中小企業のDX推進は人材不足で難しい?課題解決方法とは?

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2021年7月30日に総務省が公表した「令和3年版情報通信白書」では、デジタル人材不足の深刻化が指摘されています。DX推進に取り組みたいけれど、DX人材が採用できないと悩む企業も珍しくありません。中小企業がDX人材を採用しようとすると、採用コストが圧迫する恐れがあります。

このような課題を解決して、中小企業DX推進に取り組む方法はないのでしょうか?この記事では、中小企業が抱えるDX推進化の課題解決の方法について詳しく解説します。

 

大手企業と中小企業のDX推進の現状

出典元:独立行政法人 情報処理推進機構「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」

独立行政法人の情報処理推進機構の調査結果によると、約4割の企業がDXに取り組んでいます。約6割の企業がDX推進に取り組めていない状況です。企業規模別にみると、従業員数1,001名以上の大企業では約2割、300名以下の中小企業では約7割の企業がDXに取り組めていません。なぜ、中小企業はDX推進に取り組めないのでしょうか?

実は、意外かもしれませんが、中小企業の方がDX推進に取り組みやすい環境なのです。そのため、中小企業のDX推進の取り組み方を覚えておきましょう。

補足:中小企業の方がDX推進に有利

大手企業は資金力があるため、DX人材が獲得しやすく、中小企業は劣るのではないかと思う方もいるでしょう。

しかし、中小企業の方がDX推進に有利でもあります。その理由は「意思決定の早さ」「意思疎通のしやすさ」「レガシーシステムの少なさ」です。中小企業は経営者と従業員の距離が近いため意思疎通がしやすく意思決定のスピードが早いです。また、複雑かつ難解に構成されているレガシーシステムを導入していることもありません。

大手企業がDX推進に取り組むと承認が下りるまでに1ヵ月程度かかります。その一方で、中小企業は翌日に承認が下りることもあります。そのため、中小企業の経営者がDX推進に取り組む強い意思を持ち、正しい手順で取り組めばDX推進に有利となるのです。

 

中小企業DX推進の取り組み方

中小企業DX推進の取り組み方は以下の通りです。

1.経営者はDX推進を決意する

DX推進に取り組むと企業文化や組織・人事の仕組みの変革が不可欠となる恐れがあります。そのような変化を恐れない経営者の強い意思が中小企業DXには必要不可欠です。変革に対する社内抵抗が起きた場合は、経営者がリーダーシップを発揮しなければいけません。そのため、DX推進に取り組む前に経営者は覚悟を持ちましょう。

2.DX推進のビジョンを立てる

経営者がDX推進を決意したらビジョンを明確にするために「DXジャーニーマップ」を作成しましょう。DXジャーニーマップとは、会社全体でDXを実現するための設計図です。DXジャーニーマップには、以下の内容を記載しましょう。

  • デジタル設計図(目的・業務プロセス・指標・デジタルツール・CX)
  • ステークホルダーマップ
  • デジタル連携図
  • デジタル投資シミュレーション

DXジャーニーマップを作成する場合は、DX推進に詳しい方と社内業務に詳しい方と合作をしてください。しかし、中小企業にはDX推進に詳しい方がいない場合が多いです。そのため、DX推進に詳しいコンサルタントに相談することをおすすめします。

3.社内の従業員から同意を得る

中小企業でDX推進を実現すると、社内改革となる恐れもあります。従業員にはITリテラシーを学んでもらう必要があり、抵抗を抱く方も少なからずいるでしょう。そのため、DX推進に取り組む前に社内の従業員から同意を得ておく必要があります。

社内の従業員から同意を得るために、DX推進で活躍した人にインセンティブを付与するなど新たな制度を設ける企業も多いです。

4.DX推進部門を設置する

DX推進のビジョンを明確にして従業員から同意を得たら、DX推進部門を設置しましょう。DX推進部門は、データやデジタル技術の活用に取り組む場所となります。これらの業務を担う人材配置をしましょう。社内に適正な人材がいない場合は、外部委託する方法も1つの選択肢です。

 

中小企業DXの人材不足の解決方法

中小企業DX推進にはDX人材が必要です。DX推進に取り組みたいけれど、人材不足で採用できないという悩みを抱えた場合はどうすれば良いのでしょうか?ここでは、中小企業DX人材不足の問題の解決方法をご紹介します。

1.社内研修

DX人材不足は深刻な問題となっており、約9割の企業が採用に難しいと回答しています。この問題を解決する方法が社内研修です。従業員にDXに関する知識と技術を身に着けてもらうことにより、DX人材を確保していきます。

政府もDX人材不足の課題解決に取り組んでおり、無料で受講できるオンライン講座などを用意されているため、積極的に活用していきましょう。これらを活用して人材育成していけばDX人材を採用せずに済みます。

 2.外部委託

都内の企業はDX人材の獲得は比較的に安易ですが、地域の企業によるDX人材の獲得は難易度が上がります。また、DX人材不足により人材獲得コストは上がっています。

高い賃金でDX人材を採用しなければいけず、固定費が圧迫されてしまうでしょう。このようなDX人材採用の課題を解決する方法が外部委託です。DXに関する知識を持った専門家に外部委託することで、採用コストを削減できます。また、地域の企業でも外部委託であれば依頼が可能です。

