資金調達の未来:株式投資型クラウドファンディングと海外の新規プラットフォーム

資金調達の未来:株式投資型クラウドファンディングと海外の新規プラットフォーム

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資金調達の方法は、時代と共に進化し続けています。特に近年、スタートアップ企業の成長を加速させるための新しい資金調達手段が登場しており、伝統的な銀行融資やベンチャーキャピタルからの資金提供に代わる選択肢として、世界中の企業や投資家から注目を集めています。その中でも、株式投資型クラウドファンディング (株式投資型CF) は、インターネットを通じて多数の投資家から資金を集めることができる、比較的新しい資金調達方法の一つです。

海外では、新たに登場したプラットフォームが、スタートアップと投資家を効率的にマッチングさせることで、資金調達の新たな地平を切り開いています。これらのプラットフォームは、特に高成長を遂げているスタートアップに対して、従来の方法よりも迅速かつ柔軟に資金を提供することを可能にし、グローバルなエコシステムにおける新しい資金調達のパラダイムを形成しています。

本稿では、株式投資型クラウドファンディングの概要と、そのメリットや提供されているサービスについて掘り下げつつ、国内での活用事例と併せて、Diadem CapitalやWe Founder Circle (WFC)などの海外事例を紹介します。これにより、資金調達の現在のトレンドと、新興企業が直面する挑戦への革新的な解決策について理解を深めます。

株式投資型CF|国内事例

タブレット端末を見る男女

日本では2015年に新しい資金調達手段として導入された株式投資型クラウドファンディングですが、東京都では、都内のベンチャー企業が取扱事業者に支払う手数料の半額(上限300万円)を助成するなど、この方式の普及を支援する取り組みが進められています。ここでは、株式投資型クラウドファンディングとは何か、どのようなサービスが提供されているのかについて、詳しく解説します。

株式投資型クラウドファンディングは、インターネットを活用して多数の投資家から資金を集めることができる新しい形の資金調達方法です。この方法では、特に成長段階にある未上場のベンチャー企業が小口の投資を募集し、必要な運転資金や拡張資金を確保することができます。従来、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの大口資金調達が一般的でしたが、株式投資型クラウドファンディングは、より多くの個人投資家がベンチャー企業の成長に参画できる機会を提供します。

株式投資型クラウドファンディングサービスを提供する国内のサービス事例をご紹介します。

株式投資型CF|FUNDINNO

FUNDINNOは、この株式投資型クラウドファンディング市場において、国内でトップシェアを誇るプラットフォームです。東京都に本拠を置く同社は、2017年にサービスを開始し、日本で初めての株式投資型クラウドファンディングサービスとして、個人投資家と未上場ベンチャー企業を結びつける役割を果たしてきました。FUNDINNOを利用することで、約10万円からという比較的少額の投資で、未上場のベンチャー企業に投資することが可能になり、多くの人々がベンチャー投資を通じて経済活動に参加する道を開きました。

FUNDINNOの4つの主なるメリット

FUNDINNOが提供するメリットは多岐にわたります。第一に、一般の投資家がアクセスしにくい未上場のベンチャー企業への投資機会を提供することで、新しいビジネスの成長を直接支援することができます。第二に、投資した企業が将来的にIPOやM&AなどのEXIT(エグジット)を達成した際、大きなリターンを得る可能性があります。FUNDINNOを通じて投資を募った企業の中には、実際に高いリターンを投資家に提供した例もあります。第三に、投資を通じて節税ができるケースがあり、「エンジェル税制」などの税制優遇措置を利用することで、投資しながら税負担を軽減することが可能です。最後に、投資金額に応じた株主優待を提供する企業もあり、物理的なリターンだけでなく、特定のサービスや製品を優待として受け取ることができます。

FUNDINNOの実績

FUNDINNOが国内市場で高いシェアを獲得している理由は、その成果にあります。累計成約額が100億円を突破し、ユーザー数が12万人を超えるなど、圧倒的な成績を収めています。これは、FUNDINNOが提供する豊富な経験と専門知識に基づくサポート体制があってこそです。企業が資金を効率的に調達し、投資家が適切な投資判断を下せるよう、ウェブページの作成からプレスリリース、動画制作まで、幅広い支援を行っています。

