産学連携を強化する補助金:種類、活用方法、成功事例の詳細ガイド

産学連携を強化する補助金:種類、活用方法、成功事例の詳細ガイド

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情報技術や医療分野など、人々の暮らしを変える技術の開発はますます活発になっています。より効率的な技術開発を可能にする手段として、有効なもののひとつが産学連携です。産学連携を行うと、政府から補助金などの支援を得られる場合もあり、より円滑に研究開発を進めることができます。

この記事では、研究開発を進めていく上で、産学連携がどのような役割を果たすのか、また産学連携を行う際に利用できる補助金にはどんなものがあるのか、事例も踏まえて解説していきます。

産学連携とは

建設業の男性がヘルメットを机に置いてパソコンを打つ様子

産学連携とは、民間企業と高等専門学校や大学などの学校が協力して、共同研究や商品開発を進める取り組みです。

この連携により、企業と研究機関の知識が結びつくことで、新しい技術の開発が可能になるだけでなく、新たな才能の育成にも繋がります。企業やNPO法人は、産学連携を通じて資金、設備、技術の不足を補い、独自に行うよりも効率的な研究を実施できる場合があります。

一方、大学などの研究機関にとっては、企業との連携を通じて市場や企業のニーズに応じた研究を行うことができ、研究成果を経済活動に結び付ける機会を得られます。

日本における産学連携の推進と政策的支援の歴史

日本では、平成7年の科学技術基本法や平成10年の大学等技術移転促進法などを通じて、長年にわたり産学連携を促進する環境が整えられてきました。

特筆すべきは、平成18年の教育基本法改正により、大学の役割として「社会貢献(産学官連携等)」が初めて明記されたことです。

その後、税制上の優遇措置や連携実績の透明化など、政府による制度的支援も拡充されています。技術開発に関連する特許や知的財産の活用は経済振興にも寄与し、政府はこれを積極的に支援しています。このような産業連携は、日本経済の持続的な発展を目指す大きな取り組みとなっています。

産学連携の目的

産学連携の目的は多岐にわたりますが、主に次のようなことが挙げられます。

(1) 新技術の開発とイノベーションの促進

企業と大学・研究機関が協力することで、新しい技術や製品の開発を加速し、イノベーションを促進します。これにより、市場での競争力が向上し、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

(2) 知識とリソースの共有

産業界と学術界がそれぞれの知識やリソースを共有することで、より複雑で先進的な問題を解決できるようになります。これは、特に研究開発の資源が限られている場合に有効です。

(3) 教育と研究の質の向上

産業界の実践的な視点を大学の教育や研究に取り入れることで、学生や研究者にとってより実践的で市場に即した教育が可能になります。

(4) 社会的課題の解決:産学連携によって、環境問題、健康問題、エネルギー問題など、社会的な課題に対する解決策を開発することができます。

(5) 経済発展と雇用創出:新技術の開発やイノベーションによって新しい産業が生まれ、経済成長に貢献することが期待されます。また、これにより新しい雇用機会が創出される可能性もあります。

(6) 知的財産の活用:大学や研究機関で生み出された知識や発明を産業界が活用することで、知的財産の実用化が促進され、収益化の道が開かれます。

これらの目的は、産学連携の形態や関与する組織によって異なることがありますが、一般的にはこれらの要素が重視されます。

産学連携を行う際に補助金を活用するメリット

研究開発には、設備投資や開発プロセスに必要な資金が多く必要です。産学連携を通じて行われる大規模な研究開発に対して、国の支援があると、開発作業をよりスムーズに進めることができます。

産学連携において補助金を活用することは、次のようなメリットがあります。

(1) 財政的サポート

補助金は、研究開発や新しい技術の導入にかかるコストを軽減します。これにより、特に資金調達が難しい初期段階のプロジェクトや、リスクの高い革新的な研究にも取り組むことができます。

(2) リスクの軽減

補助金を利用することで、企業や大学は自己資金を使わずにプロジェクトを進めることができ、経済的リスクを抑えることができます。

(3) 連携とネットワーキングの促進

補助金プログラムはしばしば、異なる分野や機関間の連携を促進します。これにより、新たなアイディアやアプローチが生まれ、研究の質が向上する可能性があります。

(4) 技術革新の加速

補助金によって資金が提供されることで、研究開発が加速され、新しい技術や製品の市場導入が早まることがあります。

(5) 社会的・経済的インパクトの拡大

産学連携を通じて開発された技術や製品は、社会的な課題の解決や経済成長の促進に寄与することが期待されます。

これらのメリットは、プロジェクトの性質や関与する機関の目的によって異なる場合があります。補助金を活用する際には、それらの条件や要件を理解し、計画的に進めることが重要です。

産業連携を行う際に活用できる主な補助金の例

緑、青、赤のブロックに補助金の文字、人のフィギュアにコインが散らばっている様子

産学連携における補助金の活用には、多様な種類が存在します。参加団体の目的や状況、申請のタイミングによって、最適な補助金の選択が異なります。ここでは、主要な補助金の種類を4つご紹介します。

