目指した取り組みを進めています。
占冠村の成功は、日本が直面する少子高齢化や地方過疎化といった課題に対する解決策の一例を示しています。「外国人と日本人を分けない」というシンプルながら本質的な姿勢が、多文化共生と持続可能な未来を実現する鍵となっています。
占冠村の移住・定住支援策
占冠村の移住・定住支援策について具体的にご紹介します。
(1)住宅取得支援
マイホーム奨励事業: 新築や建て替えを行った方に現金50万円を交付。さらに、新築・建て替え・購入住宅の約3年分の固定資産税相当額を商品券で交付し、5年以上の定住意思がある方には追加で20万円の商品券を提供しています。
(2)就業・起業支援
■小規模事業者支援事業: 新たに事業を開始する方に商品券20万円分を交付。事業が3年以上継続し、今後も継続が見込まれる場合、現金30万円と商品券を追加で交付しています。
■雇用促進助成: 村内居住者を新たに常用従業員として1年以上雇用した場合、1名につき年額24万円、村外居住者の場合は年額6万円を3年間交付しています。
■企業誘致助成: 新規参入企業が村内に工場、医療・福祉施設、または情報通信施設を建設する際、用地取得費用の50%(上限1,000万円)を助成しています。
(3)子育て支援
医療費助成: 0歳から高校3年生までの子どもの医療費(保険診療分の自己負担分)を全額助成しています(所得制限なし)。
(4)空き家バンクの運営
村内の空き家情報を提供する「空き家バンク」を運営し、移住希望者が適切な住居を見つけやすい環境を整備しています。
(5)総合戦略の策定
「第2期占冠村まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、地方における安定した雇用の確保や新しい人の流れの創出、若い世代の出産・子育て支援、時代に合った地域づくりなど、4つの基本目標に基づく取り組みを推進しています。
これらの支援策により、占冠村は移住者の定住を促進し、地域の活性化を図っています。
留寿都村(北海道)【3位】
留寿都村(るすつむら)は、北海道後志地方に位置し、2024年時点で人口約1,900人を有する村です。札幌市や小樽市からのアクセスが良好で、羊蹄山を望む美しい自然環境に恵まれています。基幹産業は農業で、特にジャガイモやトウモロコシの生産が盛んです。
村の最大の特色は、「ルスツリゾート」を中心とした観光業です。このオールシーズン型リゾートはスキー、ゴルフ、遊園地など多彩なアクティビティを提供し、国内外から多くの観光客を魅了しています。特に冬季には海外からの長期滞在者も多く、国際色豊かな地域となっています。
また、移住促進や子育て支援、空き家バンクの運営といった住みやすい環境づくりにも力を入れており、自然の魅力と利便性を兼ね備えた村です。留寿都村の取り組みの特徴は次の通りです。
(1)観光業と経済活性化
1980年代以降、リゾート開発が進む中で観光業が村の主要産業として成長し、観光関連の雇用が増加。他地域からの転入者も増え、経済活性化と人口増加に大きく貢献しています。
(2)第6次留寿都村総合計画の策定
令和3年度(2021年度)から令和12年度(2030年度)までを計画期間とする「第6次留寿都村総合計画」を策定。この計画では、少子高齢化や社会保障費の増加といった課題に対応し、持続可能な地域づくりを目指しています。
(3)農業の振興と新規就農者支援
農業の振興のため、国の補助事業への対応強化や次世代農業の推進、新規就農者の支援に取り組んでいます。これにより、農業分野での雇用創出と定住促進を図っています。
(4)医療・福祉サービスの充実
村では診療所の新築検討や医療・介護・福祉の連携強化を進め、高齢者や子育て世帯の支援体制を充実させています。これにより、安心して暮らせる環境を整え、定住促進につなげています。
これらの取り組みを通じ、留寿都村は観光業と農業の振興、住環境の整備によって人口増加を実現しています。自然の魅力と利便性を活かしながら、持続可能な地域づくりに向けた努力が続けられています。
留寿都村の移住・定住支援策
留寿都村の移住・定住支援策について具体的にご紹介します。
(1)住宅取得支援
村内に住宅を取得する方に対し、以下の補助金を交付しています。
■新築住宅: 50万円