 3.ローコードツール

ローコードツールとは、プログラミング言語を必要とせずにシステム開発が行えるツールです。GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)と呼ばれる直感的な操作で、部品と部品を組み合わせることで簡単にシステム開発ができます。

また、ローコードツールで開発したシステムであれば、保守・管理が容易になるという効果も得られます。プログラミング言語で開発するシステムより制約が出てしまいますが、画期的なローコードツールが登場してきているため、上手に活用すればDX推進を加速させられるでしょう。実際に、システム開発の工期を半分に短縮できた成功事例もあります。

 

政府は中小企業DXを支援

中小企業のDX推進の取り組み方をご紹介してきましたが、政府が積極的に支援活動をしています。DX推進に取り組む上で、どのような支援があるかを確認しておきましょう。

 DX研修の場を提供

政府は中小企業DX推進を図るために、以下のDX研修の場を提供しています。無料で受講できるため、DXに関する知識を身に着けたい場合は受講をしてみましょう。

METI DX 経済産業省 ITを徹底的に活用するためのノウハウがオンラインで受講できる(無料) 
中小企業DX推進事業(研修) 都道府県 経営者向け・実務者向けのDX推進研修が受講できる
DX支援研修 商工会議所 経営者向けのDX研修が受講できる

DX関連の補助金・助成金の提供

また、政府は中小企業のDX推進を図るために、以下の補助金・助成金を提供しています。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 新商品開発のために製造機械の購入やシステム構築する場合に申請できる
IT導入補助金 バックオフィス業務効率化や生産性工場、新規顧客獲得のために、ITツールを導入する場合に申請できる
戦略的基盤技術高度化支援事業 中小企業が産学官と連携して行う研究開発や新サービス開発をする場合に申請できる
小規模事業者持続化補助金 販路拡大を目的とした費用(機械装置・広報費・展示会出展費・旅費・開発費・資材購入費・専門家謝礼金・設備処分費など)を要する場合に申請できる
サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金 サプライチェーンの脆弱性が顕在化したことから強化を図る目的で誕生した
全国事業再構築補助金 新分野展開・業態展開・事業や業種転換・事業再編などに取り組む際に申請できる
テレワーク促進助成金 働き方の多様化を実現するためにテレワークを開始する際に申請できる

DX投資促進税制が策定

参照元:経済産業省「令和3年度(2021年度) 経済産業関係 税制改正について」

 DX推進が叫ばれていますが、政府が牽引しています。政府は企業のDX推進が加速するようにDX投資促進税制を創設しました。DXの実現に必要なデジタル関連に対して税額控除が適用されます。適用期限は2022年末までのため、この税制が終了するまでにDX推進に取り組むことをおすすめします。

DX人材不足を解消!中小企業DXの成功事例

中小企業のDX推進はスモールスタートで構いません。少しずつ業務効率化・生産性向上を実現していけば、将来的に大きな成果へと繋げられます。実際にDX推進に取り組み始めた中小企業では、どのような取り組みが行われているのでしょうか?ここでは、中小企業DXの成功事例をご紹介します。

上総屋不動産株式会社

出典元:上総屋不動産株式会社公式ホームページ

地域密着型で賃貸管理業を営む上総屋不動産株式会社には、賃貸物件のオーナーや入居者からの電話対応に追われていました。新規顧客からのお問い合わせからクレームまで電話内容はさまざまで、毎月1,500件の対応に追われていたのです。

電話対応業務では、取り次ぎミスの発生が課題として挙げられていました。この課題をシステム導入で解決。システムで顧客管理し、通話データを自動録音。DXに取り組み、取り次ぎミスや認識違いのミスを防止することに成功しました。

株式会社東京電機

出典元:株式会社東京電機公式ホームページ

非常用・防災用の発電装置を取り扱う製造メーカーの株式会社東京電機は、紙管理による誤入力や紛失など図面管理体制が非効率であることを課題に感じていました。

同社では図面をペーパーレス化にするだけでなく、製造機器にIoTを導入。機器から製造工程に関するデータを自動取得できる仕組みを整えて、業務効率化に成功しました。

株式会社日東電機製作所

出典元:株式会社日東電機製作所

有機的ネットワークを構築している株式会社日電機製作所では、ルーティン作業をRPAで自動化。データを印刷して判子を押す作業をRPAで自動化することで、事務作業の時間を約20時間削減することができました。

ルーティン業務の従業員には意思決定が必要な業務を充て、生産性向上に成功しています。

DX人材不足の解決の鍵は「経営者の意思」

 中小企業がDX推進に取り組むための課題として「ヒト」「カネ」「ノウハウ」が挙げられます。しかし、中小企業のDX推進は経営者が強い意思を持てば、これらは大きな問題となりません。DX人材不足の問題は「社内研修」「外部委託」「ローコードツール」で解決できます。

また、政府の施策で税制、補助金制度など金銭的な支援も受けられます。ノウハウも得たいと思えば、無料でオンライン受講が受けられたりコンサルティングが受けられたりします。これらから分かるように、経営者の意思がDX推進の成功の秘訣なのです。ぜひ、これを機会に中小企業の方はDXに取りんでみてください。