現在、国内の商店街は来街者の減少や店主の高齢化、後継者不足など様々な問題に直面しています。
従来、商店街は街の賑わいの中心地であり、地域コミュニティの拠点としての役割を担っていました。
では以前のように、活気あふれる商店街を再建していくにはどのようなことが必要でしょうか。
今回の記事では、各分野で商店街の活性化に成功した国内3つの事例に着目し、にぎわい創出のポイントをご紹介していきます。
活性化成功事例1:三鷹市
まず始めにご紹介するのは、東京都三鷹市の事例です。
近年の動向
三鷹市は「安全・安心な地域社会の実現」、「より利便性の高い市民サービスの提供」、「市民間の豊かな情報交流の実現」のために近年、ICT環境の整備と利活用を積極的に行っています。
具体的には、帰宅困難者のためのWi-Fi設備の整備や、市のHPを中心としたインターネットによる情報提供、ICT人材育成のための取り組みなど、他の自治体と比較しても情報化への取り組みが進んでいます。
では、市内の商店街ではどのような取り組みが行われているか、その一例を次にご紹介します。
メディアアプリの提供
三鷹市では、『ミィね!mitaka』というメディアアプリのサービス提供を昨年12月より開始しました。
このサービスは、ユーザー1人ひとりのスマートフォンのGPSやビーコン機能を利用して、適切な情報を即時的に配信することが特徴です。
商店街での活用としては、スタンプラリーなどのイベントツールとしての利用方法があります。
イベント期間中、アプリをデジタルスタンプラリーとして活用することで、商店街の集客や販売機会の創出に繋がります。
また、現在はコロナ禍でインバウンドの見込みがありませんが、今後、訪日観光客の客足が戻った際、街をアピールできるように、アプリ内での情報発信は多言語化されています。
このように、本アプリは、三鷹市内の商店街に展開するお店と地域住民だけでなく、市内に訪れた観光客にも活用してもらえる地域情報アプリとなっています。
ちなみに、三鷹市内には22商店会・529店舗が展開し、これらを扱うとなると非常に膨大な情報量となります。
これらの情報をデジタル化することで、店舗・利用者・地域すべてにとって、プラスの効果を生み出しました。
特に、DX化によって、ユーザー動向や閲覧情報は地域活性化に繋げるための重要なマーケティングデータとなりました。
このように、IT技術によって商店街と地域住民、さらには観光客までを繋げ、地域活性化を推進したのが三鷹市の成功事例となります。
活性化成功事例2:健軍商店街
続いてご紹介するのは、熊本県熊本市東部に位置する健軍商店街です。
商店街に関する概要
健軍商店街は、熊本市内の中でも、非常に住みやすい地域として知られています。
商店街は、市電の始発終点駅である健軍町に隣接し、また近くには、区役所や市動植物園、文化ホール等の公共施設があります。
医療機関や福祉施設等が点在するだけでなく、商店街では、老朽化に対応する改修工事が実施済みであり、地域住民だけでなく来街者にとっても安心・安全な環境となっています。
さらに、健軍商店街では地域コミュニティとしての役割を果たすべく、様々な事業を推進しています。
例えば、心身の健康交流をキーワードに「貯筋運動事業」を行ったり、医療機関と連携した「医商連携型まちづくり事業」を実施したりするなど、あらゆる事業に力を入れています。
シェアリングエコノミーの活用
健軍商店街では、近年シェアリングエコノミーの活用を通じて、街の魅力づくりが進んでいます。
まずシェアリングエコノミーとは、モノや場所、スキルなどを共有する新たな経済サービスのことを指します。
熊本市内では、高齢化が急速に進む地域が多く、健軍商店街周辺も例外ではありません。
そこで、高齢者を中心とした買物弱者への支援とシェアリングエコノミーを融合したサービスが、健軍商店街では広がりつつあります。
例えば、地域住民が健軍商店街で購入した商品をタクシーで家まで届ける「らくらく宅配サービス」が挙げられます。
このサービスは、地域密着型のタクシー会社の既存ストックが地域住民によって有効活用される仕組みとなっており、未稼働タクシーを活用する好循環も生み出しています。
ただし、上記は他の多くの地域でも実践されていると言えます。
次に、健軍商店街ならではのシェアリングエコノミー活用を紹介し、成功ポイントを紐解いていきます。
シェアリングエコノミー活用の例として、今回は「スペース」のシェアをご紹介します。
