みなさん。こんにちは。今回は株式会社サイバードで新規事業の立ち上げやDXの導入を推進している元木 理恵氏へのインタビュー記事を掲載します。社内のDX化、特に新しいツールを導入する際のポイントについて教えていただきました。
元木 理恵氏
株式会社サイバード
(Voice UI部 副部長/プロデューサー/Voice UI/UXデザイナー)
2006年1月株式会社サイバード入社。コンテンツ事業の企画・プロデュースに携わる。
2016年2月より、Voice UI事業のR&Dを開始し、Voice UI部の立ち上げに貢献。
現在、同部でプロデューサー兼Voice UI/UXデザイナーを務める。
Voice UI、音声関連に従事したり興味がある人たちのためのグローバルなコミュニティ『VoiceLunch』の運営も行い、社内外に活動の幅を拡げ、Voice UI界の盛り上げに精力的に貢献。また、SaaSなどの新規事業開発にも取り組んでいる。
■受賞歴
・Alexaスキルアワード2018「Philips Hue賞」受賞
・LINEBOOTAWARDS2018「Qiita賞」受賞
・MashUpAwards2018 ファイナル進出
ーまずは、これまでの経歴について教えていただけますか?
元木 理恵氏(以下、敬称略):まずは印刷会社で企画の仕事をやっていました。その後、広告代理店の制作を主にする会社に転職してディレクターをやっていました。社会人経験の前半はITの仕事ではなく、紙の仕事が多かったです。その後、株式会社サイバードに転職してから15年が経ちます。
ー現在取り組まれていることについて教えてください。
元木:株式会社サイバードでは、Voice UI部に所属し、新規事業の立ち上げをやっています。アレクサやGoogleアシスタントなどの音声AIを利用したコンテンツの企画や、それに紐付く会話設計、開発ディレクションをしています。それに加えて、SaaSの新規事業も別に作っています。
ー新規事業についてはいつ頃リリース予定ですか?
元木:今年の後半には発表できればと思っています。実はまだ世の中に出ていないようなSaaSを作っているところです。この2年で働き方がどんどん変わっていますが、企業様が困っていること、課題として持っていることを解決するようなサービスになります。
ー「今、企業様が困っていること、課題として持っている」ということでしたが、具体的な課題を見つけた出来事がありましたか?
元木:そうですね。社内についてになりますが、新しいコミュニケーションツールを導入する支援をしたことがありました。
それまでは、別のチャットツールを使っていましたが、コロナ渦になり、リモートワークをしていかなければならない状況になりました。そのため、よりコミュニケーションを促進する必要があることから、新しいコミュニケーションツールの導入を行う必要がでてきました。
他の企業においては、管理部門が主導になって新しいツールについて社内へ導入支援を行うことが多いと思いますが、コミュニケーションを社内でうまく取っていける人、新しいツールに強そうな人ということで、私の部署がその担当になりました。結果的にはプロジェクトを主導することで、いろいろと課題が見えてきたことから非常によい経験をさせていただきました。
具体的に何をやったかと言いますと、まずは、これまで使っていたツールと何が違うかということを社員に理解してもらうことでした。資料を作ったり、説明をしたり、各部門にアンバサダーを立てたりしました。
アンバサダーに関しては、各部門から一人ずつ集まってもらいレクチャーをしました。彼らは、各部門で新しいことに興味のある人が選ばれてきているとは思いますが、何をしたらいいのか?何でこれを導入するのか?何をやってもらいたいの?という状態でした。
その後、毎週ミーティングを開き、部門ごとのネガティブ、ポジティブ両方の意見を集約し課題解決をしてきました。ネガティブな意見の人に対してはコミュニケーションをとって解決していきました。とにかく納得するまで、根気強く説明しました。
根気よく話をして、寄り添うことが大切です。DXを進める時、AからBに変える時、大切なことはここだと思います。導入当時は、ネガティブな意見を言っていた方も今では、快適に使ってくださっています。
社内でDXを推進する上で重要なこととは?
ー苦労された点はありますか?
