実施企業から学ぶ!テレワーク中の従業員のメンタルヘルス対策方法

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経済協力開発機構(OECD)によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で鬱病の患者数が2倍に増加したことが、国際調査で判明しました。鬱病の患者の割合は、2013年度に7.9%でしたが、2020年度には17.3%まで増加しています。

また、近年は「テレワーク鬱」という言葉も出てきました。そのため、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、テレワークへ移行した企業は従業員のメンタルヘルス対策をしてください。今回は企業が導入したい、テレワーク中の従業員のメンタルヘルス対策方法をご紹介します。 

テレワーク鬱とは?

テレワーク鬱とは、テレワークで勤務し始めたことで発症した、鬱病のことをいいます。

原因

テレワーク鬱の主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

【主な原因】

  • 自宅から1歩も出ずに、閉じこもりがちになる
  • 誰とも会わないため、孤独を感じやすくなる
  • わからないことを質問しにくい
  • 体調が悪くても気づいてもらえない
  • 仕事と私生活のメリハリが付きにくい
  • 運動不足になりがち
  • 業務成果に対する不安や不満が生じる

症状

精神面 憂うつ感、何事にも無関心になる、イライラ、焦り、不安感
身体面 食欲不振、過食、頭痛や肩こり、性欲減退、動悸、耳鳴り、不眠、過剰睡眠、胃の不快感、下痢や便秘、疲れやすい、めまい、口が渇く
周囲が分かるサイン 表情が暗い、自分を責めてばかりいる、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増える

治療法

テレワーク鬱は他の病気と同じように、早期発見・早期治療が重要です。抑うつ感が2週間以上続く場合は、医師に早めに相談しておくことで、状態が改善しやすくなります。また、不安なことがあれば、1人で悩まずに誰かに相談して、人事や産業保健スタッフ、主治医などと連携して対応していくことも大切です。

(参考:https://www.nursing-hc.co.jp/business/health/tsushin/202105.pdf)

テレワークで従業員が抱える課題と解決策

(出典元:パーソル総合研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査調査結果」

テレワーク鬱は、業務中の不安を払拭してあげることで防止できます。従業員はテレワークで、どのような不安を抱えているのでしょうか?次に、テレワークで従業員が抱える課題と解決策をご紹介します。

(参考:https://www.med.kitasato-u.ac.jp/lab/publichealth/telework/communication.html)

公平・公正に評価してもらえるか不安

テレワークでは、業務における途中過程や従業員の勤務態度が見えづらいため、適切に評価してもらえるか不安に感じてしまいます。また、上司から仕事をしていないと思われないかと、過剰労働に陥りがちです。

解決策:評価制度を確立させる

テレワークで公平・公正に評価するために、ジョブ型雇用を採用する企業が増えています。ジョブ型雇用は、成果により評価する人事評価制度です。米国で採用されているもので、裁量による評価方法です。ジョブ型雇用に移行をすれば、業務達成度に応じて、公平・公正な人事評価ができます。

コミュニケーションが少なくて孤独

テレワークでは、従業員同士が離れた場所で作業しているため、リアルタイムで会話ができません。相手の状況がわかりにくいため、相談して良いのか分からないと、躊躇してしまう方もいます。

その結果、1人で悩みを抱えてしまうという状況に陥ってしまうのです。コミュニケーションの機会が減り、疎外感を抱く従業員も増えています。

解決策:昼礼や雑談の場を設ける

従業員が孤独を感じないように、昼礼や雑談の場を積極的に設けるようにしましょう。定期的に話す場を設けることで、相談しやすくなります。また、従業員が孤独に感じずに済みます。また、チャットでオープンチャットを開設するのも1つの方法です。

新しい仕事を教えてもらえるか不安

テレワークの場合は、公平・公正に評価してもらえるかの不安と同時に、新しい仕事に挑戦させてもらえるのかという不安も抱きがちです。優秀な従業員であるほど、新たなスキルを伸ばして、キャリアを形成していきたいと思うものです。

とくに、新型コロナウイルス感染拡大により、日本経済が停滞する中で、キャリアを磨きたい人は増えています。そのため、新しい仕事がもらえず、キャリア形成できない職場は、大きなストレスになってしまうのです。

解決策:e-Learningを提供する

テレワークに移行しても、研修は行う必要があります。テレワーク中の研修を支えるものとして、e-Learningがあります。インターネット上で、研究カリキュラムを用意して、従業員が自発的に学ぶ場を提供することで、スキルを伸ばせる環境を整備できます。

昇進や昇格に影響が出ないか不安

従業員が人事評価を気にする理由は、給与に大きな影響を与えるものだからです。昇進・昇格をして給与を上げたいと思っている従業員もいます。このような従業員は、テレワークで労働状況が見にくくなっており、昇進や昇格に影響が出ないか、不安に抱く方が増えています。

解決策:1on1の面談の場を設ける

1on1の面談の場を定期的に設けて、上司と部下で話し合う機会を設けましょう。進捗状況や仕事の悩みの「報告」「連絡」「相談」をし合う場を設けることにより、上司がキチンと見てくれていると、安心感を従業員に与えることができます。

出勤者との関係性に関する不安

テレワークを導入している企業の中には、出勤して作業を行わなければいけない業務も存在します。このような場合、出勤者とテレワーク勤務者で不平等が生じて、人間関係にヒビが入るのではないかと不安に感じる従業員もいます。