■中古住宅: 30万円
■建売住宅: 50万円
さらに、中学生以下の子どもが同一世帯にいる場合は20万円、国のZEH補助金の交付対象となる住宅の場合は20万円が加算されます。
(2)空き家バンク制度
村内の空き家情報を提供する「留寿都村空き家バンク」を運営し、移住希望者が適切な住居を見つけやすい環境を整備しています。
(3)子育て支援
子育て世代に向け、以下の支援を行っています。
■医療費助成: 0歳から18歳に達する日以降の最初の3月31日までの子どもの医療費を助成しています。
■不妊治療費等助成: 不妊治療を受けている方の治療費や交通費等の経済的負担を軽減するための助成事業を実施しています。
■産後ケア事業: 村が契約する施設等で産後ケア事業を受けることができ、産後の休息や子育てに役立てられます。
(4)教育環境の整備
村内には保育所、子育て支援センター、放課後児童クラブ、小型児童館の4つの機能を備えた「るすつ子どもセンター」や、小学校1校、中学校1校、村立留寿都高等学校1校があり、子育て環境が充実しています。
(5)医療体制の確立
村立の診療所を設置し、医師2名体制で村民の保健福祉の維持に努めています。
これらの取り組みにより、留寿都村は移住者の定住を促進し、地域の活性化を図っています。
ニセコ町(北海道)【4位】
北海道後志地方に位置するニセコ町は、人口約4,800人(2024年時点)の自然豊かな町です。羊蹄山やニセコアンヌプリ連峰に囲まれた美しい景観を誇り、冬は世界的に有名なパウダースノーを楽しめるスキーリゾート、夏は登山やラフティングなど四季折々のアウトドアアクティビティが楽しめます。国際的なリゾート地として知られ、外国人観光客や移住者が多く、英語対応の施設も充実しています。さらに、医療費助成や産後ケア、空き家バンク、移住相談窓口などの移住支援策も整備され、住みやすい環境が整っています。
持続可能な地域づくりの取り組み
ニセコ町は「SDGs未来都市」に選定され、環境保護や多文化共生を推進し、持続可能な地域づくりに取り組んでいます。以下に主な施策を紹介します。
(1)自治創生総合戦略の策定
ニセコ町は、2020年度から2024年度までを計画期間とする「第2期ニセコ町自治創生総合戦略」を策定し、以下の基本目標を掲げています。
■地域資源を活用した仕事づくり:自然環境や観光資源を活かし、安定した収入を得られる仕事を創出。多様なライフスタイルに対応する働き方も推進。
■移住・定住促進と子育て環境の充実:移住者受け入れ体制を整え、子育て支援を充実させることで若い世代の定住を促進。
■多文化共生社会の実現:外国人住民との意見交換や町民講座を通じ、多文化共生の意識を醸成。
■持続可能な地域経済の構築:地域経済の循環を強化し、経済基盤を持続可能な形で構築。
(2)環境モデル都市としての取り組み
■省エネルギーと再生可能エネルギーの活用:CO₂排出量の削減を目指し、エネルギー循環を促進。気候非常事態宣言を行い、水資源の保全や景観対策にも注力。
■住民参加型のSDGs普及活動:「広報ニセコ」内でSDGsに関する情報を発信し、住民の理解と参加を促進。
(3)多文化共生の推進
ニセコ町は外国人住民が地域社会に溶け込みやすい環境づくりを進めています。
■国際交流員の配置:5人の国際交流員が翻訳・通訳、観光客対応、イベント運営などを担当。
■日本語講座の提供:外国籍住民向けに初級・中級クラスを設置。
■国際交流イベント:「絵本ワールド」など、多文化を体験できるイベントを開催。
(4)地域おこし協力隊の活躍
ニセコ町では、都市部からの移住促進と地域活性化を目的に「地域おこし協力隊」を積極的に受け入れています。現在、ニセコ町では29名の地域おこし協力隊員が活動中で、多くの卒業隊員もその7割以上が町に定住し、地域で引き続き活躍しています。協力隊は農業、観光、教育、スポーツなど幅広い分野で活躍し、地域課題の解決に取り組んでいます。コロナ禍でも観光PR企画や地元食材を活用した商品の開発、情報発信サイトの構築など、多岐にわたる活動を展開しています。
ニセコ町は、豊かな自然を基盤とした観光と農業の振興、多文化共生、住民参加型の自治を柱に、持続可能な地域づくりを進めています。その取り組みは、日本全体が抱える人口減少や地域活性化の課題に対するモデルケースとして注目されています。