FUNDINNOで資金調達する|起業家側

FUNDINNOを利用して資金を調達する過程は、事前調査、審査、募集ページの作成、資金調達の完了というステップから構成されます。このプロセスは企業がスムーズに資金を集めるために設計されています。募集ページ作成の際にはミッションやビジョンがしっかりと投資家に伝わるようにするためのサポートがあります。

一方で、目標金額に達しない場合はプロジェクトが不成立となり、資金調達が行われないこともあり得ます。以下、資金調達に関する概要になります。

資金調達可能な金額

企業はFUNDINNOを通じて、年間で最大1億円未満までの資金を調達することが可能です。

資金調達までの期間

事前審査を通過した後、案件の公開までには最短で3週間が必要です。

募集成立から最短5日で調達完了します。 募集が成立した場合、募集金額の入金までには約3週間ほどかかります。

不成約の場合

審査料の10万円と実費については案件不成約の場合でも返金されません。

また、反社会的勢力からの投資を防ぐための対策も講じています。FUNDINNOに登録している投資家は、SPネットワークと暴力団追放都民センターのデータベースと照合し、毎月クローリングを実施しています。これにより、反社会的勢力による投資がある場合、それを特定し排除する体制を整えています。また、金融機関としての責務を果たすため、上場基準に抵触する投資家は、強制買い戻し要綱に基づき排除するよう努めています。

FUNDINNOの利用は、未上場企業にとって価値ある資金調達のチャンスを提供しますが、成功への道のりは慎重な計画とリスク管理が求められます。資金調達を目指す企業は、FUNDINNOの提供する機会を最大限に活用し、プロジェクトの成立に向けた準備を整えることが重要です。

FUNDINNOの手数料

FUNDINNOの利用に際して発生する手数料は、株式及び新株予約権の発行価格の総額の20%(税別)相当額です。ただし、2回目以降の募集に関しては、総額の18%(税別)相当額が手数料として適用されます。もし1回目の募集取扱契約が2023年12月21日以前に締結された場合、2回目以降の手数料は15%(税別)となります。これらの手数料は、FUNDINNOを通じて資金調達を行う企業が支払う必要があるものです。

また、審査料として10万円が初回のみ必要であり、これに加えて発生する実費についても負担する必要がありますが、実費は審査を通過すれば不要になる場合があります。案件が不成立となった場合でも、審査料と実費は返金されません。

これらの手数料は、FUNDINNOを利用する際のコストの一部を構成しており、企業が資金調達の過程で考慮すべき重要な要素です。FUNDINNOを通じて資金調達を行う際には、これらの手数料を含めた総コストを把握し、計画的に資金調達活動を進めることが重要です。

FUNDINNOの資金調達成功事例

FUNDINNOを通じて資金調達を行った272社の企業のうち、約92%にあたる251社が事業を継続中であることが示されています。これは、FUNDINNOが資金調達を成功させた企業の多くが安定して運営を続けていることを示す重要な指標です。

FUNDINNOで節税

また、FUNDINNOを利用することで、投資家はNISAやiDeCoに次ぐ節税対策の一つとしてエンジェル税制を活用できます。エンジェル税制は、特定のベンチャー企業への投資により税制上の優遇措置を受けられる制度であり、これにより投資家は自身の税負担を軽減することが可能になります。

FUNDINNOで投資する|投資家側

投資の流れに関しては、以下のステップで進行します:

  1. 投資家としての登録を行い、専門口座は不要であり、最短約3分でWEB上での申請が完了します。本人確認もWEBで行うことができ、面倒な書類手続きを省略できます。
  2. 国内最大の案件数から、IPO前の有望なベンチャー企業を選定します。投資家は、上場企業の損益計算書や貸借対照表のように、企業の財務情報を確認することができます。
  3. 投資したい企業が見つかった場合、WEB上で簡単に投資の申し込みを行うことができます。投資は1口約10万円から可能です。
  4. 投資後は、投資先企業から定期的にIR情報が提供されます。このIR情報を通じて、企業の成長を実感し、投資先に対する理解を深めることができます。

