ベンチャー企業が「20人の壁」を超える方法とは?

ベンチャー企業が「20人の壁」を超える方法とは?

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「20人・30人の壁問題」という言葉をご存知でしょうか?

ベンチャー企業やスタートアップ企業にお勤めの方は、聞き馴染みがあるかもしれません。

ベンチャー企業やスタートアップ企業が軌道に乗り、成長し、社員が増える中発生する様々な問題を一般に「企業の壁」と呼びます。そして、社員の増加に伴い発生することから、◯人を超える際にぶつかる壁のことを「◯人の壁」と呼んでいます。

つまり、企業が拡大し、社員の数が徐々に増え、社員数が20人、30人を超える頃に大きな問題が発生しやすいといわれ、それぞれの段階で発生する問題のことを「20人・30人の壁」と呼んでいるのです。

今回は、「20人・30人の壁問題」の発生の背景や注意すべきポイント、そして解決策について詳しくご紹介します。

「20人・30人の壁問題」の発生の背景

どのような経緯で「20人・30人の壁問題」が発生するのでしょうか?

20人・30人という数字は、この人数を超えると、1人の経営者が全社員とコミュニケーションを取ることが難しくなると云われています。

起業当初は社員数が数名である場合が多く、経営者が社員1人ひとりとコミュニケーションをとって会社の方針や直近の課題について共有していくことができました。

また一つ一つの業務もそこまで体系化することなく、属人的に行われることが多いことも特徴です。

経営者と社員の距離が近く、スピード感のある経営が出来ています。

経営者は、社員一人一人の業務の進捗を確認しながら、的確な指示出しを行うことができ、重要な意思決定を全社員に伝え、スピード感を持って遂行することができます。

20名以下の組織であれば、経営者が社員全員とコミュニケーションを取りつつ、マネジメントしている状態が維持できます。ところが、社員数が20名を超えると、経営者が全員とコミュニケーションをとるのは難しくなり、業務もチームごとに体系化されていきます。

社員の中からマネージャーと呼ばれる役職が現れ、代表である経営者と社員の直接的なコミュニケーションの機会は、どんどん減っていきます。

その結果、目的や方向性の違いが生まれ、経営者との認識の行き違いから、トラブルが起きやすくなります。

このように、社員が増加することで、組織内の機能不全が起こり、思うように組織が前進しない状態「20人・30人の壁問題」が発生するのです。

問題発生の原因

では、何が原因で発生するのでしょうか?

マネージメント能力の問題

社員数の増加に伴い、組織が体系化されていくにつれて、マネジメント能力の問題に直面します。

今まで、経営者の下に横並びで存在していた社員が突如マネージャーとなるため、部門をマネジメントする能力が欠如していることが多く、また、急成長する組織に人材が追いついていかないことによって、ひずみが生じます。

このようなマネジメントの問題は、マネジメント能力の高い社員の存在によってスムーズに解決されることもあります。

組織内での共通認識のズレ

次に、組織内での共通認識のズレが挙げられます。

組織はビジョンや方向性がバラバラだと多くの問題が発生します。

例えば在籍歴の長さによって、社員の間で共通認識のズレはないでしょうか。

起業当初から在籍するメンバーと新しく入社してきたメンバーでは、組織のバックグラウンドに関する知識に差があるでしょう。

他にも、創業メンバーの間で浸透している言葉や社内で作られた造語など、新入社員には意味の通じない言葉はないでしょうか。これは新旧メンバー間での隔絶を生む原因となるなど、後々大きな問題に発展することも少なくありません。

そのため組織内での共通認識は、新しいメンバーが増えるたびに見つめ直し、伝えていく必要があります。

「20人・30人の壁」に付随して起こりうる問題

続いて「20人・30人の壁問題」によって起こりうる、その他の問題についてご紹介していきます。

先述したような入社時期による一人ひとりの感覚のズレ以外にも、様々なトラブル発生の可能性があります。

例えば、社員数が増えることによって、経営者を挟まずに従業員同士だけでコミュニケーションをすることが増えてくるため、経営者と社員との圧倒的なコミュニケーションの減少が生じます。社員の人数が増えてきた時こそ、コミュニケーションの量と質を担保するための仕組みづくりが欠かせません。

また起業当初は経営者が1人で行っていたことも、社員に役割分担していく必要が出てきます。それには、経営者が行っていたことを迅速に制度化していくことが求められます。

具体的には、人事評価やマニュアルの制度化、バックオフィスの機能整備などが挙げられます。できれば社員数が20人を超える前に、人事や経理などバックオフィス関係の担当者は確保しましょう。