ニセコ町の移住・定住支援策
ニセコ町の移住・定住支援策について具体的にご紹介します。
(1)移住相談窓口の設置
ニセコ町は、町内の「ニセコ中央倉庫群」に移住相談窓口を設置し、専任の移住定住相談員を配置しています。この窓口では、移住希望者に対し、住まいや仕事、生活環境などに関する情報提供や相談対応を行っています。
(2)移住ポータルサイトの運営
移住希望者向けに、ニセコ町の生活情報や移住者の声、FAQなどをまとめた「ニセコ町移住ポータルサイト」を開設しています。このサイトでは、最新の情報や実際に移住した方の体験談を通じて、リアルなニセコ町の暮らしを紹介しています。
(3)空き家バンク制度
町内の空き家情報を提供する「空き家バンク」を運営し、移住希望者が適切な住居を見つけやすい環境を整備しています。これにより、空き家の有効活用と移住者の住まい確保を同時に推進しています。
(4)子育て支援
ニセコ町では、子育て世代に向け、以下の支援を行っています。
■出産・子育て応援給付金: 国の「出産・子育て応援交付金事業」を活用し、妊娠期から出産・子育てまで一貫して子育て家庭に寄り添う伴走型相談支援と、経済的支援を実施しています。
■産後ケア事業: 助産師が自宅を訪問し、母子のケアや授乳指導、育児相談を行うなど、出産後のサポートを提供しています。
(5)起業・事業支援
ニセコ町では、起業や事業拡大を目指す方に対し、以下の支援を行っています。
■創業支援サポート: ニセコ町とニセコ町商工会が連携し、事業計画書のアドバイスや融資など、起業に関する相談に応じています。
■ニセコ町にぎわいづくり起業者等サポート事業助成制度: 町内で新たに店舗を出店、空き店舗を借りる、既存店舗の拡張や業種転換を行う方に対し、工事費用等の一部を助成する制度です。
これらの取り組みにより、ニセコ町は移住者の定住を促進し、地域の活性化を図っています。
倶知安町(北海道)【5位】
倶知安町(くっちゃんちょう)は、北海道後志地方に位置する人口約15,000人の町で、雄大な自然と国際的なスキーリゾートが魅力です。羊蹄山を望む絶景と四季折々の自然が楽しめるほか、冬は世界有数のパウダースノーを活かしたスキーやスノーボード、夏はラフティングや登山といったアウトドアアクティビティが充実しています。
外国人観光客や移住者も多く、英語対応の施設が整備されているため、国際色豊かな雰囲気が町全体に広がっています。新千歳空港や札幌市からのアクセスも良好で、JR函館本線倶知安駅や2030年代予定の新幹線延伸計画により、さらなる発展が期待されています。
観光業が主要産業である一方、医療費助成や住宅取得支援、地域おこし協力隊の活用といった移住希望者や子育て世代を対象とした支援策も充実。豊かな自然環境、国際的な魅力、住みやすい環境を兼ね備えた倶知安町は、観光地としても移住先としても注目されています。
近年、倶知安町は顕著な人口増加を見せており、その背景には以下の要因と取り組みがあります。
(1)国際的なリゾート地としての発展
倶知安町は、外国人観光客の増加や海外投資によるホテルやコンドミニアムの建設が進み、世界有数の国際リゾート地へと成長しています。特にスキーシーズンには多くの外国人が滞在し、町の経済と人口増加に寄与しています。
(2)「倶知安町人口ビジョン」の策定
倶知安町は、2060年までを見据えた「倶知安町人口ビジョン」を策定。人口減少を抑制し、地方創生を目指しています。このビジョンでは、2040年に15,129人、2060年に13,792人を目標としています。
(3)「倶知安町デジタル田園都市構想総合戦略」の推進
2023年度から「倶知安町デジタル田園都市構想総合戦略」を策定し、デジタル技術を活用した地域の個性を生かす取り組みを展開。地方特有の社会課題解決と地域の魅力向上を図り、人口減少の抑制と地方創生を目指しています。
これらの取り組みにより、倶知安町は観光業の発展を基盤としつつ、デジタル技術を活用した地域活性化や移住促進策を進め、持続可能な地域づくりを推進しています。豊かな自然環境と国際的な魅力、住みやすい環境を併せ持つ倶知安町は、観光地としてだけでなく、未来に向けた地域モデルとしても注目されています。
倶知安町の移住・定住支援策
