ロボットによる業務の自動化は、今や工場だけでなく、一般的なデスクワークにおいても積極的に導入が進められています。特に数値入力などの事務作業が多い会計業務においては、RPAとの相性が良いため、高い導入効果を期待できます。
今回は、会計業務にRPAを導入することのメリットや、実際に導入した場合の効果について、ご紹介していきます。
RPAとは
そもそもRPAはRobotic Automation Processの略称で、ロボットの力を使って業務を効率化、あるいは自動化するためのシステムです。
これまではデスクワークといえば人間が対応する頭脳労働と考えられてきたため、知能を持たないロボットでは対応ができないとされてきました。しかし近年はAIの開発が進んだことや、コンピュータの性能が向上したことで、作業労働を中心にデスクワークも自動化が進められています。
これまで手入力が必要だった業務も、RPAの導入でまとめて自動化が可能です。
RPA運用のメリット
RPA運用のメリットは多岐に渡りますが、主に以下の3つのメリットに集約されます。順に見ていきましょう。
業務効率化
RPA導入の最大のメリットは、やはり業務の効率化にあります。これまで何時間もかけて行っていたデータ入力も、RPAを導入すればまとめて自動化ができるだけでなく、一瞬にして入力を完了できます。
人間とは違い、RPAはデータを読み込むだけで完了するため、作業にはほぼ時間を必要としません。何時間もの業務時間を一気に削減できるのが強みです。
ヒューマンエラーの削減
RPAの導入は、単に業務時間を削減できるだけでなく、ケアレスミスの防止にもつながります。経費精算などの会計業務は単調な業務ではあるものの、数値入力などにミスがあると大きなインシデントにもつながりかねず、確認作業なども丁寧に行う必要があります。
しかしRPAの場合、読み込むデータそのものに問題がなければ一字一句を間違えることなく転記してくれるため、ヒューマンエラーの余地はありません。簡単な確認作業を挟めばミスの心配はないため、安心して運用ができます。
コスト削減
業務を短時間に圧縮し、なおかつ確認作業やケアレスミスの修正に追われることのない会計業務を実現できれば、運用コストの削減にもつながります。特に人件費の削減効果は大きく、必要な人手を大幅に減らせるのが特徴です。
人材不足の解消を実現し、優秀な人物はより高度な業務へと配置することができるようになるため、更なる企業の成長を促すきっかけももたらせます。
会計業務が抱える課題
会計業務は全ての企業が実施する必要のある重要な業務の一環ですが、既存の会計業務はどのような問題を抱えているのでしょうか。ここで会計の課題について、主な3つをご紹介します。
紙データ管理コストが増大している
一つ目は、データ管理に関するコストの問題です。近年はデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や、働き方改革の一環として、デジタルデータの活用が各所で進められています。
デジタルデータの管理そのものは快適な一方で、紙データの運用コストは大きくなりつつあります。紙データ単体の管理ならまだしも、デジタルと紙の両方を管理しなければならなくなっているケースも見られ、以前より管理負担は大きくなってきています。
顧客データや機密情報など、一部のデータは紙のままで残したいという理由から併用が選ばれていることもありますが、多くの企業でデジタル化が進んでいる点や、デジタル情報を一度紙に起こして運用したり、その逆もあったりすることで業務負担が増加しています。
また、書類を使ったデータ管理は複合機のリース料や紙代、書類保管スペースを確保したり、書類を整理したりする負担やコストもかかるため、どうしても経費を圧迫してしまいがちです。
デジタルデータに統合することで、大幅なコスト削減と業務効率化を促せます。
集計データの活用環境整備が遅れている
会計業務を通じて得られたデータセットや集計データは、組織の支出と収入のバランスを考える上で多くの知見をもたらしてくれます。しかしデータがアナログでまとめてあったり、データベースが統合されていないとなると、手動で集計を行わなければなりません。
手動での集計となると、その後の分析業務も手動で行わなければならず、分析業務の負担が大きくなってしまいます。会計管理を効率化する上では、統合データベース環境の整備も必要です。
RPAの活用によって、会計データを自動的に一つのデータベースに統合できるだけでなく、ソフトによってはデータ活用のための分析機能も複数実装されています。会計情報の閲覧が容易になるほか、分析機能を活用し、これまでは得られなかった角度から分析を進めていくことも実現します。
会計へのRPA導入で得られる機能
