2025年、ドナルド・トランプ氏が再び大統領の座に就き、第二期政権がスタートしました。前回政権(2017〜2021年)でもビジネスフレンドリーな規制緩和策で注目を集めましたが、今回の政権でも国内産業やイノベーションを後押しする政策が期待されています。仮想通貨(暗号資産)については、すでにビットコインやイーサリアムなどの主要通貨の信用度が高まり、大手金融機関の参入も増えています。ここでは、2025年から今後2年間(〜2027年頃)にかけて仮想通貨がどのように進展していくか、ポイントを整理してみましょう。
第2次トランプ政権による仮想通貨政策の特徴
第2次トランプ政権における仮想通貨政策は、規制強化とイノベーション促進のバランスが重要なテーマとなるでしょう。前政権時と同様に、ビジネス環境の整備を重視しつつ、市場の透明性向上や法的枠組みの明確化に取り組むことが予想されます。ここでは、その主要な特徴について詳しく見ていきます。
1-1. 規制の「明確化」を重視
トランプ政権は、イノベーションに対して表立って規制を強化するというよりは、“ビジネスのしやすさ”を優先する傾向があると見られています。SEC(米国証券取引委員会)やCFTC(米商品先物取引委員会)などの監督官庁と協調しながら、暗号資産に対するルールを明確化する動きが強まっています。
🔹 証券・商品区分の一本化
従来、トークンごとの性質に応じてSECかCFTCか、あるいは別の州規制当局が管轄するなど複雑化していました。統一ガイドラインを策定することで、プロジェクトや取引所が遵守すべきルールがわかりやすくなり、新規参入や事業拡大が促進されると期待されています。
🔹 税制改革との連動
仮想通貨取引の課税ルールがさらに整備され、取引損益の計算がわかりやすくなるような政策も検討されています。企業や個人投資家にとっては、税負担が軽減される(あるいは納税の手間が緩和される)可能性があります。
1-2. CBDC(デジタルドル)の見通し
2020年代に入り、米国連邦準備制度(FRB)も中央銀行デジタル通貨(CBDC)の検討を進めてきました。トランプ第二期政権の方針としては、米ドルの国際基軸通貨としての地位を維持・強化するため、デジタルドル構想を加速させる余地があります。しかし、一方で民間主導のイノベーションを尊重する姿勢も強いため、CBDCがいつ・どのような形で実装されるかは依然として不透明です。
🔹 民間企業との連携強化
「デジタルドル」の技術開発を大手テック企業やスタートアップと連携して進める動きが見られます。ブロックチェーン技術をベースにした送金・決済インフラの高度化を目指す議論が、政権内でも活発化しているようです。
🔹 ステーブルコインとの棲み分け
すでにUSDテザー(USDT)やUSDコイン(USDC)など主要なステーブルコインが普及している中で、CBDC導入がどのような役割を果たし、民間ステーブルコインとどのように共存していくのかが焦点となるでしょう。
今後2年間の仮想通貨マーケットの展望
仮想通貨市場は、技術革新と規制の進展に伴い、大きな転換期を迎えています。特に今後2年間は、機関投資家のさらなる参入、ステーブルコインの普及、そしてDeFiやNFTの進化など、複数の要因が市場の成長を後押しするでしょう。本章では、それらの主要なトレンドについて詳しく見ていきます。
2-1. さらなる機関投資家の参入
2024年から2025年にかけて、投資銀行やヘッジファンドなどの機関投資家は、ビットコインやイーサリアムを含むポートフォリオを拡大してきました。今後2年間は、これがさらに進むと予想されます。
🔹 ETF(上場投資信託)の拡充
ビットコインETF、イーサリアムETFなどが相次いで認可され、株式市場と同じ感覚で仮想通貨に投資できる環境が整いました。機関投資家のみならず、年金基金や個人投資家も証券口座で仮想通貨に簡単にアクセスできるようになり、市場規模拡大が続くでしょう。
🔹 価格の安定性の向上
投資家層が多様化・大規模化することで、以前ほどの極端なボラティリティが緩和され、主要仮想通貨の価格が安定する傾向が強まる可能性があります。
2-2. ステーブルコインの台頭と多様化
