サーキュラーエコノミーとは?積極的に取り組んでいる企業5選

サーキュラーエコノミーとは?積極的に取り組んでいる企業5選

アバター投稿者:

地球は資源であふれているように見えても、無限ではありません。我々の消費行動が環境に与える影響は大きく、資源の枯渇や廃棄物の増加が、ますます深刻な環境問題を引き起こしています。そこで登場するのがサーキュラーエコノミー、つまり循環型経済です。

この記事では、サーキュラーエコノミーについて深堀りしたいと思います。また、積極的に取り入れている企業の事例をご紹介します。

サーキュラーエコノミーとは?

サーキュラーエコノミーのイメージ 透明の地球儀を手にする

サーキュラーエコノミーは、製品や資源の使用と廃棄を最小限に抑え、持続可能な経済システムを実現するための概念です。この経済モデルでは、素材や製品が使用された後も価値を失わないように設計され、廃棄物をできるだけ発生させず、また発生した廃棄物を再利用、リサイクル、またはアップサイクルすること、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を目指します。

従来の「リニアエコノミー」(生産 → 使用 → 廃棄)のモデルと異なり、サーキュラーエコノミーは、製品のライフサイクル全体を通じて、環境への負担を軽減しつつ経済的価値を持続させることを重視します。つまり、資源を効率的に使い、長く使い、最終的には再び経済システムに戻すことで、資源の浪費を防ぎ、環境保護にも貢献します。

例えば、製品設計段階で修理や分解が容易になるように考えられ、使用された後は再生可能エネルギーを用いてリサイクルされたり、他の製品の素材として再利用されることがあります。このような循環は、資源の持続可能な使用を促し、廃棄物の削減にもつながります。

サーキュラーエコノミーの実現は簡単ではなく、広範囲にわたる技術開発や資源循環利用のシステム設計が必要です。また、これらの技術を社会に受け入れてもらうためには、経済性を示すことも重要です。日本では、「循環経済ビジョン2020」を策定し、国内で資源を循環させる「成長志向型の資源自立経済」を提唱しています。

サーキュラーエコノミーは、廃棄物を完全になくすことを究極の目標としていますが、現実的には「廃棄物を最小限に抑える」ことに重点を置いています。この経済システムでは、製品のライフサイクル全体を通じて、資源の効率的な使用と循環を促進し、廃棄物の発生を可能な限り減らすことを目指します。

サーキュラーエコノミーの理念は、バタフライ・ダイアグラムを用いて説明されることが多く、生物的サイクルと技術的サイクルを蝶の形に見立てて描かれます。このダイアグラムは、限られた資源を様々な方法で循環させる考え方を表しています。

サーキュラーエコノミーのバタフライダイアグラム
出典:エレンマッカーサー財団

(図の解説)

エレンマッカーサー財団のバタフライダイアグラムは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の概念を視覚的に表現したもので、資源が持続可能な方法で循環するプロセスを示しています。この図は、蝶の形をしており、生物的サイクルと技術的サイクルの二つの主要なループから成り立っています。

(向かって左側:生物的サイクル)

このループでは、生物由来の材料が使用され、最終的には生分解されて自然界に戻るプロセスが示されます。これには、食品や木材、綿など自然に戻ることができる素材が含まれます。

(向かって右側:技術的サイクル)

こちらは、製品やその部品が修理、再製造、リサイクルを通じて何度も使用されることを目指しています。これには、プラスチック、金属、電子部品などが含まれ、これらは特定のプロセスを通じて品質を維持しながら再利用されます。

バタフライダイアグラムは、製品が最終的に廃棄されるのではなく、経済的な価値として循環し続けることを促すための設計思想やビジネスモデルの重要性を強調しています。資源の有効活用と環境への負担軽減を図るこのアプローチは、持続可能な開発目標(SDGs)にも貢献しています。

積極的に取り組んでいる国内の企業5選

CIRCULAR ECONOMYのアイコンを触るビジネスパーソン

経産省と環境省は共同で循環型事業活動に取り組む企業を取り上げています。これら企業の取り組みをご紹介します。

三菱電機グループハイパーサイクルシステムズ|家電製品のリサイクル

株式会社ハイパーサイクルシステムズは、三菱電機グループで家電製品のリサイクルを専門としています。使用済み家電製品から高純度のリサイクル素材を生み出す高度な技術と専用設備を用いています。主な取り組みは以下の通りです。

