大手企業はDXを推進するために、DX人材の採用を加速しています。一方で中小企業は一部の企業を除いてなかなか採用ができていない状況です。
この記事では、中小企業が採るべき採用方法について解説します。ぜひ、DX人材の採用を実施する前に記事をお読みいただければと思います。
中小企業がDX人材採用で失敗する理由
まずは、中小企業がDX人材採用で失敗する主な理由をご紹介します。
DX推進の目的を明確にしていない・安易にフルスタックエンジニアを採用しようとする
DX人材とは「デジタルを活用してビジネスや組織を変革する人のこと」をいいます。現場の課題を洗い出して、デジタルを活用して業務効率化や生産性向上を促していく役割を担いますが、「デジタルを活用して業務効率化や生産性向上を促していく」というのが癖もので、これだけでは何をするべきなのかが明確ではありません。少なくとも、具体的に何をするべきか?ということについてブレイクダウンしたうえで、その課題に対して適切な人材のイメージを明確にしなければなりません。
よくある失敗例としては、フルスタックエンジニアを雇用したり、データサイエンティストを雇用すれば、うまくDX化が推進するだろう安易に募集をしようとすることです。これでは、優秀な人は絶対に来ないですし、仮に来たところで失敗は目に見えています。
そもそもDX人材にとって働きやすい環境ではない・魅力がない
多くの中小企業においては未だにDX人材を他の従業員と同じ給与体系に当てはめたり、フルでの出社を必須にしたり、さらにはDXを理解しない部署の傘下に置こうとしたりすることで、DX人材が来ない状態を作り出しています。
では、報酬面で大手と比べて良くすればよいかというと一概にそうとはいいきれません。例えば、フルリモート、フレックスタイム制の導入などはDX人材にとって魅力的ですし、例えば、新規事業や新技術を活用するプロジェクトにおいて権限や裁量を持たせるなどもDX人材にとってモチベーションが上がりやすいところです。
また、場合によっては、成果報酬を厚くしたり、ストックオプションを付与したりなど大きなボーナスが期待できる要素もあった方が良いです。
では、どうすればよいのか?
(1)DXを推進する目的を明確にしましょう
何のためにDXを推進するのか?について明確にしましょう。たとえば、「業務効率を今よりも改善させることで、営業利益を5%上げる。そのためにRPAの活用を検討する」「顧客の利便性を向上、今は申し込みから完了までに1時間かかっているものを、10分に短縮するためにアプリを開発を検討する」など基本的には利益向上、顧客満足度の向上等が主目的になるはずです。
(2)同業界の成功事例、海外事例を確認する
業界のDX推進の動向を確認しておきましょう。業界内の動向を確認しておけば、他社に引けを取らずに済みます。特に、UI/UX周辺、アプリ周辺、AI活用などの記事については把握しておきましょう。さらには、海外事例も探すことをお勧めします。
(3)ベンダー依存からの脱却
システムに関してはいわゆる外部の会社に丸投げというケースが多かったことだろうと思いますが、これからは自社が主導的に開発運用をしなければ、DX人材は来ないですし、そもそもDXを活用して競争力強化を図ることはできません。
DX人材が市場に出回っていない
2021年7月30日に総務省が公表した「令和3年版情報通信白書」では、日本のDX人材不足が深刻化していることが分かります。人材不足を課題として挙げているのが、米国・ドイツ・日本です。しかし、DX人材不足を感じる日本企業は約5割と突出しています。
ITに関連する有効求人倍率も5倍を超えており、日本ではDX人材不足が深刻な問題となっているのです。DX人材が市場に出回っていないので、思い通りの採用できずに難航する企業の多さも問題となっています。
解決方法
DX人材不足の課題は、外部委託を利用することで解決できます。また、社内教育をしてDX人材を育成する方法も1つです。DX推進に取り組むためには、組織全体でITリテラシーを高めなければいけません。そのため、DX研修を実施する企業が増えています。社内育成をすれば、外部からDX人材を採用せずに済みます。
また、近頃はローコードツールと呼ばれるプログラミング言語が不要でシステム開発できるものも登場しました。これらを活用すれば、高い知識がなくてもDX推進を加速させられます。
(参照元:総務省「情報通信に関する現状報告(令和3年版情報通信白書)」)
DX人材を採用する前に行う準備
DX人材の採用が失敗に終わる理由をご紹介しました。これらの失敗を防止するために、事前準備をしておきましょう。ここでは、DX人材を採用する前に行うべきことをご紹介します。
1.経営者がDX推進を決意する
DX推進に取り組むと企業文化や組織変革が必要となる恐れがあります。組織のメンバーの中には、デジタルを取り入れることに抵抗を抱く方もいるでしょう。このような場合は、経営者がリーダーシップを発揮しなければいけません。
中小企業がDX推進を成功させるためには、経営者の強い意思が必要不可欠となります。そのため、経営者がDX推進を決意することが第一歩目となります。
2.DX推進のビジョンを立てる
DX推進を決意したらビジョンを明確にしていきます。DXジャーニーマップを作成して、DX推進の目的など細かく記載しておきましょう。目標を立てる場合は数値化できる指標を設けることが、成功するための秘訣です。
- デジタル設計図(目的・業務プロセス・指標・デジタルツール・CX)
- ステークホルダーマップ
- デジタル連携図
- デジタル投資シミュレーション
しかし、DX推進に詳しい経営者ばかりではないでしょう。そのような場合は、DX推進に詳しいコンサルタントと現場責任者を交えて上記の計画を立ててみてください。