産学融合先導モデル拠点創出プログラム

この支援プログラムは、産学融合を通じて共通価値を創出することを目的としています。産学融合における先導的な取り組みやモデル拠点の構築に支援を提供し、大学を軸としたオープンイノベーションの活性化を図っています。

このプログラムの主な特徴は、都道府県を超えた広域ブロックを対象にしていることです。多様なステークホルダー、つまり複数の大学、公的研究機関、企業、ベンチャーキャピタル、地方自治体などが参加する産学連携のネットワーク構築を目指しています。

その副次的な効果として、研究開発や事業創出の加速も期待されています。

成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)

成長型中小企業等研究開発支援事業は、経済産業省によって実施されている、産学連携を対象とした補助金プログラムです。

このプログラムは、中小企業が大学やその他の研究機関と連携し、製造基盤技術やサービスの高度化を目指す取り組みを支援します。具体的には、精密加工、表面処理、立体造形など、ものづくりに関連する技術の向上を図る産学連携が対象です。

支援は、研究開発から試作品の開発、そして成果の市場展開までの一連のプロセスを包括しています。申請するためには、「特定ものづくり基盤技術高度化指針」に記載された研究開発を行う事業者であること、及び複数の事業者が共同で取り組むことが条件となります。

地域オープンイノベーション拠点選抜制度

地域オープンイノベーション拠点選抜制度は、大学を中心とした地域イノベーション拠点のうち、産学連携のハブとして優れた活動を行っている拠点を評価・選抜し、政府が伴走支援を行う制度です。

この制度により、選抜された拠点は、産官学が一体となった事業開発やネットワークの拡大に取り組むことができます。ここでの特筆すべき点は、政府によるオーダーメイドの支援を受けられることです。この支援には、経済産業省との対話を通じて、各拠点に最適な広報活動や補助金の種類の提案などが含まれます。

サービス経営人材育成事業

この補助金は、大学などがサービス事業者と連携し、サービス産業における次世代の経営者やマネージメント人材を育成するための教育プログラムの実施を支援します。

この事業で開発された教育プログラムは、将来的に大学の教育課程に組み込まれることが期待され、学生や社会人が専門知識を習得することによって、サービス産業に新たなイノベーションを生み出す長期的なサイクルの実現を目指しています。

この補助金は、技術開発だけでなく、サービスや経営の分野における支援も行うことで、多様な産業分野にわたる発展を促進することを目的としています。

補助金を活用した産学連携の事例

化学工場内の部屋の中央に作業員が2人立っている様子

大八化学工業と森之宮センターによるバイオマスプラスチック開発への産学連携

大阪を拠点にする大八化学工業株式会社は、大阪産業技術研究所森之宮センターと協力して、植物由来の可塑剤を開発し、バイオマスプラスチック製品の開発に貢献しました。

海外を中心に注目される石油由来のプラスチックの代替としてのバイオマスプラスチックの開発に、1919年創業の大八化学工業が取り組んでいます。同社は可塑剤開発の先駆者として世界市場をリードしてきましたが、課題の探査や研究機器の保有には限界がありました。

経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業や、ものづくり中小企業製品開発支援補助金を利用し、大阪森之宮センターとの産学連携を進めることを決定しました。大阪森之宮センターは、ネットワークを活かし、特許取得、技術開発、製品化、展示会出展などの支援を大八化学工業に提供しました。

さらに、補助金を活用して新たな研究機器を導入し、このような産学連携の取り組みにより、迅速な研究開発と短期間での成果達成が可能になりました。

高知大学と民間企業の協力による革新的な医療技術開発の成功事例

高知大学と株式会社恵比寿電機、株式会社サットシステムズは、産学官連携産業創出研究推進事業の補助金を活用し、共同で研究開発を行いました。

この研究により、X線や造形剤を使用せずに、近赤外光線を使って前腕部の動脈・静脈を可視化する技術を開発しました。この技術はもともと高知大学が特許を持っており、2社の協力と補助金による支援が、技術のさらなる精緻化に寄与しました。

このプロジェクトは、国内で24件の特許出願のうち12件が特許取得、4件の受賞、4名の新規雇用を生み出す成果を達成しました。これは、産学連携が従来の技術開発を強化する効果的な手段であることを示す事例です。

まとめ:産学連携の目的、補助金の活用、成功事例の概要

方位磁石にCOLLABORATIONの文字があり矢印が文字を指している

本記事では、産学連携の目的とその際に利用可能な補助金の種類、具体的な事例を紹介しました。

産学連携から生まれる新技術や特許は国の経済成長に寄与するため、補助金などの支援制度はますます充実しています。これらの支援枠組みは年々拡大しており、研究活動での補助金活用を検討する価値があります。

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※参考文献

『経済産業省産学官連携の系譜』

『経済産業省産学融合先導モデル拠点創出プログラム』

『関東経済産業局成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)』

『経済産業省地域オープンイノベーション選抜拠点選抜制度(J-Innovation HUB)』

『サービス経営人材育成事業』

『産官学連携 成功事例』

『産学官連携新産業創出事業の実績(産学官連携産業創出研究推進事業)