元木:やはり、人とのコミュニケーションです。タスクの名前は「コミュニケーションタスクフォース」でしたので、コミュニケーションをとって解決していきました。
導入する側になったことで、何百人に同じものを使ってもらうことの大変さを知りました。その中で感じたことは、これをやった後に何があるのか、どんな未来があるのか、どれだけ楽になるのかをイメージしてもらうことが一番大事なことだということです。
さらに、単純にツールを導入するだけではなく、そこから先の社員同士のコミュニケーションをどう構築していくかを考えていくことも含めての推進なので、まだまだその苦労は終わりがないと考えています。
ー実際にコミュニケーションをされる時、どういう工夫をしましたか?
元木:全社的なアナウンスに関しては権限者からにしてもらいました。導入のスケジュールや手順などを全員に見せた上で、各部署からアンバサダーを立ててもらうことをお願いしました。
そして、週一回アンバサダーとミーティングを行い、使い方などをレクチャーしてから使ってもらいました。各部門での意見や疑問などについては、アンバサダーに集約してもらって、次のミーティングですぐに解決するようなプロセスで進めました。
ネガティブな意見を持つ人には、新しいツールを導入することで、楽になるし、良い仕事環境になるということを粘り強く説得し続けました。
ー完全に新しいツールを導入するまでには、前のツールと並行して使用していましたか?
元木:はい、そうですね。被っている時期はありました。しかし、完全移行までのスケジュールは決めていましたので、期限までには完全に新しいツールに切り替えることができました。
大規模組織では完全な移行ができないというケースが多いと聞きますが、使っているツールが部署によって違ってしまうと社内で情報の伝達がバラバラになってしまい、意思統一が出来づらくなくなってしまうため、完全に移行させました。
ー新しいツールを導入したことで実際便利になりましたか?
元木:色々なことが有機的に繋がったなという気はしています。例えば、社内のAさんがとても良いプレゼンをした。私がそのAさんに素晴らしいということを伝えたいとした時に、ダイレクトメッセージを送ることがあります。
ただ、ダイレクトメッセージだとクローズドになってしまうので、同時に、Aさんを知っている人に、「Aさんの発表がこんな内容でとても良かった」と別に伝えるようにしています。そうするとそれがオープンになります。
特にリモートワークにおいては、ちょっとでもこの人と話したことがあるというのが大事になってきます。リモートワークではできにくいといわれている「他の部門の人との接点」を作りやすくなります。
さらには、リモートでチャットして、ランチミーティングしたり、後輩が開いている社内イベントに参加したりと、直接仕事では関わらない部分で
積極的に他部門の人と接点を持つようにしています。
ーDXを推進する上で重要なことは何ですか?
元木:DXは面倒くさい、難しそうというイメージが一般的にあるのかもしれませんが、導入する際には、イメージできない事に対する恐怖、何だかわからないということの怖さに起因して、保守的な考えが起こりがちだと思います。
そこで、これを使ったらどうなるかということを出来るだけイメージさせてあげることが、DXを成功させる鍵ではないかなと思います。
「これは、便利だ!」「浮いた時間で他のことにリソースを使うことができるぞ!」といった建設的なイメージをDXを活用する側の人に抱いてもらうことが大事だと思います。
また、組織は人で成り立っており、何かを導入しても、最終的に人が使うことになります。ネガティブな人に対しては、熱心に説得をします。妥協せず、最初に決めたことを貫くことが大切だと思います。
あと、DX推進は、兼業ではできないと思います。やはり、専任で推進する必要があると思っています。
さらには、社是や、VMV(ビジョン・ミッション・バリュー)等、会社が大事にしていることに焦点を当てれば、同じ気持ちで臨むこともできるはずだと思っています。
効率化できること、人の手がかかっているところを一瞬で終わらせる方法があるのであれば是非導入したいよね、というのがDXだと思いますし、この不確かな時代に会社を生き永らえさせるための柱を立てるためにDX化するという事ではないかと思います。
ー貴重なお話をありがとうございました!
元木氏に関しては、Voice UI/UXに関して以下の著書の執筆とコミュニティ『VoiceLunch』のグループを運営されています。以下ご覧いただければと思います。
■執筆
・伊藤さやか氏との共著『スマートスピーカーアプリのお品書き』『スマートスピーカーでおうちハック』
Voice UI/UXの企画・会話設計やプラットフォーム機能差異等について担当。
・『リモートワークをゆるく清く潔く整える』他、合計4冊リモートワークにおける時間活用と継続をテーマに執筆。
■Voice UI、音声関連に従事したり興味がある人たちのためのグローバルなコミュニティ『VoiceLunch』のグループ
https://voicelunchjp.connpass.com/