倶知安町の移住・定住支援策について具体的にご紹介します。
(1)住宅支援
■くっちゃん型住宅建設促進補助金: 町内に住宅を新築する方に対し、建設費用の一部を補助しています。 町内業者で建設する場合は150万円、町外業者の場合は50万円を補助。 さらに、北方型住宅に登録された場合は50万円を加算。 若年世帯、転入世帯、子育て世帯には各10万円の加算があり、最大230万円の補助が受けられます。
■浄化槽設置整備事業補助金: 新築住宅などに浄化槽を設置する方を対象に、設置工事費用の一部を補助しています。
(2)子育て支援
■子育て支援施設・団体: 「すべての子どもが明るく健やかに成長できるまち 倶知安」を基本理念とし、子育て支援センターや児童館などの施設を運営しています。
■幼児教育・保育無償化: 町内の対象施設・サービスにおいて、幼児教育・保育の無償化を実施しています。
■チャイルドシート無料貸出事業: 6歳未満の子どもを同乗させる町民ドライバーに、チャイルドシートの貸し出しを行っています。
■出生祝金: 第3子以降の誕生につき、1人5万円の出産祝金を支給しています。
(3)医療支援
■子ども医療費助成制度: 0歳から15歳に達する日以降の最初の3月31日までのお子様に対し、医療費を助成しています。
■ひとり親家庭等医療費助成制度: ひとり親家庭等の方が病院等で診療を受けた際の保険診療に係る医療費の一部を助成しています。
(4)その他の支援
在宅福祉サービス: 高齢者や障がい者の方々を対象に、在宅福祉サービスを提供しています。
これらの取り組みにより、倶知安町は移住者の定住を促進し、住みやすい環境づくりを進めています。
白馬村(長野県)【6位】
白馬村は、北アルプス山麓に広がる自然豊かな村で、2024年時点で人口約8,000人を擁します。国内外の観光客から高い人気を誇り、冬は「白馬八方尾根スキー場」などのスキーリゾート、夏は登山やマウンテンバイクといったアクティビティが楽しめるオールシーズン型の観光地です。1998年の長野オリンピックではスキージャンプやアルペンスキーの舞台となり、国際的な知名度を得ました。
白馬村の特徴は、四季折々の美しい山々に囲まれた風景と、自然環境を活かした持続可能な観光地づくりにあります。多くの外国人観光客や長期滞在者が訪れることで、多文化共生が進んだ地域としても知られています。さらに、認定こども園やICT教育を導入した学校が整備され、子育て世代にも優しい環境が整っています。
空き家バンクや市民農園の提供、地域おこし協力隊の活動を通じた移住支援策も充実しており、交通アクセスの良さも魅力です。JR大糸線や主要道路が通じ、長野市や松本市からアクセスしやすい立地にあります。白馬村は、豊かな自然、便利な生活環境、国際的な雰囲気を兼ね備えた、観光地としても移住先としても魅力的な場所です。
白馬村の取り組みと成果
白馬村は、持続可能な観光地づくりと多文化共生を推進することで、人口増加を実現しています。以下に主な取り組みを紹介します。
(1)持続可能な観光への取り組み
白馬村は、観光庁の「持続可能な観光推進モデル事業」に採択され、日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)に基づく観光地経営を進めています。地域資源を活用しつつ、環境保全と経済発展の両立を目指す取り組みが進行中です。
(2)国際的な評価の獲得
2023年、白馬村は国連世界観光機関(UNWTO)の「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」に選出されました。この評価は、美しい自然環境の保全や地域全体での持続可能な観光地づくりへの取り組みが認められた結果です。
(3)多文化共生の推進
外国人観光客の増加に伴い、白馬村では多文化共生を推進しています。多言語対応の情報提供や外国人住民への生活支援を行い、地域社会への円滑な統合を支援しています。
(4)観光産業の活性化
白馬村の就業人口の約75%が第3次産業に従事し、その中でも飲食・宿泊業が約31%を占めています。観光産業の活性化は雇用機会の増加をもたらし、人口増加につながっています。
