働き方の多様化が進む中で、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業が増えています。
ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むと、どのような効果が見込めるのでしょうか?どのように取り組めば良いのでしょうか?
今回は成功事例を踏まえて、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組み方をご紹介します。
ダイバーシティ&インクルージョンとは?
ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity and Inclusion)とは、多様性を受け入れて活かすことをいいます。
内閣府「令和元年度 年次経済財政報告」のデータによれば、多様性を受け入れて活かせば、企業業績にプラスの効果が生まれることが証明されています。そのため、「性別」「年齢」「国籍」など、それぞれの個性を活かして働ける職場環境を整備している企業が増えているのです。
ダイバーシティ&インクルージョン:5つの分類
ダイバーシティ&インクルージョンは、5つに分類されます。
女性活躍推進 | 仕事で活躍したいと希望する女性が、個性や能力を存分に発揮できる職場環境を整えること。優秀な人材を確保できる。 |
外国人雇用 | 海外進出時の即戦力や優秀な人材を確保するために、外国人が働きやすい職場環境を整えること。外国人を雇用すると、日本人では思いつかないような新しい発想が生まれる。 |
障がい者雇用 | 障がい者雇用促進法を果たすために、障がい者が働きやすい職場環境を整えること。社会的責任を果たせ、企業としての価値創出につなげられる。 |
シニア活用 | 高齢者が働きやすい職場環境を整えること。技術・技能・人脈を持つ人材を採用すれば職場が活性化できる。 |
LGBTの受容 | LGBTに対する偏見や差別がない職場環境をつくること。優秀な人材の確保と離職防止ができる。 |
ダイバーシティ&インクルージョン:求められる背景
ダイバーシティ&インクルージョンが求められる背景には、(1)価値観の多様化や(2)ビジネスのグローバル化があります。
(1) 価値観の多様化
日本は終身雇用制度があり、就職した企業には定年まで勤めるのが一般的でした。プライベートより仕事を優先するのが当然だと考えるサラリーマンが多くいました。
しかし、近頃は、そのような価値観が崩壊しつつあります。とくに、若い世代は企業に対する忠誠心より、キャリアを磨くことに重点を置いており、転職に対する抵抗がなくなってきています。
また、ワークライフバランスを重視する人も増えてきました。このように、働き方に対する価値観が多様化する中で、優秀な人材を採用するために、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む必要が出てきているのです。
(2) ビジネスのグローバル化
1900年代以降、ビジネスのグローバル化が推し進められてきました。
海外企業と提携したり、新しい市場開拓で海外進出したりなど、ビジネスのグローバル化の形はさまざまですが、加速しています。このようなビジネスのグローバル化に対応するために、さまざまな国籍の人材を採用する必要が出てきているのです。
(3) 労働力の不足
日本は少子高齢化社会で、労働力不足が深刻な問題とされています。
パーソル総合研究所と中央大学経済学部が共同開発した2030年の予測モデルでは、7,073万人の労働需要に対し、見込める労働供給は6,429万人であり、644万人もの人手不足に陥ると予測されているのです。
そのため、高齢者や外国人などを積極的に起用して、労働力を補う必要があります。
ダイバーシティ&インクルージョンの取り組み方
ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む必要性は理解して頂けたと思いますが、どのような施策があるのでしょうか。ここからは、様々な施策をご紹介いたします。
啓発活動のイベントの開催
ダイバーシティ&インクルージョンの浸透に向けたランチ会やワークショップなどイベントを開催して、社員同士の交流を促進することで、「性別」「年齢」「国籍」を気にせず働ける職場が実現できます。
育児中の社員同士や介護を担っている社員同士など、ターゲットの属性を絞り込んで啓発活動のイベントを開催するのがポイントです。