高いリサイクル率

製品の部品や原材料として再利用可能な状態にすることを目指しており、特にサーマルリサイクルを除く再資源化率に注目しています。

混合プラスチックの自己循環リサイクル

混合プラスチックを三菱電機グループ内の別会社に出荷し、選別後にペレット化して、再び三菱電機の家電製品に利用しています。

プリント基板ユニットの高純度選別

専用の破砕機を用いてプリント基板ユニットを破砕・選別し、貴金属は精錬業者へ、その他の金属は製鉄業者などに出荷しています。

さらに、家電リサイクルにおける具体的な事例として、冷蔵庫やエアコンの部品に使用されるプラスチックのリサイクルや、フロンの再利用、ブラウン管ガラスの建材用断熱材への転用などが挙げられます。これらの取り組みを通じて、循環型社会の実現とゼロエミッションの目標達成に貢献しています。

ダイキン工業|レトロフィットメンテナンスプラン

ダイキン工業株式会社は、エアコンの長期使用可能な製品・サービス設計に力を入れており、特にレトロフィットメンテナンスプランを通じてその取り組みを強化しています。

主要パーツの入れ替えによる性能アップ

設置から8年程度経過した業務用マルチエアコンの圧縮機と省エネ冷媒制御を最新のものに交換することで、エネルギー効率を大幅に向上させています。この改善により、消費電力を約13%削減し、快適性と長寿命化を図っています。

全自動省エネ冷媒制御(VRT制御)

この制御システムは無駄な運転を減らし、効率的に冷媒圧を調整して、低負荷時でも十分な冷媒圧縮を可能にします。これにより、省エネ性の向上とともに、快適な室温維持が可能になります。

技術的改良と新制御の導入

圧縮機の技術改良と新しい制御方法の導入により、耐久性が向上し、機器の寿命が延長されます。また、快適性も同時に向上し、振動や騒音の抑制も図られています。

これらの取り組みは、省エネだけでなく、使用する機器の更新費用の削減や、環境への負担軽減にも寄与しており、快適で持続可能な環境を提供することを目指しています。

西友・日立|AIによる需要予測に基づき自動発注で販売ロス削減

西友と日立製作所は、AIを活用した革新的な取り組みを進めています。具体的には、AIによる需要予測に基づいた自動発注システムを西友の全国の店舗で導入しています。このシステムにより、弁当や惣菜などの食品の過剰在庫や廃棄を減らすことで、食品ロスの削減を図ると共に、業務の効率化を目指しています。

高度な需要予測

AIが過去のデータや気象情報、イベントなど複数の要因を分析し、商品ごとの需要を精確に予測します。

自動発注プロセス

AIの予測に基づき、必要な商品の発注量を自動で計算し、発注作業を自動化します。これにより、人手による発注ミスや過剰発注を減らし、効率的な在庫管理が可能になります。

業務効率の向上

発注業務が自動化されることで、店舗スタッフは顧客サービスや店内業務により多くの時間を割くことができます。

これらの取り組みにより、西友は店舗運営の効率化を進めつつ、食品廃棄の問題にも積極的に対応しており、持続可能な消費と生産のための具体的なアクションを実行しています。日立製作所は、このような小売業向けのデジタルソリューションを通じて、社会イノベーションを推進しています。

パナソニック:再生プラスチックの使用

パナソニックは、循環型モノづくりに貢献するために「樹脂循環プロジェクト」を推進しています。このプロジェクトは、使用済み家電製品から樹脂を高効率で回収し、再生樹脂として製品の部品に再利用することを目指しています。以下に、この取り組みの主要なポイントをわかりやすく説明します。

高純度の樹脂回収

家電製品に使われる樹脂は、リサイクル時に品質を保つために高純度で選別する必要があります。パナソニックは、この高純度の選別技術を活用して、資源の効率的な利用を実現しています。

