独立行政法人の情報処理推進機構の調査結果によると、約6割の企業がDX推進に取り組めていません。このような状況の中で、DX推進の取り組みに成功させれば、大きなビジネス機会が得られます。そのため、中小企業はDX研修を活用して人材育成や組織体制の整備を始めましょう。
この記事では、中小企業DX推進の取り組み方からDX研修の選び方まで分かりやすく解説します。
中小企業DX推進の取り組み方
まずは、中小企業DX推進の取り組み方を学び、どのような研修を受けるべきか考えましょう。
1.経営者がDX推進を決意する
中小企業がDX推進に取り組むと、企業文化や組織の変革が求められる恐れがあります。このような場合は、経営者にリーダーシップとマネジメント能力が求められます。
変革に対する社内抵抗が起きた場合は、経営者がリーダーシップを発揮しなければいけません。そのため、経営者の方は社内全部門でDX化推進を取り組むために必要なノウハウを学んでおく必要があります。
2.DX推進のビジョンを立てる
DX推進を決意したら、DXプランニング(別名:DXジャーニーマップ)を策定していきます。DXプランニングを参考にして社内体制を整えていくため、具体的に計画を立てましょう。DXプランニングには、下記の内容を記載します。
- 設計図(業務プロセス・指標・デジタルツール・CX・目的)
- ステークホルダーマップ
- デジタル連携図
- デジタル投資シミュレーション
DXプランニングを策定する場合は、DX推進に詳しい方と業務の責任者に協力を仰いで現場に活かせるようにしましょう。
3.社内の従業員から同意を得る
DX推進により企業文化や組織変革すると抵抗を抱く従業員も少なからずいます。DX推進に取り組むためには、従業員にITリテラシーを学んでもらわなければいけず、大きな負担になる恐れがあります。
したがって、DX推進に取り組む前に従業員から同意を得ておきましょう。DX推進に貢献した従業員にインセンティブを付与するなど、新制度を設けて士気を高めようと試みる中小企業も多いです。
4.DX推進部門を設置する
DXプランニングを策定して、社内の従業員から同意を得たらDX推進部門を設置しましょう。
DX推進部門はデジタルデータやテクノロジーを活用して、業務効率化や生産性向上を目指す場所となります。これらの業務を担う人材を配属させましょう。社内に適正な人材がいない場合には、外部委託する方法も1つの選択肢としてあります。
(参考元:中小企業補助金DX情報館「中小企業のDX推進は人材不足で難しい?課題解決方法とは?」)
中小企業DX研修の種類
中小企業がDX推進に取り組むためには、知識が必要となるため「DX研修」で学びましょう。DX研修には「経営者向け」と「実践者向け」の2つがあります。
経営者向け
経営者向けDX研修では、中小企業がDX推進に取り組む重要性から必要なノウハウまで習得できます。中小企業のDX推進は遅れているため、政府や自治体でも経営者向けDX研修が主催されているため、取り組む予定の方は研修に参加をしてみましょう。
【研修内容】
DXの基礎、DXによるビジネス変革、攻めのIT経営、DX推進のコツ、DXプランニングの策定方法、組織体制づくり、DX時代の顧客価値デザインなど
実務者向け
実務者向けDX研修では、現場に活かせる実践的な内容が学べます。一般的な研修だけではなく、マンツーマン相談や指導の伴走型研修も用意されています。伴走型研修であれば、社内にITに詳しい人材がいなくても安心です。そのため、どのようなタイプの研修かも吟味しましょう。
【研修内容】
DX時代の顧客価値デザイン、オンライン商談による営業変革、クラウドストレージによる協働、チャットボットの導入方法、RPAによる自動化・効率化、O2Oマーケティング、課題解決に向けた指導など
DX研修の成功事例
経営者や実務者向けのDX研修内容をご紹介してきましたが、体得してDX推進に成功した中小企業の事例を確認しておきましょう。
ヘルプデスク部門のテレワーク化を実現
株式会社ビーブリッドは、介護・医療のICTに関するヘルプデスク業務を請け負っている中小企業です。緊急事態宣言が発令されて、テレワークに苦戦する企業が多い中で、デジタルツールを上手く活用して顧客満足度を下げることなくテレワーク化を実現しました。
デジタルを活用して新人の早期育成を実現
株式会社スマートドライブは、自動車に関するデータを活用したテレマティクス保険で急成長をしている中小企業です。業務拡大する上で、インサイドセールス部門の人員拡充が大きな課題としてありました。採用した人材が早期に成長できる仕組みを構築するために、AI搭載型IP電話システムを導入。
通話内容を自動録音して属人化しがちな営業のブラックボックス化を改善しました。音声データ解析により、契約に至らない原因を特定し効率的な教育方法を実現しています。新人を早期に即戦力化する仕組みが作られ、架電回数が140%アップと大きな効果が見込めている成功事例です。
デジタルで入力業務効率化を実現
株式会社東京電機は、非常用・防災用の発電装置を取り扱う中小企業です。紙によるデータ管理や誤入力や紙の図面の管理体制が非効率であることが課題として挙げられていました。その課題を解決するために、生産管理システムをIoT化。入力ミスやペーパーレス化に効果が発揮でき、作業工数も短縮できました。
中小企業DX研修の主催先
中小企業でDX推進が必要な理由を理解していただき、実際に学びたいと思った方もいるのではないでしょうか?DX研修は「自治体」「商工会議所」「民間事業」が開催しています。各主催先で研修の特徴が異なるため、違いについて理解をしておきましょう。