RPAの導入によって、具体的にどのような機能を利用できるようになるのでしょうか。ここで会計RPAの代表的な機能について、ご紹介します。
データベースの一元化
データベースの一元化はここまでも紹介してきた通り、RPA導入の柱とも言える機能です。一つのデータベースにあらゆる情報を統合できることで、入力作業や帳票作成などに伴うデータ検索や収集の作業から解放されます。
データベースが統合されるだけでも、大きな導入効果を実感できるでしょう。
入力作業の自動化
日々発生するレシートや領収書を参照にする経費精算も、RPAがあれば自動化できます。デジタルで発行される請求書や領収書の読み込みはもちろんのこと、OCR(光学読み取り機能)搭載のRPAを導入すれば、紙のレシートなども自動で読み込ませることができます。
手動での入力が必要なくなるため、業務負担の大幅な削減が可能です。
帳票作成の自動化
データのインプットだけでなく、アウトプットの自動化もRPAが実現します。エクセルデータやCSV、PDFを読み込ませれば、自動で請求書や伝票を作成し、メールやチャットツール、FAXなどで迅速に送信ができる環境を整備できます。
デジタルから紙に移行できると、印刷や封入、送付といった業務の必要もなくなるので、全体的な業務効率化にもつながります。複数のフォーマットを用意しておくことができるため、あらゆる帳票へ柔軟に対応可能です。
データ分析の効率化
会計データをもとにした、グラフ作成や分析などもRPAで自動化できます。入力したデータを必要な分析手法に合わせて流し込むだけで、グラフなどの図も自動で出力してくれます。これまでパワーポイントやエクセルを使って手動で作成していた場合は、RPAの導入で一気に自動化することができます。
また、データのインポートやエクスポートも自在に実施することができるため、必要に合わせて数字データをそのまま共有することも可能です。
他業務システムとの連携
RPAによって統合されたデータ環境を整備することで、会計業務以外のシステムとも連携することができます。顧客管理システムや人事管理システムと連携して、個別にIDを割り振り、より管理体制を強固なものへとアップデートすることが可能です。
実際の導入事例
最後に、実際の会計業務へのRPA導入事例も3つご紹介します。自社にあったスケールや運用アプローチの会社を参考にして、導入を進めていきましょう。
ラクスル株式会社
印刷・広告サービスを展開するラクスルでは、請求書印刷を含む請求業務の負担をRPA導入によって10分の1にまで削減し、業務効率化を実現しました。
これまで同社では請求書をすべて印刷して郵送する対応を採用しており、既存請求業務の負担軽減に限界を感じていました。そこで新たにRPAを導入したことで、クリック作業だけで業務を遂行できる体制を整備し、大幅な業務削減効果に繋げています。
郵送手配もクリック操作で実現し、1通1通の封入作業の必要も無くなったのが大幅な改善効果を生むポイントとなっています。
参考:https://www.rakurakumeisai.jp/casestudies/raksul.php
株式会社シャトレーゼ
洋菓子の製造と販売を手掛けるシャトレーゼは、多店舗展開に伴う経理の経費精算時間の増大を防ぐべく、経費管理RPAの導入によって業務の改善に成功しています。
これまで経費精算方法が紙中心だった同社では、経費精算そのものの工数に無駄が多かっただけでなく、外勤営業担当者も経費申請の時間確保が難しかったため、精算業務に遅れや必要以上の業務負担が発生することもありました。
そこで新たにRPAを導入することで、これまでの約半分の時間で精算業務を終えられるようになり、月5日程度かかっていた経費処理時間が約2日にまで抑えられるなど、大幅な業務効率化を実現しています。
参考:https://www.keihi.com/voice/chateraise/
株式会社イワサキ経営
イワサキ経営では、集計作業や書類のPDF化をRPAによって自動化し、業務効率化を進めています。過去の申告書類は読み取りRPAを活用して全てPDF化し、全社的なペーパーレスを推進しています。また、PDF化した書類も仕分けロボットを導入することで、人手でカテゴライズすることなく高度なデータ管理を実現しています。
参考:https://tax-rpa.com/voice/voice_iwasakikeiei/
まとめ
今回は、RPAを活用した会計業務の削減効果について、成功した導入事例を踏まえてご紹介しました。会計業務は多くの入力作業が発生するため、データの取り扱いに長けているRPAとは相性の良い仕事と言えます。
人間では実現できないようなスピードと精度で作業を進めてくれるRPAは、会計業務の効率化に大きく貢献します。自社の課題に合わせて、最適なRPAを導入しましょう。