近年経済産業省なども積極的に喧伝し、注目が集まっているファクタリング業。利用する企業にとってさまざまなメリットがあることから、新たにファクタリング業を始めてみようと検討している経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
今回の記事では、ゼロからファクタリング業を始めるにあたって必要な情報と、開業手順について詳しくご紹介していきます。
ファクタリング事業とは
ファクタリング (factoring)とは、企業が保有している売掛金をファクタリング会社が買い取るサービスのことです。ファクタリング会社は売掛金を買取り、現金化します。
主に個人事業主や中小企業が資金調達を目的として利用します。
近年ではオンライン完結の「クラウドファクタリング」も登場しています。AIなどを活用し、審査における人件費を抑えることで手数料が安くなることもあり、より利用者にとってはファクタリングを利用しやすい環境が整備されてきていると考えられます。
ファクタリングで取り扱いの対象になるのは、入金額と入金日がすでに決定しており、支払い期日が先の確定債権です。不良債権は取り扱い対象ではありません。
法改正によって将来的に発生する将来債権の譲渡も可能となりましたが、多くのファクタリング会社では取引対象外なので注意しましょう。
ファクタリング:2つの種類
ファクタリングには、買取型と保証型という、2つの種類があります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
買取型
買取型は、ファクタリング会社が売掛債権を買い取る形式で、手数料を差し引いて現金で支払われます。一般的なファクタリングはこの買取型を指しています。
買取型にはさらにファクタリング会社と利用会社の2社間で行うものと、取引会社にも承諾を得る3社間で行うものと2つの形があります。利用場面によって使い分けていきましょう。
保証型
保証型ファクタリングとは、ファクタリング会社が売掛債権を保証する保険のようなサービスです。売掛先の倒産などによって代金が回収不能となった場合に、ファクタリング会社から保証金を受け取ることが可能なので、初めての取引先で回収リスクに不安がある場合に利用されます。
ファクタリングのメリット
ファクタリングの実施は、
- 売掛金の早期資金化
- 自社の信用情報に影響がない
- 財務状況にかかわらず利用可能
という3つのメリットがあります。具体的にどのような恩恵があるのか、確認してみましょう。
売掛金の早期資金化
ファクタリングは銀行融資と比較すると現金での資金調達がとてもスピーディです。最短で即日現金化が可能なファクタリング会社もあるので、早急に資金調達しなければならない状況においては、とても活用しやすいです。
自社の信用情報に影響がない
ファクタリングは融資とは違って売掛債権の売買なので、融資などと扱いが異なります。借金を増やす形式の資金調達ではないので、ファクタリングを利用しても自社の信用情報に記録は残りません。
後々の事業拡大や運営を見据えた中小企業や個人事業主にとって、信用情報をクリーンに保ちつつ、資金調達を行えることは大きなメリットでしょう。
財務状況にかかわらず利用可能
ファクタリング利用時の審査において重要視されるのは、自社の財務状況ではなく売掛先の与信とされています。そのため、売掛先の信用力が高ければ、自社で多少赤字が続いていても、ファクタリングを利用できる可能性があります。
これは、銀行などからの資金調達に比較するとメリットと言えるでしょう。
ファクタリングのデメリット
さまざまな魅力があるファクタリングですが、一方でデメリットとして
- 手数料が割高
- 取引先からの信頼性には細心の注意が必要
のようなものが挙げられます。運用に当たって余計なリスクを被ることのないよう、注意する必要があるでしょう。
手数料が割高
ファクタリングは、銀行融資などに比べると手数料率が割高になっています。
利用する際は、長期的な資金計画を常に意識しながら、適切なタイミングを見計らいましょう。
取引先からの信頼性には細心の注意が必要
3社間ファクタリングを行う場合は、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することについて、売掛先から承認を得る必要があります。
ファクタリングを利用しているということが取引先にも明らかになってしまうので、「資金繰りの雲行きが怪しいのではないか」などと、信頼性に関わるような疑念を抱かれてしまう可能性があります。それによって関係性が悪化していく可能性も十分あり得ますので、3社間ファクタリングを実施する際は、細心の注意が必要です。
ファクタリングの活用が適しているケース
このようなメリットとデメリットを踏まえた上で、以下のようなケースでは、ファクタリングの活用が適していると考えられます。
