コロナ禍からの世界経済の回復に伴う原油の需要増や、一部産油国の生産停滞などによる原油価格高騰を受け、日本国内のガソリン価格は高値水準に達しています。
原油価格が高止まりすれば、ガソリンなど石油製品の値上がりなどを通じて企業収益や家計を圧迫し、景気に対して悪い影響を及ぼします。
特に原油価格の上昇によって諸々コストが上がることは、中小企業の経営において収益を圧迫します。今後の対策を考える上で、原油価格の動向を見ることは非常に重要です。
本記事では、原油価格が上昇している原因について触れつつも、今後の見通しについて述べたいと思います。
原油価格が上昇している要因は?
原油価格は年々上昇しています。ここでは、原油価格が上昇している要因について、詳しく説明します。
石油の需要と供給が引き締まったため
原油価格が上昇した理由として、石油の需要と供給が引き締まったことが考えられます。
新型コロナウイルスによって人の行動が制限され、主要都市は封鎖され、それによって車の移動や飛行機での移動が減り、工場が稼働しなくなりました。それによって石油が使われなくなり、需要は大幅に減少しました。
新型コロナ以前において、原油は通常1日で1億バレルほど消費されていましたが、国際エネルギー機関の調査によれば、新型コロナ直後の2020年4月においては、1日で約2900万バレルほどに消費量が減っています。
余った石油についてはタンカーやパイプライン、貯蔵用タンクに貯めていましたが、このまま消費量が減れば貯蔵する場所がなくなると懸念されていました。
需要が減れば価格も下落します。原油価格は2020年の3月初めに1バレル50ドル前後で取引がされていましたが、その後は20ドル前後に急落しました。産油国グループは価格を上昇させるために、協調減産をはじめました。世界の生産量の1割にあたる量の生産を止めました。
その後、コロナワクチンの接種が進み、自動車による交通量などが回復、各国政府は2020年の時のような強い行動規制を導入していないため、2022年は需要に関しては、過去最高になる見通しとなりました。これに対して「OPECプラス」は毎月、日量40万バレルを増産する方針を示していますが、現状は、ナイジェリアやアンゴラなどの生産が不調で、国際情勢の問題により計画通りに進んでいません。供給は限定的であり、需要と供給が引き締まり、世界の石油在庫は減少、価格が高騰しています。
ウクライナ危機とサウジアラビアの動向
原油の価格が上昇している要因としては、中東情勢も考えられています。コロナによって原油価格が急落し、その後は徐々に回復したものの、価格の変動はリーマンショックが起きた2008年に次ぐ大規模なものでした。中東情勢においては、サウジアラビアの財政が赤字だらけであることです。サウジアラビアでは税金の大幅な引き上げや国内経済が急速に悪化しており、失業率は上がっています。そのためムハンマド皇太子は原油の価格を上げて、国内の情勢を安定させようとしていました。
2022年1月時点においては、約7年ぶりの高値水準となりました。これは中東情勢の緊迫化を背景に、値段が上昇したためと考えられます。
2022年1月17日にアラブ首長国連邦では、石油関連施設がある地区に対してドローンによる攻撃が発生しました。イエメンの武装勢力による攻撃とみられており、アラブ首長国連邦は報復に出ました。中東情勢の緊迫化に伴い、原油の供給に支障が生じるのではないかとの懸念により、値段が上昇したようです。
(参考)https://www.nhk.jp/p/nw9/ts/V94JP16WGN/blog/bl/pKzjVzogRK/bp/pozVQ1qR5o/
(参考)https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energy_and_coronavirus.html
(参考)https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220119-OYT1T50090/
ウクライナ危機
ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が高騰し、日本を含む世界経済に大きな影響を及ぼし始めています。ロシアからの原油輸出が滞るのではないかという懸念から原油価格が高騰しているからです。こうした中、注目されるのが、中東・湾岸地域の産油国の動向です。
(※https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220323/k10013546781000.html より)
生産量2位のサウジアラビアは、欧米との関係が冷え込んだことから、原油増産の求めに応じる姿勢を示していません。一方で、サウジアラビアは2016年にロシアとOPECプラスを作り、関係強化を図りました。ウクライナへの軍事侵攻をめぐって、サウジアラビアはロシアへの配慮も示していて、アメリカなどからの増産の求めには応じないということです。
※(OPEC加盟国10か国)
サウジアラビア、イラク、UAE、クウェート、ナイジェリア、アンゴラ、アルジェリア、コンゴ、ガボン、赤道ギニア
(OPEC非加盟国10か国)
ロシア、メキシコ、カザフスタン、オマーン、アゼルバイジャン、マレーシア、バーレーン、南スーダン、ブルネイ、スーダン
https://cigs.canon/article/20220412_6704.html
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220323/k10013546781000.html
今後の見通し
原油価格は7年ぶりの高値になりましたが、今後もさらなる上昇が考えられています。新型コロナ禍によって原油価格が急激に下がり、その後は緩やかに上がってきました。2022年に入ってからは需給ひっ迫や国際情勢の変化により7年ぶりの上昇が見られました。
日本国内では原油価格が上昇したことにより、ガソリン価格は170円を突破しました。これによって、政府はガソリン補助金制度を発動する事態となっていますが、大きな問題である国際問題の解決については、短期的には解決が見通せない現状を考えると、根本的な解決にはならないものと思われ、引き続き上昇傾向は続くものと思われます。
(参考)https://news.yahoo.co.jp/articles/eff451fed9c9f3f0ae68cdfe4a0bd2e208660e08
(参考)https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=70140?site=nli