FUNDINNOで投資を検討する前に知っておくべきこと:

投資制限

投資金額の上限があります。投資家一人あたり、1社につき1年間に50万円まで投資が可能です。(特定投資家は1社あたり年間ご投資額の上限がなくなりますが、プロジェクトごとに上限額があります。)

手数料と諸費用

投資時の手数料はかかりませんが、購入代金の振込手数料は投資家負担です。

募集成立と資金振込

プロジェクトが成立し、資金が発行者に支払われると、投資家は株主名簿または新株予約権原簿に登録されます。

リスクと留意点

投資には元本損失のリスクが伴い、非上場会社の株式や新株予約権に特有のリスクがあります。以下に挙げます。

      1. 換金性の低さ:非上場会社の株式や新株予約権は、市場が存在しないため、換金性が劣ります
      2. 譲渡制限:譲渡には発行者の承認が必要で、場合によっては譲渡が認められないことがあります。
      3. 価値の変動: 発行者の財務状況や業務に変化があった場合、投資価値が大きく損なわれるリスクがあります。
      4. 配当の不確実性:新株予約権では配当がなく、株式でも配当が支払われない可能性があります。
      5. 開示の不足:金融商品取引法に基づく開示義務がなく、情報が限られる場合があります。

投資を検討する前に、リスク情報を詳細に読み、理解することが重要です。

その他

FUNDINNOを利用する際は、発行者の財務情報や募集事項の内容を確認することが重要です。投資家は、発行者や事業への共感や支援を主な目的として投資することが望まれます。

FUNDINNOの株主

FUNDINNOの株主には、三菱UFJ信託銀行株式会社、野村ホールディングス株式会社、第一生命保険株式会社、株式会社博報堂、東急株式会社、岡三証券株式会社など、著名な企業が名を連ねています。これらの企業が株主として参加していることは、FUNDINNOの信頼性とその事業モデルへの支持を示しています。

FUNDINNOに向いていない人

FUNDINNOは多くの投資家や起業家にとって魅力的なサービスですが、全ての人に適しているわけではありません。FUNDINNOが適さない人の特徴は以下の通りです。

投資家側での場合

  1. 低リスク・確実性を求める投資家: FUNDINNOを通じて投資できる企業は、主に未上場のベンチャー企業です。これらの企業は高い成長潜在力を持っていますが、同時に高リスクも伴います。株価の変動が激しく、投資した資金を失う可能性もあります。確実性や低リスクを求める投資家には適していません。
  2. 短期間でのリターンを期待する投資家:ベンチャー企業への投資は、長期的な視点での成長を見込むものです。短期間での大きなリターンを期待する場合、FUNDINNOを通じた投資は適していないかもしれません。
  3. 積極的な情報収集や分析が苦手な投資家: FUNDINNOでは多くのベンチャー企業から投資先を選ぶ必要があります。それぞれの企業の事業内容、財務状況、市場のポテンシャルなどを理解し分析することが求められます。このような情報収集や分析が苦手な人には不向きかもしれません。

起業家側での場合

  1. 即時性の高い資金調達を必要とする企業: FUNDINNOを利用した資金調達には、審査や募集ページの作成など、一定の時間が必要です。非常に短期間で資金が必要な場合、他の資金調達手段を検討した方がよいかもしれません。
  2. 手数料の支払いが難しい企業: FUNDINNOの手数料は、成功報酬型ですが、発行価格の総額の一定割合を手数料として支払う必要があります。手数料の支払いが難しい場合、FUNDINNOを利用するのは適していないかもしれません。
  3. プライバシーに極めて敏感な企業: FUNDINNOを通じて資金を調達するには、企業の事業計画や財務情報などを公開する必要があります。情報の開示に極端に敏感な企業の場合、他の資金調達方法を検討した方がよいでしょう。

FUNDINNOは、リスクを取ってでも高いリターンを目指す投資家や、成長資金を調達してビジネスを加速させたいベンチャー企業にとって魅力的なオプションです。それぞれのニーズや状況を考慮した上で、最適な資金調達方法や投資先を選択することが重要です。

