矢野経済研究所の調査結果「ドローンの世界市場規模予測」によると、2018年度のドローン市場規模は約1.6兆円。年平均成長率は8.3%で成長し、2025年度には約2.9兆円になると予測されています。
急成長をする海外のドローン市場ですが、従来の機器と比較して高性能になっていることはご存知ですか?高性能化したドローンを活用した新たなビジネスモデルが続々と登場しています。
実際に、どのようなビジネスモデルがあるのでしょうか?この記事では、海外のドローンビジネスについて、成功事例を踏まえて解説します。
【海外】ドローンビジネスの最新動向
海外のドローン市場は拡大していますが、拡大にはドローンの動向が大きく関与しています。ここでは、海外のドローンビジネスの最新動向について分かりやすく解説します。
非GPS環境下での自律飛行
Google社やApple社の出身者が在籍するSkydio社では、ドローンの自律飛行に関する研究が行われています。2020年7月には、NYYドコモ・ベンチャーズが同社への出資を発表して大きな話題を集めました。
同社の自律飛行型ドローンは、機体の上下にVISUAL SLAMが取り付けられており、障害物を検知して、自動で回避飛行ルートを計算します。障害物を自動で回避でき、GPSが機能しない場所でも暗所でなければ自律飛行ができるとして大きな注目を浴びています。
2020年11月に、Skydio社は東京オフィスを開設。地震大国の日本のインフラ設備の点検などにドローンを活用することを発表しました。Skydio社が本格的に日本に参入することで、国内ドローン産業が急拡大していくのではないかと予測されています。
デジタル道路の構築
2021年5月、ソフトウェア会社のAirspace Link社が、約11億円の資金調達に成功したとして大きな注目を浴びています。同社は、ドローンを飛ばすためのデジタル道路の構築、管理ができるシステムを販売。このシステムを活用すれば、FAA(米連邦航空局)のLAANCに準拠しているため、ドローン飛行の申請が容易に行えます。
無人飛行のドローン用デジタル道路の構築を加速化させ、ドローン経済に寄与するシステムとして注目を浴びているのです。Airspace Link社は、政府機関や自治体ともパートナーシップを築いているため、デジタル道路の構築は加速化されるとして期待されています。
ドローン通信セキュリティの強化
ドローンビジネスで注意をしなければいけないのがハッキングです。ハッキングの手法はさまざまで、GPSスプーフィングでは、ドローンに偽のGPS座標を与えられます。他人の車や人に衝突させるなどの被害や、ドローンで撮影したデータが盗まれる被害も懸念しなければいけません。
このような課題解決のため、Rafael Advanced Defense Systems社は2021年6月にサイバーコンソーシアムを設立。同社は、イスラエル国土を防衛するミサイル迎撃システムの開発企業であり、ノウハウを活かしたドローン検知及びドローン検知システムを開発。
イスラエル内の重要施設で採用されているシステムを海外に展開すると発表しました。従って、ドローン通信のセキュリティの安全性が担保されることは間違いありません。
【海外】ドローンビジネスの成功事例
ドローンの技術は高度化しており、ドローンビジネスが加速しています。実際に、海外ではドローンビジネスが続々と登場しています。実際に、どのようなビジネスがあるのでしょうか?ここでは、海外のドローンビジネスの成功事例をご紹介します。
ドローン配送
Googleの親会社であるAlphabet社から、スピンアウトしたWing社。Wing社がドローン配送に成功したのは、2019年10月。ロジスティクスで困難なラストワンマイルをドローンで実現するため、Sugar Magnolia社(ギフトショップ)の協力を得て、研究が行われてきました。
2020年4月に、連邦航空局からドローン配送が承認されました。現在では、小型軽量(1.3キロ以下)の商品であれば、ドローンで配送することができます。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、米国バージニア州はロックダウンしましたが、住民にトイレットペーパーや薬を届けるための手段として、ドローン配送が使用されました。新型コロナウイルス感染後、ドローン配送は急速に拡大しています。
最先端医療サービス
Wing社と肩を並べて、ドローン配送で注目を浴びているのがZipline社です。Zipline社が注目を浴びている理由は、未舗装な道路が並び荷物の搬送が難しいと言われているアフリカで血液を届ける救命医療サービスを提供していることです。
Zipline社のドローンは、最高時速130km。他社のドローンと比較してもスピードがあり、80km先の病院に血液が届けられます。このサービスを利用する病院側の手数料は無料。ルワンダ政府と包括契約を締結しており、配送費用は保健省が負担する仕組みになっています。
アフリカにとって、Zipline社の最先端医療サービスは欠かせない存在へと成長しています。
精密農業の実現
マレーシアのドローン会社であるAerodyne社は、ドローンを活用した農業分野のビジネスに注力しています。ドローンを活用して農作物の健康状態や収穫量をモニタリングし、データ活用して精密農業(農作物の収量および品質の向上を図り、その結果に基づき、次年度の計画を立てる農業管理手法)の実現に取り組んでいます。
また、DJI社は農業の効率化を実現するためのスプレードローンを開発。3kmの範囲内で一度に農薬が撒ける画期的なソリューションを販売・提供しています。
インフラ設備の点検
自律飛行ができるドローンを開発したSkydio社では、インフラ設備の点検事業が開始されます。
橋梁、屋根、外壁、鉄塔、基地局などさまざまなインフラ設備の点検や、高度経済成長期に建設されたインフラの老朽化の点検を実施。施設警備を担う人材の不足をドローンで補填します。
海外のドローンビジネスの成功事例をご紹介しましたが、2021年度のドローンビジネスには、以下のようなビジネスにも注目が集まっています。
・撮影事業
・検査事業
・配送事業
・広告事業
・マーケティング事業
・不動産事業
Coca-Cola社は、高層ビルの建設現場で働いているワーカーに対して、ドローンでコカコーラとメッセージをお届け。このような企画で広告・マーケティング部門で成功を収めています。
また、巨大スーパーマーケットのWalmart社は、ドローンを活用した在庫管理の実証実験を開始しています。
まとめ
今回は、海外のドローンビジネスの最新動向と成功事例について解説しました。非GPS下の自律飛行やセキュリティ強化が実装され、空撮だけではなく、さまざまな利用用途でドローンが活用されています。
海外企業が日本に続々と進出してきており、日本企業の事例が少ないのが現状です。これを逆手にとり、ドローンビジネスに参入をすれば、ビジネス機会が得られます。ぜひ、今後、急拡大するドローンビジネスに注目しておきましょう。