自治体
2020年7月に政府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針(別名:骨太の方針)」でも、デジタルトランスフォーメーションの推進が明記されています。また、2021年9月にデジタル庁が設置されて関連法令の整備がされました。これにより政府が音頭を取り、各自治体で中小企業DX研修を開催しています。
自治体のDX研修では、DXの重要性やDXプランニングの策定方法、組織体制づくりなどの基本が学べます。そのため、政府がDX推進の基礎を学びたいという経営者の方におすすめです。興味がある方は、都道府県庁や市役所(区役所)の中小企業DX推進事業部へお問い合わせください。
商工会議所
商工会議所では、地域経済活性化を目的としてDX研修が開催されています。中小企業の低生産性を改善することは、商工会議所の重要課題となっています。このような目的があるため、地域の企業様に対して親身な指導をしてくれます。参加費も無料で気軽に参加できる研修が多いことも嬉しいポイントです。
DXに関する基礎知識だけでなく、自社に必要なDX推進の洗い出しや、現場に生きる実践まで指導してくれます。地域の中小企業の強い味方である商工会議所のDX研修を有効活用しましょう。
民間事業
民間事業が提供するDX研修プログラムは、企業に必要なスキルを可視化して、目標達成まで伴走してくれます。自治体や商工会議所と比較すると柔軟な対応力が魅力となっています。そのため、社内にDXリテラシーがない場合でも安心です。非常に有意義なカリキュラムが用意されていますが、基本的に受講料は有料となっています。
中小企業DX研修の選び方
さまざまなDX研修がありますが、どのように選べば良いのでしょうか?ここでは、DX研修の選び方について解説します。
自社の目的に見合っているか
DX研修の目的は各企業で異なります。目的に沿った内容のDX研修を選びましょう。企業の中には、DX推進の目的が明確でないこともあります。このような場合は、伴走型研修を実施している主催先を選ぶと、きめ細かなサポートをしてもらえて安心できます。
DX研修の実績を豊富に持っているか
DX研修の実績を受講する前に講師の方の実績を確認しましょう。DX研修の実績を豊富に持っている講師の方であれば、有益な情報が得られるはずです。
その一方で、実績が少ない講師は研修に不慣れな恐れがあり、参加費・時間のムダになる恐れがあります。そのため、信頼ができる主催先・講師であるかを見極めましょう。
同業界の成功事例を持っているか
DXリテラシーがない企業がDX推進に取り組む場合は、同業界の事例を参考にすると成功しやすいです。そのため、同業界の成功事例を豊富に持っており、有益な情報が得られる研修であるかを見極めましょう。
補足:中小企業DX推進研究会とは
DX推進に取り組み業務効率化・生産性向上を実現したい中小企業は「中小企業DX推進研究会」にも注目しておきましょう。ここでは、中小企業DX推進研究会について簡単に解説します。
活動内容
中小企業DX推進研究会は、以下のようなことに取り組んでいます。
- DX人材育成事業:DX研修の開催
- DX推進に取り組む企業同士の連携:協会主催のイベントを開催
- 業界をアップデートするイベント:業界のキーパーソンと出会える
- オンラインイベントの開催支援:マーケティング目的のイベント開催を支援してもらえる
- DX相談対応:DX推進に関する相談が受けられる
入会メリット
中小企業DX推進研究会へ入会すると、以下の特典が受けられます。
- 地域のDX推進のノウハウが得られる
- DX推進に必要なネットワークを提供してもらえる
- 各種勉強会へ参加できる
- 各種イベントへ特別価格で参加できる
- 協会からDXに関する情報を提供してもらえる
入会方法
地域企業でDX推進を担う企業で、協会理念に賛同していることが対象です。
支部会員 | 地域企業のハブとしてDX推進を担う企業や団体 | 入会金:5万円
年会費:15万円 |
賛同会員 | 協会の理念に賛同して、自社でDX推進をしている企業 | 入会金:5万円
年会費(1口):10万円 |
パートナー会員 | 当協会と協働でプロジェクトを実施したい、DX推進に関するサービスやツールを提供している企業 | 入会金:5万円
年会費(1口):100万円 |
パートナー会員 | JDXと共同でプロジェクトを実施したい、DX推進に関するサービスやツールを提供している企業 | 入会金:5万円
年会費(1口):50万円 |
まとめ
今回は中小企業向けのDX研修について詳しく解説しました。DX推進を成功させるためには、経営者・実務者の双方にDXに関する知識が求められます。そのため、DX研修を受講しましょう。
DX研修には、さまざまな種類があります。したがって、自社に見合うものを選びましょう。上手く活用していけば、DX推進を加速させられるはずです。ぜひ、これを機会にDX研修の受講をご検討されてみてください。
なお、組織力強化については、こちらの記事「組織とは?組織力の高い有名企業から学ぶ組織力強化の7つのコツ」をご覧ください。
※参考文献
『千葉県「中小企業DX推進事業」』
『弥報「ITツール導入でDXを実現した中小企業の成功事例3選」』
『KDDI「オンライン商談の成功事例|失敗例とその対策方法についてもあわせて解説」』
『独立行政法人経済産業研究所「IoT, AI等デジタル化の経済学第95回「中堅・中小企業への円滑なIoT、AI導入の企業ノウハウの公開(5/9)― 東京電機の事例 ―」」』