FUNDINNOに適した人

FUNDINNOが適している人は、以下の特徴を持つ投資家や起業家に分けられます。

投資家側での場合

  1. リスクを受け入れられる投資家: FUNDINNOを通じて投資する企業は未上場のベンチャーが多く、高い成長ポテンシャルを秘めていますが、それに伴うリスクも大きいです。リスクを受け入れ、長期的な視点で大きなリターンを目指す投資家に適しています。
  2. ベンチャー企業の成長に貢献したい投資家: FUNDINNOを利用することで、将来性のあるベンチャー企業を発掘し、その成長を支援することができます。新しいビジネスやアイデアに興味があり、それらを支えることに喜びを感じる投資家に適しています。
  3. 節税メリットを活用したい投資家:FUNDINNOでは、エンジェル税制などの節税措置を利用することができます。税制上の優遇を活用して、より効率的な資産形成を目指す投資家に適しています。
  4. 積極的な情報収集と分析を行う投資家:FUNDINNO上で提供される企業情報や財務データをもとに、独自の分析や判断を行うことが可能です。自ら情報を収集し、分析することが好きな投資家には適しています。

起業家側での場合

  1. 成長資金を調達したいベンチャー企業: 新しいプロジェクトの開始や事業拡大のための資金が必要な未上場のベンチャー企業にとって、FUNDINNOは貴重な資金調達手段を提供します。
  2. 広範な投資家層から資金を集めたい企業: FUNDINNOを通じて、小口の投資家からも資金を集めることができるため、従来の投資家層に限らず広範なサポートを得ることが可能です。
  3. 自社のビジョンや事業を広く伝えたい企業: FUNDINNO上でのプレゼンテーションやIR活動を通じて、自社の事業内容や将来性を多くの投資家に知ってもらう機会を得ることができます。
  4. 透明性を持って事業を運営したい企業:FUNDINNOを利用することで、企業は定期的な情報公開を行う必要があります。このプロセスを通じて、投資家との信頼関係を構築し、透明性のある事業運営を目指す企業に適しています。

FUNDINNOは、新しいビジネスや技術に情熱を持ち、それを支えることに意義を感じる投資家、また、革新的なアイデアを実現し、成長していく過程で広範なサポートを得たいと考えるベンチャー企業にとって、非常に魅力的なプラットフォームです。

会社情報

会社名 株式会社FUNDINNO
設立 2015年 11 月 26 日
代表 代表取締役CEO 柴原 祐喜

代表取締役COO 大浦 学

住所 〒108-0014 東京都港区芝五丁目29番11号

電話番号 03-6721-6691

コーポレートサイト https://corp.fundinno.com/
FUNDINNOサイト https://fundinno.com/

FUNDINNOを通じた資金調達は、日本のベンチャーエコシステムにおいて重要な役割を果たしています。多くの未上場ベンチャー企業が成長の機会を見出し、一方で個人投資家が新しい投資の選択肢を得ることができるのです。FUNDINNOは、ベンチャー企業と投資家をつなぐ架け橋として、日本のイノベーションを支える重要なプラットフォームとなっています。

株式投資型CF|イークラウド

イークラウド株式会社は、金融、IT、ベンチャーキャピタル(VC)の領域で蓄積された豊富な経験と専門知識を生かし、株式投資型クラウドファンディングサービス「イークラウド」を運営している日本の企業です。このプラットフォームは、金融技術の進展と法的枠組みの変化を背景に、ベンチャー企業に対する投資の機会を拡大し、一般投資家にもベンチャー投資の門戸を開いています。イークラウドの目指すところは、起業家には伝統的な資金調達手段(銀行ローン、VCからの投資、エンジェル投資など)以外の新たな選択肢を提供すること、そして投資家には新しい投資の機会を開くことにあります。

イークラウドは特に非上場ベンチャー企業の株式を、インターネットを介して公開し、多数の投資家から資金を集めることができる仕組みを採用しています。このシステムは、小規模ながらも有望なベンチャー企業に対し、資金調達の機会を広げる一方で、投資家にはこれまでアクセスしにくかった非上場企業への投資機会を提供しています。株式投資型クラウドファンディングを利用することで、投資家は投資後にその企業の株主となり、企業の成長を肌で感じることができます。また、ベンチャー企業が将来的にIPO(株式公開)やM&A(合併・買収)を果たすことで、投資金額を上回るリターンを得る可能性があります。