コロナ禍で全国的に外食産業が低迷する中、健軍商店街では、通りの空きスペースを利用した変わり種の自販機が増えています。
自販機というと飲料水のイメージが強いですが、健軍商店街では「とん足」など、飲食店が店内利用だけでなく、新たな販売経路として自販機を活用しているのです。
これは地域資源であるスペースを有効活用し、地域の飲食店を活性化させる仕組みとして優れた例と言えるでしょう。
また、クラウドファンディングを通じて地域コミュニティを形成し、店舗と店舗を応援するファンを直接繋ぎ、ファンづくりに成功しています。
そして空き店舗物件をシェアキッチンとして活用し、子ども食堂などの開催することで、幅広い世代が集まる交流の場となっており、街の活性化に寄与しています。
このように、コロナ禍で低迷した飲食店経営も、新たな事業によって復興させることができています。そして地域全体の活性化にも繋がっているのです。
この取り組みの背景には、近年注目されるシェアリングエコノミーが存在します。
ぜひ地域資源を活用したシェアリングエコノミーに、取り組んでみてはいかがでしょうか。
活性化成功事例3:丸亀町商店街
最後にご紹介するのは、香川県高松市に位置する丸亀町商店街です。
再開発について
1990年代以降、駅前再開発や郊外型ショッピングセンターの展開などによって、市民にとってメインストリートであった商店街は衰退するようになりました。
集客の拠点が分散していき、商店街の歩行者通行量や売上額は急速に減少し始め、これは丸亀町も例外ではありませんでした。
どんなに都市化が進んだ地域であっても、人々が集まり触れ合う場となる中心地は必要です。
アメリカやヨーロッパのような大型都市にも中心となる広場が存在するように、広場はその地域に住む市民の誇りとなるだけでなく、外からの人々をも惹きつける賑わいの場となります。
そこで「100年先を見据えたまちづくりへ」をキーワードに、商店街の再開発事業がスタートしました。
具体的な事業内容としては、買い物だけでなく、暮らしの様々なシーンで楽しめる商店街を目指して施策が行われました。
例えば商店街には、ショッピング以外の様々なニーズに対応可能な多目的スペース「丸亀町レッツホール・カルチャールーム」があります。
この場は、市民の自由な創意で活用が可能で、イベント開催やカルチャーの情報発信の場として広く利用されています。
また「まちなかループバス」は、商店街周辺に多くのバス停を設置し、特に高齢者や障害を持つ方、小さな子供たちにとって安心・安全なサービスとなっています。
このサービスは、商店街でのお買い上げ金額に応じて乗車サービス券がもらえる仕組みとなっていて、商業と暮らしが融合した例と言えるでしょう。
コミュニティを強みとする商店街
丸亀町商店街は「出会い」「賑わい」「おもてなし」を基本コンセプトとし、再開発をスタートさせました。
そして近年は、ドーム・アーケードやカラー舗装の整備にも着手し、商店街全体の魅力アップにも力を入れています。
このような丸亀町商店街の再開発ですが、実は、再開発事業そのものにもコミュニティの強みが伺えるポイントがあったのです。
その一つが、公園や飲食店、生活雑貨店や福祉サービスなど、商業以外の機能を備えているという点です。
この再開発は、あくまでも、街の経済的な活性化のみが目的ではなく、持続的なまちづくりとコミュニティ形成が重要視されているということです。
再開発の特徴としては、まちづくり会社を地元住民が中心となって立ち上げ、自治体ではなく、まちづくり会社が商店街全体をマネージメントしているという点です。
この結果、業種の偏りなく街全体に必要な機能を補っていき、街全体の活性化を推進していくことができるのです。
このような民間主導型の商店街再開発は、丸亀町商店街が初の試みです。
「みんなの街をみんなで作っていこう」という姿勢が、丸亀町商店街コミュニティの強みへと繋がっていると言えるでしょう。
おわりに:商店街の活性化に必要なもの
今回は、国内商店街活性化事例研究として、活性化に成功した3つの商店街についてご紹介しました。
今回紹介した事例は、全て取り組みの方針や分野が異なるため、どの事例にも参考にできる部分があるでしょう。
また商店街の活性化は、ただ単に、各店舗の売り上げを伸ばし、経済に好循環を生み出すだすという支店だけでなく、市民や来街者の視点も必要です。
ぜひ、どのような施策を立てれば、地域・市民・来街者にとって魅力的な街になるか、検討してみましょう。
※参考文献
『ミィね!mitaka』
『高松丸亀町商店街』