これらの取り組みにより、白馬村は持続可能な発展を実現するとともに、観光地としての魅力をさらに高めています。豊かな自然環境と便利な生活インフラ、多文化共生の進んだ地域社会を併せ持つ白馬村は、観光地としても移住先としても引き続き注目される存在です。
白馬村の移住・定住支援策
白馬村は、豊かな自然環境と多様な文化が融合する地域として、移住希望者に対して以下のような支援や取り組みを行っています。
(1)移住相談窓口の設置
白馬村役場では、移住に関する情報提供や相談対応を行っています。具体的な生活情報や手続きについて、移住希望者が安心して準備を進められるようサポートしています。
(2)空き家・空き地バンクの運営
村内の空き家や空き地の情報を集約し、移住希望者に提供する「空き家・空き地バンク」を運営しています。これにより、適切な住居や土地を探しやすくしています。
(3)子育て支援の充実
白馬村では、18歳までの医療費助成や、未満児保育、延長保育、一時保育など、子育て世代に対する支援体制を整備しています。これにより、子育て環境の充実を図っています。
(4)教育環境の整備
村内には認定こども園、小中学校、高校があり、ICT教育の推進や公営塾「しろうま学舎」の運営など、教育環境の充実に努めています。特に白馬高校では、国際観光科を設置し、生徒を全国から募集しています。
(5)医療体制の確立
村内には6つの医院があり、隣接する大町市には総合病院が存在します。また、信州大学付属病院の高度救急救命センターにはドクターヘリが配備されており、緊急時の対応も整備されています。
(6)地域おこし協力隊の活用
白馬村では、地域おこし協力隊を積極的に受け入れ、地域の活性化や移住促進に取り組んでいます。協力隊員は、地域の魅力発信やイベント企画など、多岐にわたる活動を行っています。
これらの取り組みにより、白馬村は移住希望者にとって魅力的な環境を整備し、地域の活性化を推進しています。
白馬村のユニークな取り組み
白馬村は、観光と定住の両立を目指し、以下の取り組みにより「地域価値の最大化」を図っています。
(1)「ワーク+ライフ」を実現する高度なワーケーション環境の提供
■スキーや登山といったアウトドアスポーツの魅力を活かし、コワーキングスペースや高速通信インフラを整備。
■スポーツインストラクターとの交流や健康プログラムを組み合わせ、単なる働く場所の提供ではなく、充実したライフスタイルを提案。
(2)グローバル観光地の知見を活用した国際化対応
■海外からの長期滞在客をターゲットに、多言語対応や国際学校との連携を強化。
■観光だけでなく国際的な移住者の定住を視野に入れた持続可能な町づくりを進行中。
南幌町(北海道)【9位】
南幌町(なんぽろちょう)は、北海道空知地方に位置し、2024年時点で人口約7,000人を擁する町です。札幌市から車で約40分という利便性の高い立地と、広大な平地や自然豊かな環境が特徴です。農業を基幹産業とし、特に「南幌ジャンボタマネギ」の生産で全国的に知られています。このブランド化された玉ねぎは地域の名産品として親しまれています。
南幌町は、子育て世代や若い世代を中心に移住者を積極的に受け入れ、移住・定住支援が充実しています。空き家バンクの運営、住宅取得補助、子育て支援策の整備に加え、都市住民との交流イベントや地域おこし協力隊の活動を通じて地域活性化にも力を入れています。
また、観光資源としては、天然温泉を備えた「なんぽろ温泉ハート&ハート」や季節ごとのイベントがあり、地元住民や観光客が楽しめるスポットが点在しています。南幌町は、自然と利便性が調和した暮らしやすい地域として、移住先や観光地として注目されています。
南幌町の取り組みと成果
近年、南幌町は人口増加率で全国上位にランクインしており、その背景には以下のような取り組みが挙げられます。
(1)子育て支援策の充実
■子ども室内遊戯施設の整備:子どもが安全に遊べる環境を提供し、子育て世代の定住を支援。
■住宅建築費の補助:新規住宅建築の費用を補助し、若い世代の移住・定住を促進。
(2)効果的なPR活動
■イベント出展:子育て世代が多く集まるイベントで南幌町の魅力を直接PR。
■特産品の販売:「南幌ジャンボタマネギ」などの特産品を活用し、町の知名度向上を図る。
(3)交通アクセスと観光拠点の整備
■道路整備:札幌市や新千歳空港への交通利便性を向上し、通勤・通学の負担を軽減。