決済インフラや送金の即時化を求める声が高まる中、ステーブルコインの存在感はますます大きくなっています。
🔹国際送金・商取引での活用
ステーブルコインはドルやユーロなど法定通貨と連動するため、為替リスクを最小限に抑えながらブロックチェーン上での瞬時送金が可能です。グローバル企業が越境決済に活用したり、個人が海外送金に用いるケースが増えてきています。
🔹規制整備の加速
大規模なステーブルコインが金融システムに与える影響を懸念する声もあるため、政権や規制当局はライセンス制度や資産担保ルールの厳格化を進めています。これにより、信用度の高いステーブルコインとそうでないものの「二極化」も予想されます。
2-3. DeFi(分散型金融)とNFTの新次元
DeFi(分散型金融)やNFT(ノン・ファンジブル・トークン)は、2020年代前半に大きく注目されました。今後2年間では、それぞれがより実用的な形態へとシフトしていくでしょう。
🔹DeFiの本格的な金融インフラ化
金融機関がDeFiのプロトコルを利用したローンやステーキングサービスを提供する事例が増え、既存金融とブロックチェーンの融合が進みそうです。信用リスクやコンプライアンス面の課題がクリアされれば、DeFiは「新時代の銀行システム」としてさらに普及する可能性があります。
🔹NFTのユーティリティ拡張
コレクターズアイテムとしてのNFTだけでなく、チケットやライセンス、デジタルIDなど、実用性の高いNFTプラットフォームが増えています。メタバース空間やAR(拡張現実)と連動した次世代エンターテインメントの基盤としてNFTが活用される動きは、今後も拡大すると考えられます。
課題とリスク
仮想通貨市場の成長が続く一方で、規制やセキュリティ、国際情勢など、多くの課題やリスクが浮上しています。市場の健全な発展のためには、これらのリスクに適切に対処しながら、持続可能なエコシステムを構築することが求められます。ここでは、今後特に注目すべき主要なリスクについて詳しく解説します。
3-1. 規制の行方と政治的対立
トランプ第二期政権はビジネスフレンドリーな姿勢を打ち出している一方、議会や州レベルでは民主党系の政治家や規制当局者が慎重派として影響力を持つケースも考えられます。そのため、法案や新しい規制ルールが通過するまでの過程で政治的対立が起こり、仮想通貨市場に一時的な混乱が生じるリスクもあります。
3-2. サイバーセキュリティと詐欺対策
市場が拡大すればするほど、ハッキング被害や詐欺的ICO(イニシャル・コイン・オファリング)、ポンジスキームなどが増える傾向があります。ユーザー保護と技術的なセキュリティ強化は不可欠な課題として取り組まれるでしょう。
3-3. 国際情勢と金融政策の変動
米国の利上げや利下げ、米ドルの強弱、また他国との関係悪化による地政学リスクなどは、仮想通貨市場に大きな影響を与えます。特に「リスク資産」として捉えられる場面では、大規模な資金の流入・流出が価格ボラティリティを引き起こす可能性があり、投資家の動向には引き続き注意が必要です。
まとめ:仮想通貨の「さらなる一般化」は加速するのか
トランプ氏が率いる第二期政権下では、「規制の明確化」「企業の積極的なイノベーション推進」という方針が相まって、仮想通貨市場のさらなる拡大が期待されます。機関投資家の参入やステーブルコイン・DeFiの活用が社会基盤に組み込まれつつある今、仮想通貨は単なる投機対象にとどまらず、金融や産業界で重要な役割を果たす存在になりつつあるといえるでしょう。
一方で、政治的対立や国際関係、金融政策の変化など外部要因によっては、制度設計が遅れたり価格の乱高下が再燃したりするリスクも依然として残ります。技術的なイノベーションやユーザー保護の強化が進めば、仮想通貨の存在感はさらに高まる可能性がある一方、曖昧な規制やセキュリティの脆弱性が残れば、再び混乱期を迎えることも考えられます。
とはいえ、2025年の今、再登板したトランプ大統領の影響力を背景に「アメリカ主導の仮想通貨・ブロックチェーン市場」が世界的に拡大するシナリオは十分に plausible(あり得る)と言えるでしょう。今後2年間は、この分野が大きく進化し、社会に定着するための“分岐点”となるかもしれません。