畜産DXとは?求められる背景から取り組み方まで徹底解説

畜産DXとは?求められる背景から取り組み方まで徹底解説

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第一次産業の労働者不足が深刻な問題になっています。畜産業もその1つです。畜産業は搾乳など重労働が多く、労働者の負担が大きいです。このような問題を解決するために、畜産DXの推進が欠かせません。畜産DXとは、何なのでしょうか?どのように取り組めば良いのでしょうか?この記事では、注目を浴びている畜産DXについて詳しく解説します。

畜産DXとは

畜産DXとは、畜産業にデジタル技術を浸透させていき、人々の生活をより良いものへと変革することをいいます。

具体的に説明すると、大量のデータを蓄積してAIで解析することで、牛の発情時期や疾病兆候を的確に知ることができれば、生産量を上げることができます。また、肉や乳の品質を上げることができ、顧客満足度を上げていけるのです。

このように、畜産業の業務効率化やサービス品質の向上のために、DX推進していく必要があります。

畜産DXが求められる背景

畜産DXが求められる背景は「労働者不足」「飼料価格の上昇」「消費者ニーズの多様化」「劣悪な労働環境」が挙げられます。

労働者不足

畜産DXが求められる背景の1つ目は、労働者不足です。離農や少子高齢化の影響による、労働者不足が深刻な問題となっています。その結果、農業経営体数が大幅に減少しているのです。農林水産省「農林業センサス」によると、2005年度は6万2,143件の事業が存在しましたが、2015年度には4万4,959件まで減少しました。労働者不足による後継者不足による廃業を決める事業者が増えてきているのです。

飼料価格の上昇

畜産DXが求められる背景の2つ目が、料価格の上昇です。蔵王酪農センターが必要経費を算出したところ、電気代が140%、重油やガソリンの燃料価格が150%、飼料価格が140%上昇していました。必要経費が畜産の経営を圧迫しているため、業務上の「ムダ」「ムリ」「ムラ」を改善して、経営皆瀬していかなければいけません。そのため、畜産DXを推進していく必要が出てきているのです。

消費者ニーズの多様化

畜産DXが求められる背景の3つ目が、消費者ニーズの多様化です。ブランドなど特定の品質にこだわりたい方や、安全性や新鮮度を重視したい方、低価格を希望したい方など消費者ニーズはさまざまです。事業者は、流通経路にも着目して、どのような肉を販売していくべきか経営戦略を考えなければいけません。経営戦略はデータを取得しなければ立案できないため、畜産DXを推進していく必要が出てきているのです。

畜産DXに取り組むメリット

畜産DXが求められる背景をご紹介しましたが、どのような効果が見込めるのでしょうか?次に畜産DXに取り組むメリットをご紹介します。

労働者不足を補える

畜産DXに取り組めば、作業の省力化を実現できます。例えば、IoTを活用して畜舎環境の遠隔モニタリングをすれば、本社から畜舎まで往復する必要がなくなります。このように省力化を実現すれば、少ない労働力でも作業を回すことができます。

熟練者の技術を継承できる

畜産DXに取り組めば、サーバーに必要な情報を蓄積していけます。畜産の作業は、熟練のスタッフの経験や勘により行われているケースが多いです。このような場合、熟練スタッフが離職するとノウハウが失われてしまいます。若手の従業員に技術を継承できず、廃業を迎える事業者も珍しくありません。しかし、サーバーにノウハウを蓄積しておけば、このような問題を解決していけます。

生産性を向上できる

畜産DXに取り組めば、生産性向上が見込めます。例えば、IoTを活用して飼料タンクの残量を可視化すれば、適切なタイミングで飼料の補充ができてムダがなくなります。また、牛群の行動データをAIで解析すれば、品質を良くするための飼育方法が可視化できます。このように生産性を向上して、売上や利益を伸ばしていくためにも、畜産DXに取り組む必要が出てきているのです。

畜産DXの取り組み事例

畜産DXのメリットを紹介しましたが、どのように取り組めば良いか、事例を確認しておきましょう。ここでは、畜産DXの取り組み方をご紹介します。どのようなDX関連の製品があるかをご紹介しているため、気になるものは導入を検討してみてください。

牛群の行動データを一元管理

出典元:牛群管理システムFarmnoteの公式ホームページ

牛群管理システム「Farmnote」は、ウェアラブル端末「Farmnote Color」を牛の首に装着して、クラウド上で牛の行動を解析するシステムです。大量のデータを蓄積してAIで解析することで、牛の発情時期や疾病兆候を的確に知ることができます。牛の管理で重要な発情時期を的確に把握することで、排卵と人工授精をするべきタイミングが特定でき、生産性向上を実現していけます。

畜舎環境の遠隔モニタリング

出典元:ファームクラウドの公式ホームページ

畜産向けの経営支援システム「ファームクラウド」は、畜舎環境を管理できるシステムです。給餌量・給水量・産卵数などのデータをクラウドに送信することで、データを業務の改善に役立てられるようになります。それだけでなく、温度調整器や制御盤と連携させれば、遠隔からカーテンの開閉ができたり、温度調整などができたりします。そのため、従業員の畜舎の見回りコストが削減できるのです。

家畜管理の効率化・自動化

出典元:AIカメラPIGIの公式ホームページ

AIカメラ「PIGI」を使用すれば、最大50頭分の体重・体長を自動で計測できます。常時、体重・体長を計測できるため、豚や牛の日々の成長をデータで確認できるようになります。また、畜舎の温度差を測定して、適温に保つことも可能。豚や牛の動態を分析すれば、異常を検知できます。そのため、家畜管理の効率化・自動化が実現できる製品として注目を浴びています。

搾乳ロボットの自動化

出典元:広島大学「搾乳ロボット」

広島大学では「搾乳ロボット」の開発が行われています。搾乳ロボットは、乳牛の体調管理をしつつ、搾乳を全自動で行える画期的なロボットです。絞乳ロボットを使用すれば、酪農家の搾乳の作業が効率化できます。搾乳は、酪農家が早朝と夕方の1日2回取り組まなければいけず、拘束時間が長い重労働です。この重労働を自動化できるとして、広島大学の研究結果は大きな注目を浴びています。

まとめ

この記事では、畜産DXについて解説しました。畜産DXを推進していけば、人材不足の問題や労働力の負担の軽減ができます。それだけでなく、高品質な肉や乳製品を大量に作れるようになり、売上や利益が見込めます。このような理由により、畜産DXが注目を浴びているのです。この記事では、畜産DXが求められている背景やメリット、取り組み方をご紹介しました。ぜひ、これを機会に畜産DXに取り組んでみてください。

また、水産業におけるDXの記事は本サイトの「水産業DXとは?求められる背景から取り組み方まで徹底解説!」をご覧ください。

さらに、農業におけるDXの記事は本サイトの「農業DXが2030年までに求められる背景とは?事例付きで取り組み方を紹介畜産DXとは?求められる背景から取り組み方まで徹底解説」をご覧ください。

※参考文献
『農林業センサス』
『農業共同組合新聞 配合飼料供給価格 過去最高の値上げ幅 1t当たり1万1400円上げ JA全農』
『農研機構 牛肉に対する消費者ニーズの分類
※出典元ホームページへのリンク
『牛群管理システムFarmnoteの公式ホームページ』
『ファームクラウドの公式ホームページ』
『AIカメラPIGIの公式ホームページ』
『広島大学「搾乳ロボット」

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