キャリア形成の研修の開催
個人の能力を活かして働けるように、キャリア形成の研修を実施するのも効果的です。各自のキャリア形成に役立つキャリア研修や、多種多様な人材を管理するためのマネジメント研修などを実施しましょう。
このような研修を行うことで、多様性を認める文化を根付かせられます。
育児に関する情報提供
育児休暇は企業で導入され始めていますが、女性が対象だったりと、男性が利用しにくい状況でした。
しかし、近年では育児休暇を取得したいと希望する男性が増えています。このような男性社員に対して、育児休暇に関する情報提供や保育園探しをサポートすることで、従業員満足度を上げられます。
多様な働き方の導入
従業員によって希望する働き方は異なります。働き方の選択肢は、以下のように増えてきました。
- 時短勤務
- フレックスタイム制
- テレワークの導入
- 海外人材の採用
- シニア層の採用
- 副業の解禁
多様な働き方に対応しておけば、優秀な人材を確保できるようになります。
適材適所の人員配置
従業員の人生や経験を尊重した人員配置をすれば、従業員のモチベーションを上げるだけではなく、事業にもプラスの効果が出ます。
例えば、女性チームを編成して、女性の家事の負担を減らすための新商品の開発を実施すれば、消費者により共感してもらえる商品が開発できるようになります。
ダイバーシティ&インクルージョン:取り組み事例
実際に企業では、どのようなダイバーシティ&インクルージョンの取り組み方がされているのでしょうか?ここでは、ダイバーシティ&インクルージョンの成功事例をご紹介します。
株式会社ローソン
株式会社ローソンは、女性活躍推進が上手い上場企業として、「なでしこ銘柄」に2014年、2015年、2016年の3年連続で選出されました。また、男性育児を支援する取り組みにも意欲的で、厚生労働省を選定する「イクメン企業アワード2015」において特別奨励賞を受賞しています。
男性社員に育児休暇を取得させることで「育児の時間を捻出するためには、どのように仕事をすべきなのか?」「無駄な仕事はせずに、育児のために変える」という意識を根付かせることに成功しました。アンケート結果では、53.6%の従業員が「業務効率化への意識を上げることにつながった」と回答。従業員の意識を改革させて、生産性向上を実現しています。
三菱樹脂株式会社
三菱樹脂株式会社は、2003年頃から女性を総合職として採用するようになりました。それまで、女性社員は実務職(総合職の男性社員を支える縁の下の力持ち)という考えが根付いていたのです。その結果、女性社員は、就職して数年したら結婚を機会に退職する人が多く、実務職の入れ替わりが頻繁に起きていました。
しかし、結婚後や出産後も働き続けたいと希望する女性が増えてきたことをキッカケに、女性の総合職の採用をスタートしたのです。女性社員のキャリア形成、能力向上ができる職場環境を整備することで、女性社員の定着率アップに成功しています。
野村證券株式会社
野村證券株式会社は女性活躍推進や、外国人雇用、LGBTへの理解など多岐に渡るダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでいます。
具体的に説明すると、外見上の性別や人種などの目に見える違いだけではなく、価値観や信条、教育、性的指向など、目に見えない箇所まで配慮をしています。
多様な社員が働きやすい職場環境を整備することで、新たなビジネスチャンスの創設ができています。また、優秀な人材の確保にも成功しています。
まとめ:多様性で企業業績にプラス効果を!
今回は、ダイバーシティ&インクルージョンの重要性と取り組み方について解説しました。
ダイバーシティ&インクルージョンに取り組めば、多様化する働き方の価値観に対応できて、優秀な人材が確保できるようになります。それだけではなく、ビジネスのグローバル化に対応できるなどの効果が見込めるのです。多様性を受け入れて活かせば、企業業績にプラスの効果が生まれることが証明されています。是非とも取り組んでいただければと思います。
※参考文献
『日本の人事部「ダイバーシティ&インクルージョン」』
『PERSOL「インクルージョンとは?ダイバーシティとの違いや導入事例を紹介」』
『日本の人事部「株式会社ローソンの人事制度」』
『日本の人事部「三菱樹脂株式会社の人事制度」』
『日本の人事部「野村證券株式会社の人事制度」』