イークラウドのサービスは、投資家にとってはベンチャー企業の成長に共に参加し、その成功を支援するという意味での「応援投資」を可能にします。これは、非上場ベンチャー企業への投資が、2015年の法改正によってよりアクセスしやすくなったことにより実現しています。さらに、投資した企業が利益を出し、株主優待制度や配当を提供している場合、株主はそれらの恩恵を受けることができます。また、エンジェル税制などの税制優遇措置を利用することで、投資リスクを軽減することも可能です。

イークラウドで投資する|投資家側

株式投資クラウドファンディングでは、投資家は投資した金額以上の損失を被ることはなく、たとえ投資先企業が倒産しても、投資額を超える追加の支払いを求められることはありません。

EXITの方法

投資した非上場企業のEXITには主に次の二つの方法があります。一つは、投資した企業が株式市場に上場するIPOを経て、株式を市場で売却できるようになる場合です。もう一つは、投資した企業がM&Aによって買収された場合、持っている株式が買取価格で売却されるケースです。

目標金額に到達しなかった場合

募集案件が不成立となった場合、すでに入金した投資資金は速やかに投資家の登録の銀行口座へ返金されます。返金にかかる振込手数料はイークラウドが負担します。

リスクと注意点

イークラウドで投資する場合、非上場企業への投資になりますが、投資家が注意しておきたいことは次の通りです。

      1. 売却の制約: 非上場企業の株式は、上場企業の株式のように市場で自由に売買することができません。これにより、投資家は自己の資金を必要な時に迅速に回収することが難しくなります。
      2. 流動性の欠如: 非上場株式は流動性が低く、換金性に乏しいという特徴があります。投資した資金を売却によって回収することが困難であり、その結果、資金が必要になった際に柔軟に対応できない可能性があります。
      3. 価値の大幅な損失リスク: 非上場企業への投資は、企業の失敗や事業の価値が消失するリスクを伴います。このような場合、投資の価値が大きく損なわれる可能性があります。
      4.  配当や償還の不確実性: 非上場企業の株式投資では、配当が支払われない場合があります。また、社債券のように一定期間後の償還や定期的な利息の支払いが保証されているわけではありません。これにより、定期的な収入を期待して投資を行う場合、その期待が満たされない可能性があります。

これらは、非上場企業への投資において検討すべき重要な要因です。投資を行う際には、これらのリスクを十分に理解し、自身の投資目標やリスク許容度と照らし合わせた上で慎重な判断が求められます。

イークラウドで資金調達する|起業家側

イークラウドを通じた資金調達を検討している企業が事前に理解しておくべき重要なポイントは次の通りです。

審査期間

事業者の状況に応じて異なりますが、一般的には1週間から2週間程度を想定しています。

資金調達後の義務

会社法に基づく株主対応とイークラウド上の情報開示機能を用いた継続的な情報提供が必要です。イークラウドを通じた株主以外への連絡は、従来通り自身で行う必要があります。

資金調達にかかる期間

審査期間、事業者の状況、投資家の申し込み状況に依りますが、通常は1か月から2か月程度を見込んでいます。ただし、希望する金額全てを調達できるとは限りません。

資金調達の限度額

法令により、株式投資型クラウドファンディングによる資金調達の上限は1年間に1億円未満です。

対象事業体

合名会社、合資会社、合同会社、有限会社、個人事業主は、株式投資型クラウドファンディングを利用しての資金調達ができません。

手数料、その他の費用

利用には手数料が掛かります。(詳細は下述します。) 事前相談やイークラウドで株式投資型クラウドファンディング業務を行うか否かの審査に費用は掛かりません。但し、審査においては、外部専門家(弁護士、公認会計士、税理士など)に依頼する際は、実費を負担する場合があります。