3.社内の従業員から同意を得る
中小企業がDX推進を行うと組織変革せざる得ない場合もあります。デジタル活用や組織変革に抵抗感を抱く従業員も少なからずいるはずです。そのため、DX推進に取り組む前に社内の従業員に同意を得ておきましょう。
DX推進を成功させるためには、組織全体の協力が必要です。そのため、従業員のモチベーションを高めるためのインセンティブ制度を設けるなど、DX推進が浸透する仕組みづくりを考えてみることもおすすめします。
4.DX推進部門を設置する
DXジャーニーマップを策定して周囲の同意を得たら、DX推進部門を設置します。DX推進部門は、デジタル技術を活用して業務効率化やビジネス改革に取り組む場所となります。適材である従業員を配置させましょう。社内に適正な従業員がいない場合は、DX人材を採用を検討してみましょう。
DX推進の実績を豊富に持つコンサルタントにリーダーを任せると成功しやすいです。そのため、コンサルタントに依頼することも検討してみてください。
(参考元:中小企業補助DX情報館「中小企業のDX推進は人材不足で難しい?課題解決方法とは?」)
DX人材採用を成功させるコツ
DX推進部門に適材な人材を配置させたい場合は、DX人材の採用を行ってみましょう。DX人材の有効求人倍率は5倍と高い倍率ですが、採用方法によっては優秀な人材が採用できます。実際に、どのようにDX人材を採用していけば良いのでしょうか?ここでは、DX人材採用を成功させるコツをご紹介します。
業務内容を具体的に提示する
DX人材の求人を出す場合は、業務内容を具体的に提示しておきましょう。業務内容を曖昧にしてしまうと、求職者側も不安を抱きます。具体的な業務内容を提示しておくことで、DXジャーニーマップ通りに計画を進めていくための人材採用であることを理解してもらえます。
DX人材採用で失敗する理由に、業務内容が曖昧でミスマッチが起きたというケースが多いです。このような問題を防止するために、業務内容は具体的に提示しておきましょう。
ビジョンを共有する
DX人材はデジタル技術を駆使してビジネス変革を起こす人材のことをいいます。そのため、企業への理解と探求心が求められます。従って、DX人材を採用する場合は、具体的な業務内容の他にビジョンを共有するようにしましょう。面接時にビジョンを共有して共感をしてくれる人材であれば、理想以上の成果を出してくれるはずです。
自社の魅力を訴求する
優秀なDX人材は競合他社からスカウトを受けていることが多いです。そのような人材に自社に来てもらうためには、競合他社にない自社の魅力を訴求しましょう。
自社で働くと得られるエンゲージメントを上げることで、採用確率が高まります。そのため、競合他社に勝つ自社の魅力について説明できるようにまとめておきましょう。
(参考元:Talent Clip「【DX人材の採用】DX人材の特徴や採用活動のポイント」)
DX人材を社内育成する方法
DX人材の採用方法をご紹介してきました、IT人材の有効求人倍率は約5倍です。また、ビジネス変革を起こしたいという強い野心を持った人材の割合はより低くなるでしょう。そのため、DX人材採用は難航してしまうのです。DX人材が難航したら、DX人材を社内育成する方法も検討してみましょう。ここでは、DX人材を社内育成する方法をご紹介します。
1.デジタルリーダーを選任する
まずは、DX推進部門を牽引するデジタルリーダーを選任します。デジタルリーダーにはAIやビッグデータなど最新技術に関する知見や活用方法を見出すアイデアが必要となります。適材な人材がいない場合は、コンサルティング会社を利用する方法も1つです。
2.従業員全体にITリテラシーを学んでもらう
DX推進を成功させるためには、デジタルリーダーの力だけではなく、組織全体にITリテラシーを学んでもらう必要があります。ITリテラシーが不足するとデジタル導入におけるコミュニケーションコストがかかります。このようなコストが大きな負担とならないためにも、ITリテラシーを学んでもらいましょう。
3.DXに適した人材を見極める
ITリテラシーを学んでもらう際に、自発的に楽しく学べている方はDX推進部門に適している人材です。ITに関する知識や経験で判断するのではなく、マインド面で適材な人材と思えたら、DX推進部門に配置させましょう。
4.OJT機会の場を設ける
DX推進部門に配置した人材には、OJTの機会を設けるようにしましょう。デジタルリーダーが牽引してOJTを実施します。書籍や座学では学べない実践的な経験を積むことで、社内で活躍できる人材が輩出できます。
5.自主学習できる場を提供する
DX推進部門に配置した人材に学習支援を行いましょう。資格取得費用やセミナー参加の費用を社内で負担するなど、学びやすい環境を整えてあげることが大切です。また、社内にて定期的な勉強会を主催すると相乗効果が発揮できます。
6.実践させる
DX人材を育成するためには、失敗を恐れない環境づくりが大切です。そのため、ある程度の失敗を許容して実践をさせましょう。チャレンジしやすい環境を整備してあげると、DX推進が加速していきます。
(参考元:マーケドリブン「DX人材とは?6つの職種・4つのスキル・5つのマインドセット」)
まとめ
今回は中小企業がDX推進のために人材採用するための方法をご紹介しました。人材採用の手順を間違えてしまうとDX人材採用は失敗に終わってしまいます。そのため、正しい手順を覚えておきましょう。
中小企業はDX推進に取り組めていない方が多いですが、早期にDXに取り組めば大きなビジネス機会が得られるはずです。DX推進の実績を豊富に持つ実業家(コンサルタント)をプロデューサーやビジネスデザイナーに置き、社内で取り組めば成功しやすくります。ぜひ、この記事を参考に、DX推進に取り組んでみてください。