解決策:Web会議や親交会の場を設ける

テレワーク中は、出勤者やテレワーク勤務者が集まる場を設けましょう。Web会議や親交会の場を設けるなどして、交流の場も設けることにより、チーム一体感が与えられます。チーム一体であることを感じられれば、関係性への悩みは払拭できます。 

(参考:https://www.nursing-hc.co.jp/business/health/tsushin/202105.pdf)

【その他】テレワーク中のメンタルヘルス対策

テレワーク中に従業員が抱える悩みの解決方法をご紹介しましたが、その他にも対策方法があります。ここでは、その他のメンタルヘルス対策をご紹介します。

勤怠管理で長時間残業を防止する

お互いの勤務状況を把握できないテレワークでは、隠れ残業が横行してしまいがちです。そのため、適切な勤怠管理で長時間残業を防止しましょう。

近頃は、PCのログ履歴から勤怠状況が把握できるものなど、勤怠管理を強化できるものが続々と登場しています。そのため、従業員に過重労働させないように、勤怠管理はしっかりと行いましょう。

エンゲージメント測定を実施する 

エンゲージメント測定とは、従業員にアンケート調査を実施して、具体的な人事施策へ繋げる取り組みをいいます。

アンケート調査からエンゲージメントを測定して、スコアが悪ければ、給与や福利厚生、働きやすさなど不満を解消していかなければいけません。従業員が働きやすい職場環境を実現するため、エンゲージメント測定が行われます。

テレワーク作業環境を整備する

部屋
  • 作業等を行うのに十分な空間が確保されているか
  • 転倒することがないよう整理整頓されているか
  • 空気の入れ替えを行うこと
  • 太陽光が入射する場合は、窓にブラインドやカーテンを設ける
照明
  • 作業に支障がない十分な明るさにすること
室温・湿度
  • 冷房・暖房・通風を利用して作業に適した温度、湿度になるように調整すること
机・椅子・PC
  • 目、肩、腕、腰に負担がかからないように、無理のない姿勢で作業を行うこと
  • 必要なものが配置できる広さがある
  • 作業中に脚が窮屈でない空間がある
  • 体型に合った高さである、または高さの調整ができる
椅子
  • 安定していて簡単に移動できる
  • 座面の高さを調整できる
  • 傾きを調整できる背もたれがある
  • 肘掛けがある
PC
  • 輝度やコントラストが調整できる
  • キーボードとディスプレイは分離して位置を調整できる

各従業員のテレワークの作業場についてヒアリングをして、必要に応じて機器を企業が支給してあげてください。上記は、厚生労働省が推奨しているテレワーク作業環境のため、満たしているかを従業員に確認してみてください。

教育研修関連の制度を整備する

新入社員は業務の流れがわかりません。そのため、安心して働けるようにメンター制度やフォローアップ制度を整備しておきましょう。また、テレワークの中では、オンボーディングが注目を浴びています。オンボーディングとは、新入社員に実施する教育プログラムです。戦力化するまでのプロセスが決められていれば、短期間で育成ができます。

(参考:https://www.mhlw.go.jp/content/000828987.pdf)

テレワーク中のメンタルヘルス対策事例

メンタルヘルス対策を実施している企業では、どのような取り組みが行われているのでしょうか?ここでは、テレワーク中のメンタルヘルス対策事例をご紹介します。

オープンな場のチャットを開設(サイボウズ)

サイボウズでは、グループウェア上にコミュニケーションの場を設けています。「最近、ちょっと体調が悪いな…」というつぶやきなど自由に発信できて、仲間や上司が、気づいてあげられるような仕組みが採用されています。

このようなオープンな場のチャットで発信できない従業員に対しては、エンゲージメント測定を実施して、不安や不満を感じていないかをチェックしています。

サイボウズ・DeNAから学ぶ!リモートワーク下における従業員のメンタルヘルス対策|HR-Study#10

カンパニーマイルを導入(リグア)

株式会社リグアでは、カンパニーマイルを導入しています。カンパニーマイルとは従業員の行動(出退勤・意見投稿・資格取得・業績貢献)に対して、マイルを付与することができる機能です。また、従業員が持っているマイルを感謝として、相手に渡すこともできます。このようなカンパニーマイルを導入して、従業員の士気を高めています。

(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000053061.html)

オンラインイベントの開催(NTTドコモ)

株式会社NTTドコモでは、社内イベントの取り組みとして、オンラインイベントを開催しています。NTTドコモでは例年行っているウォーキングイベントがありました。

このイベントが、新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で行えなくなりましたが、オンラインイベントに切り替えることに成功しました。個人戦と部署対抗戦が用意されており、運動するほどスコアが上がっていくなど、ゲーム感覚で楽しめる社内イベントになっています。 

(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000032515.html)

まとめ

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リモートワークに切り替える企業が増えています。リモートワークは時間や場所を選ばない働き方ができますが、相手の状況がわからず、相談しにくく、孤独感を抱きやすいです。

また、外出する機会が減ると、健康を損なわれてしまいます。このような問題を起こさないように、企業側は従業員の健康を考慮して、メンタルヘルス対策を行わなければいけません。今回は、さまざまなメンタルヘルス対策をご紹介しました。ぜひ、この記事を参考にメンタルヘルス対策に取り組んでみてください。