案件不成立

案件募集期間終了時(撤回期間含む)に目標募集額に達しなかった場合は案件不成立となります。なお、キャンセル等により撤回期間中に目標募集額を下回った場合も案件不成立となります。これまでに集まった支援金は投資家にすべて返済されます。イークラウドは審査料はかかりません。

イークラウドの利用手数料

イークラウドの利用手数料は、成立したプロジェクトの株式発行価格の総額に応じて計算され、5,000万円以下の場合は20%(税込:22%)相当額を上限とし、それを超える場合は追加で15%(税込:16.5%)の手数料が加算されます。この費用構造は、プラットフォームの運営とサービス提供の質を維持するためのものです。また、東京都など一部の自治体では、株式投資型クラウドファンディングを利用した資金調達に対して助成金や交付金の提供を行っており、これらの制度を活用することで、企業の負担を軽減することも可能です。尚、イークラウドは審査料はかかりません

イークラウドの強み|企業連携

イークラウドは、ベンチャー投資の経験が豊富なメンバーや大和証券グループとの強固な連携により、資金調達から事業運営までをサポートしています。また、グループ会社を通じた後続の支援や、大和証券グループとの連携により、企業の成長過程における様々なニーズに対応できる環境を提供しています。これらの特徴は、イークラウドがベンチャー企業と投資家双方から選ばれる理由の一つです。資金調達のプロセスは、申し込みから着金まで最短で約1ヶ月と迅速であり、事業に共感する株主を獲得することで、企業のPR効果の向上とともに、中長期的な支援を受けられる環境を提供します。

イークラウドに向いていない人

以下のような投資家や起業家にはイークラウドは向いていません。

投資家サイド

  1. 低リスク投資を好む人: 非上場のベンチャー企業への投資は、高いリターンの可能性がある一方で、リスクも大きいです。資金が失われる可能性があるため、安定した投資を求める人には向いていません。
  2. 即時のリターンを期待する人: ベンチャー企業への投資は、長期的な視野で成長を見守る必要があります。短期間での高リターンを期待する人には不向きです。
  3. 具体的な事業内容や業界に詳しくない人: ベンチャー企業への投資では、その事業内容や将来性を理解し、評価することが重要です。特定の業界や事業モデルに関する知識が乏しい人は、適切な投資判断を下すのが難しいかもしれません。
  4. 資金の流動性を重視する人: 非上場企業の株式は、上場企業の株式に比べて流動性が低いため、必要な時にすぐに現金化することが困難な場合があります。

起業家サイド

  1. 厳密な事業計画や将来予測を公開したくない人: クラウドファンディングを成功させるためには、事業計画や将来のビジョンを広く共有し、投資家の信頼を得ることが必要です。事業内容を詳細に公開することに抵抗がある場合、クラウドファンディングは適していないかもしれません。
  2. 即座に大規模な資金が必要な人: イークラウドを含む株式投資型クラウドファンディングでは、比較的少額から中規模の資金調達が可能です。数億円単位の大規模な資金を短期間で調達したい場合は、VCや大手金融機関からの直接融資が適している場合があります。
  3. 公開募集の手続きや開示義務を避けたい人: クラウドファンディングは、多くの投資家から資金を募る公開募集にあたります。これには一定の手続きや開示義務が伴います。これらのプロセスを避けたい企業には向いていません。
  4. 特定の投資家やパートナーとの独占的な関係を求める人: クラウドファンディングでは多数の個人投資家から資金を集めるため、特定の投資家と密接な関係を築くことが難しい場合があります。特定のVCやエンジェル投資家からの資金調達を通じて、そのネットワークや専門知識を活用したいと考えている起業家のニーズには応えられない場合があります。

これらの点から、イークラウドを含む株式投資型クラウドファンディングは、特定のリスク許容度、資金調達の目的、事業公開に対する意欲、資金の流動性ニーズなどに応じて、すべての投資家や起業家に適しているわけではないことがわかります。