・銀行の融資を断られた時
・売掛金の入金まで時間がかかってしまう時
・銀行、取引先を経由せずに資金調達を行いたい時
端的に言えば、通常の融資は受けられず、それでいてすぐに現金を用意する必要がある時です。たとえ審査が下りる見込みがあったとしても、期日までの時間がない場合には、ファクタリングの活用が適しています。
ファクタリング事業の開業方法
ファクタリングは、利用企業にとってはハードルが低く、窮地に陥ったタイミングで活用しやすいということがわかりました。では、そのようなファクタリング事業を開業したいと考えた場合、具体的にどのようなステップを踏めば良いでしょうか。
開業の手順
ファクタリング事業に参入する上で、実は特別な認可などは必須ではありません。しかし、近年悪徳な事業者が増えている状況を鑑みると、やはり貸金業免許の取得は必ず行っておきたいところです。そのため、本記事では、貸金業免許取得のステップを踏まえた開業準備の手順を簡単に紹介していきます。
1.貸金業免許の審査を受ける
貸金業登録を行って開業する場合、事前に登録申請を行っておきましょう。審査には数ヶ月かかるので、それを踏まえた上で開業予定日から逆算してスケジューリングしておくのが良いでしょう。貸金業免許の取得ステップや条件については、この後詳しく解説していきます。
2.事業所を構える
貸金業免許の中に、事務所があるかどうか、架空でないかという審査もありますので、事務所を構えるステップは必要です。その分の資金も用意しておきましょう。
3.サービス設計
ファクタリングは売掛債権の譲渡契約となるため、金利といった考え方を適用しませんが、利用を計画している企業は、手数料を考える際に金利相当分として計算することが多いです。
法定の上限金利を大きく上回るような数字を設定してしまうと、ファクタリング以外の選択肢を再検討したり、自社を選択するメリットを感じなかったりと、利用者にはハードルとなってしまいます。利用者側に寄り添ったサービス設計をしていきましょう。
4.集客を行い、営業を開始する
集客や営業を開始して取引先を開拓します。
集客するにあたって広告出稿を検討している場合は、日本貸金業協会の「広告審査に係る審査基準」に準拠するよう心がけましょう。借入意欲をそそるような表示・説明は禁止されているため、そのような宣伝にならないように留意します。
開業にあたって貸金業登録が推奨されている
近年、ファクタリング会社を装って経営者から高額な手数料を騙し取る悪徳業者も増えています。必須ではありませんが、可能であれば、信頼性を客観的に担保するために、貸金業登録をしておくのが良いでしょう。
貸金業登録は、非常に手続きが煩雑で審査に2ヶ月ほどの時間がかかります。しかし、都道府県や財務局の認可を得られるので、ファクタリング事業に大々的に参入しようとしている場合は、ぜひ事前登録の検討を推奨します。
貸金業認可取得のために必要なこと
貸金業認可の取得のためには、以下のプロセスを事前に踏む必要があります。
貸金業務取扱主任者の配置
貸金業を行うためには、「貸金業務取扱主任者」という国家資格の取得が必要です。
貸金業者の事業所や営業所には、必ず貸金業務取扱主任者を配置し、貸金業務取扱主任者を事前に申請・登録しなければなりません。
受験資格に制限はありませんので、資格取得者を採用するか、代表者が取得する形で人材を確保しておきましょう。
事務所を構える
貸金業登録においては、事業所を構えているかどうかの確認が入ります。監督官庁の職員が「現地調査」という立ち入り調査を行い、営業所の実態の有無、他の法人と同居していないか、申請書に記載された内容に誤りがないか、ということを確認します。
現地調査で申請の電話番号に誤りがないか、実際に電話調査もされるので、営業所などの情報も整備しておきましょう。
また、営業所が賃借の場合、貸金業の営業所としての使用について承諾を取る必要があります。賃貸借の契約期間が「2年以上」となっていることも要件です。
純資産が5000万円以上であること
貸金業登録を行うには、純資産が5,000万円以上あることが必須です。貸金業登録には登録申請の15万円、その他事業所の家賃・水道光熱費などの諸費用も合わせた資本を用意する必要があります。また、法人登記がまだの場合はその費用も発生します。
まとめ
今回は、ファクタリング事業を新たに開業するには、どのようなステップを踏めば良いのか、ファクタリング事業の概要や仕組みなどの解説も含めてご紹介してきました。開業にあたって認可などは必須ではありませんが、事業として本格的な参入を検討している場合は、事前の貸金業登録をした方が信頼性担保に繋がり、好調な滑り出しにつながるでしょう。
ファクタリング業の開業を検討している方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。