再生樹脂の製品への活用

選別された樹脂は、洗浄や品質回復処理を経て、再生樹脂として家電の部品に再利用されます。これにより、新たな原材料の使用を抑え、資源の有効活用を図っています。

技術革新とプロセス改善

パナソニックは、樹脂の選別と再生技術において革新的な取り組みを進めており、再生樹脂の品質を向上させるための研究開発に注力しています。また、近赤外線樹脂選別機を導入することで、選別効率を大幅に向上させています。

社会的責任と環境貢献

このプロジェクトは、資源の循環を促進し、環境負荷の低減に貢献することを目的としています。また、2018年の環境行動計画「グリーンプラン2018」に基づき、環境に配慮した製品開発と生産活動を推進しています。

パナソニックの「樹脂循環プロジェクト」は、製品のライフサイクル全体を見据えた持続可能な製造プロセスの実現に向けた重要なステップです。この取り組みにより、消費者に安全で環境に優しい製品を提供するとともに、産業界全体の環境負荷を軽減することを目指しています。

日本製鉄:リデュース設計

日本製鉄株式会社は、次世代鋼製自動車向けの技術開発に取り組み、持続可能な車両製造に寄与しています。この取り組みは、軽量化、安全性向上、そして生産性の向上を実現するために特化しています。

高強度鋼の開発

日本製鉄は、1470MPa級ハイテンション鋼や2.0GPa級ホットスタンプ材料など、超高強度鋼の開発を進めています。これらの材料は、軽量化を実現しながらも高い安全性を保つことが可能です。

成形技術の革新

 超高強度鋼の成形に適した技術、特にホットスタンプ技術の改善に取り組んでいます。この技術は、成形中に材料を焼入れすることで、強度を高める一方で、生産性も向上させます。

直水冷技術の開発

ホットスタンプ工程で使用する直水冷技術を開発しました。これにより、生産性を約3倍に向上させることができ、コスト削減にも寄与しています。

構造と機能の最適化

衝突CAE(コンピュータ支援エンジニアリング)をフル活用し、新しい材料や接合技術を組み合わせた車体部品やモジュールの提案を行っています。これにより、さらなる軽量化を実現しています。

これらの技術開発は、自動車産業の持続可能性を向上させるだけでなく、より安全で環境に優しい車両の普及に貢献しています。日本製鉄はこれらのイノベーションを通じて、国連の持続可能な開発目標(SDGs)、特に「気候変動に具体的な対策を」に貢献していると位置付けています。

このように日本製鉄は、鋼材の性能向上と環境負荷の低減を同時に追求し、持続可能な製造プロセスの確立に努めています。

まとめ:サーキュラーエコノミーの目指すところ

循環経済のコンセプト、リサイクル、環境、再利用、製造、廃棄物、消費者、資源。 持続可能な開発。

資源は無限ではないため、私たちの生活様式を見直し、資源を大切にすることが急務です。これがサーキュラーエコノミーの目指すところです。この経済モデルは、資源の使用と廃棄を最小限に抑え、製品のライフサイクル全体で環境への影響を軽減しながら経済的価値を持続させることを重視しています。

サーキュラーエコノミーの推進には、消費者の意識改革だけでなく、企業による製品設計の工夫やリサイクルプロセスの改善が必要です。これにより、使用後の製品を可能な限りリサイクルし、再び資源として活用することが可能になります。

この動きは単に環境を保護するだけでなく、新たなビジネスモデルや市場を生み出すチャンスでもあります。これにより、経済的にも持続可能なサイクルが生まれ、地球環境への貢献とともに、経済的利益をもたらす可能性があります。

私たち一人一人が意識を変え、循環型経済を支持することで、より持続可能な未来を築くことができるでしょう。

関連情報:

サーキュラー・エコノミー EXPOが開催されます。

幕張メッセ

2024年10月2日から4日

インテックス大阪

2024年11月20日から22日

詳しくはこちらから→サーキュラー・エコノミーEXPO – 展示会概要

お問い合わせ

※参考文献
エレンマッカーサー財団

サーキュラーエコノミーとは?

循環型の事業活動の類型について

三菱電機グループ 株式会社ハイパーサイクルシステムズ | リサイクルのご案内 | 家電リサイクル

西友が日立との協創を通じ、AIによる需要予測に基づき自動発注を行うシステムを導入開始

「商品から商品へ」資源循環の取り組み- サステナビリティ - パナソニック ホールディングス