イークラウドに適した人

イークラウドに適した人は、以下のような特徴を持つ投資家や起業家に分けられます。

投資家サイド

  1. 新しい投資の機会を求める人: 従来の株式や債券などの投資に加え、新しい分野への投資を探求したい人に適しています。特に、非上場のベンチャー企業への投資に興味がある人はイークラウドを通じて多様な投資機会にアクセスできます。
  2. リスクを取ってでも大きなリターンを目指す人: ベンチャー企業への投資は高いリスクを伴いますが、企業が成長しIPOやM&Aに成功した場合、大きなリターンが期待できます。そのため、高リスク・高リターンの投資に魅力を感じる人に適しています。
  3. ベンチャー企業の成長を支援したい人: 単に財務的なリターンを目指すだけでなく、投資を通じて革新的なビジネスやアイデアを持つベンチャー企業の成長を支援し、その成功を共に喜びたいと考える人にもイークラウドは魅力的です。
  4. 税制優遇措置などのメリットを享受したい人: エンジェル税制など、ベンチャー企業への投資に対する税制上の優遇措置を利用したい投資家にも適しています。

起業家サイド

  1. 新しい資金調達の方法を探している人: 銀行ローンやVCからの資金調達に加え、より幅広い投資家から資金を集めたいと考えている起業家に適しています。
  2. 事業に共感してもらえる投資家を求めている人: 自社のビジョンや事業に共感し、長期的な視点でサポートしてくれる個人投資家からの支援を望む起業家にマッチします。
  3. 迅速な資金調達を必要としている人: イークラウドを利用すると、比較的短期間で資金調達のプロセスを完了させることができます。特に、シードやアーリーステージのベンチャー企業で資金調達のニーズがある場合に適しています。
  4. 事業の認知度向上を図りたい人: クラウドファンディングを通じて事業を広くアピールし、その過程で事業の認知度を高めたいと考えている起業家にとって、イークラウドは有効なプラットフォームです。

以上のように、イークラウドは多様なニーズを持つ投資家と起業家の双方にメリットを提供することができるプラットフォームです。

会社情報

会社名 イークラウド株式会社
設立 2018年7月
代表 代表取締役 波多江 直彦
住所 〒103-0028

東京都中央区八重洲1-5-20

東京建物八重洲さくら通りビル3F

コーポレートサイト https://corp.ecrowd.co.jp/
イークラウドサイト https://ecrowd.co.jp/

株式投資型CF|更なる規制緩和へ

空とビルと雲

2023年12月に、日本で株式投資型クラウドファンディングに関する規制緩和の新たな指針が公表されました。これは、2015年に導入された制度の見直しに関するもので、スタートアップ企業の資金調達の高額化に伴い、既存制度の更新が求められている背景があります。金融審議会の「資産運用に関するタスクフォース」による報告書では、主に以下の三点の規制緩和が提案されました。

  1. 企業の発行総額上限の引き上げ: これまでの1億円未満から、5億円未満への引き上げが提案されました。これにより、スタートアップ企業がクラウドファンディングを通じてより多くの資金を調達できるようになることが期待されます。
  2. 一般投資家の投資上限額の引き上げ: 従来の一律50万円の上限から、投資家の年収や純資産に応じた上限設定への変更が提案されました。これにより、個々の投資家のリスク許容度に応じたより柔軟な投資が可能となります。
  3. 投資勧誘の方法の見直し: 音声通話による商品説明を可能とすることで、投資家と企業との間でより効果的なコミュニケーションが図れるようになることが期待されます。

これらの規制緩和の目的は、スタートアップ企業が資金を調達しやすくするとともに、投資家にとっての選択肢を拡大することにあります。規制緩和の影響により、今後、上述したサービスはさらに利用しやすくなり、投資家や事業者にとって魅力的なオプションとなるでしょう。

(参考:株式活用クラウドファンディングの手数料助成|東京都

(参考:株式投資型クラウドファンディングの活性化に向けた規制緩和と今後の注目点|日本総研

海外における新しい資金調達方法について

近年、革新的なスタートアップ企業に資金を提供する方法が大きく変化しています。特に海外において、伝統的なベンチャーキャピタルや銀行融資に代わる新しい資金調達の手段が登場してきています。この文脈において、Diadem CapitalとWe Founder Circle (WFC)は、その先駆者として特に注目を集めています。これらのプラットフォームは、スタートアップと投資家の間における資金調達のプロセスを画期的に改善し、より効率的でアクセスしやすいものに変えてきました。Diadem Capitalは、スタートアップが資金調達ラウンドを「5倍速く」完了させることを約束し、We Founder Circleはグローバルなエンジェル投資家ネットワークを通じて、40カ国以上からのスタートアップに資金を提供しています。この2社をご紹介します。