■観光施設のリニューアル:「なんぽろ温泉ハート&ハート」の改修を行い、交流人口の増加と地域活性化を目指す。
これらの取り組みにより、南幌町は子育て世代を中心とした移住者の増加に成功し、人口増加率で全国上位を記録する成果を上げています。豊かな自然環境、利便性の高い立地、充実した支援策を備えた南幌町は、移住先や観光地として引き続き注目される地域です。
南幌町の移住・定住支援策
近年、南幌町は移住・定住を促進するため、以下のような支援策を展開しています。
(1)子育て世代への住宅建築助成
中学生以下の子どもがいる世帯、または夫婦ともに40歳未満の世帯を対象に、住宅建築費を最大200万円助成しています。さらに、町内の住宅団地「南幌ニュータウンみどり野」の宅地を同時購入する場合、土地代が半額となるキャンペーンも実施中です。
(2)空き家・空き地バンクの運営
町内の空き家や空き地の情報を提供する「空き家・空き地バンク」を運営し、移住希望者が適切な物件を見つけやすい環境を整備しています。
(3)オンライン移住相談の実施
スマートフォンやパソコンを利用して、自宅から気軽に相談できる「オンライン移住相談」を受け付けています。これにより、遠方からでも南幌町への移住に関する情報収集が可能です。
(4)子育て支援の充実
18歳までの子どもの医療費を全額助成するなど、子育て世代が安心して暮らせる環境を整備しています。
これらの取り組みにより、南幌町は移住者にとって魅力的な環境を提供し、定住促進を図っています。
分析|上位自治体の特徴
2024年の人口増減率ランキング上位自治体(1位赤井川村、2位占冠村、3位留寿都村、4位ニセコ町、5位倶知安町、6位白馬村、9位南幌町)の特徴を分析すると、以下の点が浮かび上がります。
(1)地理的特徴
上位に挙がる自治体の多くが北海道であることが顕著です。特に赤井川村、占冠村、留寿都村、ニセコ町、倶知安町、南幌町はすべて北海道内に位置しており、さらにその多くは後志管内(ニセコエリア周辺)や胆振・日高エリアに属しています。また、6位にランクインしている白馬村は長野県の北アルプス山麓に位置する、いずれも自然が豊かな中山間地域やリゾート地です。
(2)観光・リゾート地としての魅力
ニセコや留寿都、倶知安町、白馬村はスキーリゾートやアウトドアスポーツで国際的にも著名な観光エリアです。ここ数年、インバウンド(訪日外国人旅行客)の増加や、外国資本によるリゾート開発、富裕層を中心とした別荘・長期滞在需要の増大がみられる。特にニセコ周辺は外国人投資家や移住者が定着し、インバウンド需要や国際化によって地域の活性化が顕著に進んでいます。
(3)移住・定住促進施策と豊かな生活環境
コロナ禍以降、リモートワークやワーケーションが普及し、都市部から自然豊かな地方への移住ニーズが高まりました。特に国際的リゾートとしてのブランド力や良質な生活インフラ(教育、医療、交通アクセス)が整いつつある地域は、その受け皿となりやすいといえます。リゾート開発や地域振興策により、移住者を呼び込み、実際に定住者が増えることで人口増加に寄与している可能性が高いです。
(4)北海道特有の要因
北海道内の順位上位自治体には、観光・リゾート開発以外にも、札幌近郊(南幌町など)のベッドタウン化や広大な農地や風光明媚な景観を活かした移住促進が考えらます。札幌圏への通勤が可能な中山間地域や、生活コストや気候、自然環境を魅力としてUターン・Iターン移住を進める自治体の取り組みも成果を上げているとみられます。
<総合的考察>
人口増減率上位の自治体は、観光リゾートとしてのブランド化やインバウンド・投資需要、リモートワーク普及下での地方回帰志向といった複合的要因に支えられています。特に北海道のリゾート地と長野県の白馬村といった国際的な冬季スポーツ・アウトドア拠点は、外国人投資家や国内外からの移住者を惹きつけ、人口増に結びつけています。また、従来の地方創生・地域振興策、移住定住支援施策、働き方の変化などが重なった結果として、都市部とは異なる形で新たな拠点性を確立しつつあることが示唆されます。
人口を増やすための効果的な施策
これらの自治体の事例から、人口を増やすための効果的な施策として以下のポイントが見えてきます。それぞれの施策は、地域の特性や課題に応じて柔軟に実施されています。