海外事例|Diadem Capital

新しい資金調達プラットフォームDiadem Capitalは、高成長スタートアップの資金調達プロセスを迅速化することを目指しており、ラウンドを「5倍速く」完了すると約束しています。このプラットフォームは、創業者と機関投資家や貸し手をマッチングするものです。

Diademは、ウォール街の元投資銀行家であるステファニー・リーベン氏とジョー・ハミル氏により2年前に設立されました。申込者(起業家)は、プラットフォームへの受け入れ前に、リーベンとハミルによる厳格な審査を受ける申請書を提出する必要があります。企業がプラットフォームに受け入れられるためには、以前からのVCからの支援と、少なくとも100万ドルの年間収益率(ARR)が必要です。

申込者(起業家)は、誰から紹介されたか、およびその関係のステータスに基づく進行状況を確認できます。投資家はプラットフォームに直接参加することが可能です。

ディアデムはまた、年間収益率(ARR)が最大5,000万ドルに達するブートストラップ企業を対象に、借入資金の調達支援も行っています。現在、このプラットフォームには800のVC企業と100の融資機関が参加しています。ディアデムには約1,500件のスタートアップ申請があります。

これまでに、約17社のスタートアップがDiademのプラットフォームを通じて6,000万ドルを調達することができました。

(公式サイト:Diadem Capital

海外事例|We Founder Circle (WFC)

We Founder Circle (WFC) は、2023年に82社のスタートアップに対して103件の資金調達ラウンドに参加し、インドを代表するエンジェル投資家ネットワークとして名を馳せました。同社は、40か国以上からの1,000人以上のエンジェル投資家が集うネットワークを通じて、3,000万ドル以上の投資を動員しました。

3年前に設立されて以来、同社は207件の取引を通じて162社のスタートアップを支援してきました。また、グローバルネットワークにスタートアップ投資の機会を提供するため、Invstt.comというグローバルな投資およびネットワーキングプラットフォームを開発しました。

このプラットフォームは、すでに50件以上の取引を通じてスタートアップへの1,000万ドル以上の投資を促進しています。WFCはセクターを問わず、ディープテック、Web3、フィンテック、ヘルステック、アグリテック、電気自動車(EV)、D2Cドメインにわたるスタートアップへの投資を行ってきました。

同社にはEvolveXというアクセラレータープログラムもあり、今年は25社のスタートアップを支援しました。

(公式サイト:We Founder Circle

まとめ|株式投資型CFの普及で拡大する起業のチャンス

本稿では、新しい資金調達手段として注目されている株式投資型クラウドファンディングについて、国内と海外のプラットフォームをご紹介しました。これらのプラットフォームは、スタートアップ企業が直面する資金調達の課題に対し、従来のベンチャーキャピタルや銀行融資とは異なる新たな解決策を提供しています。

日本においては、株式投資型クラウドファンディングが2015年に法制化されたことで、未上場のベンチャー企業が小口の投資を募集し、必要な資金を確保できる道が開かれました。特に東京都が取り組む手数料助成制度は、この資金調達手段の普及と成長を促進し、より多くの企業が新たな資本を得る機会を享受しています。

一方、海外では、Diadem CapitalやWe Founder Circle (WFC)などのプラットフォームが登場し、グローバルな規模での資金調達の機会を創出しています。これらのプラットフォームは、スタートアップと投資家を直接的に結びつけることで、国境を越えた資本の流れを促進し、スタートアップ企業の成長機会を拡大しています。

国内外の資金調達における新しいプラットフォームは、スタートアップ企業が直面する資金調達の課題に対する革新的な解決策を提供し、より広範囲の投資家とのつながりを可能にすることで、企業成長の加速を支援しています。この動きは、今後も資金調達の風景を形成し続けることでしょう。

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