1. 観光産業と国際化の活用
具体例: 赤井川村、占冠村、留寿都村、ニセコ町、白馬村、倶知安町
■スキーリゾートや観光資源を中心とした雇用創出が、移住促進や定住人口の増加につながっています。
■国際的なリゾート地として、外国人労働者や移住者を積極的に受け入れる仕組みを構築。
■多言語対応や多文化共生の推進により、国際的な魅力を高めています。
施策のポイント:
■地域資源を最大限活用し、観光やリゾート産業を軸にした経済基盤を整備。
■外国人移住者への生活支援を強化し、国際化による新たな人材流入を促進。
2. 子育て支援の充実
具体例: 赤井川村、南幌町、白馬村
■医療費助成、給食費無料化、産後ケア事業などで若い世代の生活負担を軽減。
■子ども向け教育・保育環境を充実させ、子育て世代が安心して移住・定住できる環境を提供。
施策のポイント:
■経済的支援と教育環境の整備を両立させ、子育て世代にとって魅力的な地域を形成。
■地域特性に応じた特色ある支援(例: スキーシーズン券無料)を展開。
3. 住宅取得・移住支援
具体例: 占冠村、留寿都村、南幌町
■新築や中古住宅の購入に対する補助金や税制優遇。
■空き家バンクを通じて、移住希望者が住居を見つけやすい環境を整備。
施策のポイント:
■家庭や企業が移住しやすい住宅環境を提供。
■定住を条件とした長期的な支援制度を導入し、人口流出を抑制。
4. 新規事業・起業支援
具体例: 占冠村、ニセコ町、倶知安町
■起業支援制度や新規事業者への助成金を提供。
■地域の課題に取り組むプロジェクトを支援することで、新しい雇用機会を創出。
施策のポイント:
■地域資源を活用した起業を支援し、経済活性化を図る。
■若い世代の「チャレンジ精神」を受け入れる柔軟な制度設計。
5. 地域おこし協力隊と多文化共生
具体例: ニセコ町、白馬村
■地域おこし協力隊を活用し、移住者の地域への溶け込みを支援。
■多文化共生の取り組みで、地域全体の包摂力を強化。
施策のポイント:
■協力隊を通じて地域課題の解決と移住者の定着を促進。
■外国人移住者を含む多様な人々が共生できる環境を整備。
6. 地域のブランド価値向上
具体例: 南幌町、ニセコ町、倶知安町
■地元特産品や観光資源を活用した地域のブランド化。
■持続可能な観光や農業を推進し、地域の魅力を国内外に発信。
施策のポイント:
■地域の個性を磨き、外部へのアピールポイントを増加。
■持続可能性を重視した「長期的な魅力」を構築。
最後に
人口増加を実現するには、「魅力ある仕事の創出」「住環境の整備」「子育て支援の充実」「多文化共生の推進」が重要です。各自治体は地域特性を活かした独自の施策を組み合わせ、移住者のニーズに応えることで成功を収めています。他の自治体が取り組みを検討する際も、これらのポイントを参考にしながら、地域独自の施策を設計すると効果的です。
※参考文献
赤井川村移住・定住支援事業について | くらしの情報
赤井川村|北海道への移住・定住を応援する情報サイト 北海道で暮らそう!
村長通信NO85 国勢調査の速報値が発表されました
人口1200人弱の小さな村、北海道赤井川村が国内外への魅力発信のため「観光地域つくり法人(DMO)」を発足
日本の未来は占冠村にあり!ダイバーシティ最前線―外国人27%が創る多文化共生と持続可能な発展への挑戦
留寿都村移住定住支援事業について
留寿都村への移住情報
移住をお考えの方 | 北海道ニセコ町
ニセコ町移住ポータル
出産・子育て応援給付金 | 妊娠・出産 | 健康・福祉・介護 | 暮らし | 北海道ニセコ町
倶知安町|北海道への移住・定住を応援する情報サイト 北海道で暮らそう!
白馬村への移住
地域おこし協力隊/白馬村
白馬村
長野県移住ポータルサイト
【東川、南幌】移住者で人口増加、宅地分譲が好調な町の呼び込み施策|e-kensinニュース 北海道建設新聞
取組事例 子育て支援施策の充実と効果的なPR活動による 移住・定住人口の拡大促進
30年後も子どもたちの笑顔が あふれるまちづくりを目指して
南幌町>地域活性化と交流人口増加を目指す観光拠点整備事業
人口増加率が2年連続で全国1位になりました!!
助成金制度 – 南幌町
移住の情報 – 南幌町
南幌町|北海道への移住・定住を応援する情報サイト 北海道で暮らそう!