担当者には、専門性を身につけてもらい、今後同じ担当の社員が増えていく時に教育できるようにしておきましょう。特に、人事制度が機能しないと、社員のモチベーション低下や離職率アップ、業務効率の低下など様々な障害が起きてしまうため、早めの対策を心がけましょう。

「20人・30人の壁」への対策

では、実際に従業員数が増えて企業規模が拡大した際、どのような対策が必要なのでしょうか。ここでは、「20人・30人の壁問題」を乗り越えるための対策をご紹介します。

仕組みづくり

「20人・30人の壁問題」を乗り越えるためには、経営者は組織の規模によって変化する状況を理解し、その時々の社員数に応じて、最適なマネジメントをしなければなりません。

そしてどの組織にも求められるのが、仕組みに支えられた経営への移行です。

社員を平等に評価するマニュアルの作成や、社員同士の交流を促す制度を設けることなどが挙げられます。また従来のように、経営者が従業員1人1人に指示することが困難になるため、経営理念が全社でしっかりと共有されていることが重要です。

創業当時の企業では、気心の知れた仲間のみで会社経営をしているケースが多く、何度も確認せずとも方向性や意識が共通しています。

しかし、起業時期から経営理念や企業ブランディングを明確化し、社内に浸透させることで、20人以上に拡大してきた際に、後から入社した社員にも共通意識を持たせることができます。また、創業時期から取り組むことで、長期的なスパンで見た際に、コストや労力を削減することができます。

規模拡大に応じて、新しく施策として仕組みづくりを始めるケースも少なくありません。

例えばキリンビール株式会社は、「お客様のことを一番に考える」という企業理念を浸透させるため、対話集会をスタートさせました。

この集会は経営者層や管理職層のみならず、社員全体が参加するよう制度化され、結果的に収益増加や企業の成長に繋がりました。

このように会社を成長させていく中で発生する問題に対して、仕組みづくりをすることで、解決できることがたくさんあります。

ぜひ社内にどんな仕組みづくりが必要か、検討してみましょう。

「20人・30人の壁」の解決策

最後に、「20人・30人の壁問題」が発生してしまった際の解決策を、いくつかご紹介します。

社員数や企業規模に合わせた解決策もありますが、今回は、どの段階でも導入できる解決策を3つご紹介します。

1on1ミーティング

一つ目は1on1ミーティングです。

1on1ミーティングとは、チームのマネージャーとメンバーが定期的に、1対1の対話時間を設けることです。

1on1ミーティングは、コミュニケーションの減少が起こりやすい「20人・30人の壁問題」に対し、特に有効です。

社員間での意思疎通に対し難しさを感じた際は、ぜひ1on1ミーティングを導入して、社員間のコミュニケーションを活性化しましょう。

また、1on1ミーティングは、コミュニケーションの活性化だけでなく、上司から部下への成長サポートにも繋げることができます。

週に30分という具合に、短いサイクルで長期的に1on1ミーティングを行うことによって、メンバーの着実なステップアップを促すことができます。

1on1ミーティングの導入は比較的簡単です。前日までにスケジュールを押さえ、お互いが当日までに準備しておくことだけです。

社内でどのくらいの頻度であれば実施可能か検討し、継続的に実施してみましょう。

社内表彰制度

二つ目は、社内表彰制度です。

社内表彰制度とは、勤続賞や新人賞など企業が、社員を独自に表彰する制度のことです。

表彰制度によって、会社が求めている人材を指し示すことができ、社員に会社の方向性を明示することができます。

単純に一般的な企業慣習としてではなく、社員のモチベーションアップや会社方針の浸透に繋げるために、実施することが重要です。

福利厚生の充実

三つ目は福利厚生の充実です。

経営者との距離感が離れてしまうと、社員のモチベーション低下や定着率低下を引き起こす可能性が高まります。

このような時、福利厚生の充実は、社員に働きやすい職場だと認識してもらうことに繋がり、会社へのポジティブな印象を与えます。

例として、ワークライフバランスをサポートするための手当などが挙げられます。

会社として福利厚生に充てられる予算には限りがありますが、社員のニーズを確認し、導入を検討してみましょう。

まとめ

今回の記事では、ベンチャー企業やスタートアップ企業が「20人・30人の壁問題」を乗り越えるための方法や解決策についてご紹介しました。

会社を長期的に成長させていくにあたっては、様々な問題やトラブルが発生します。

しかし、事前にこれらの問題の背景や要因を知っておくことで、少しでも早く解決に導くことができます。

ぜひ今回の記事を参考に、継続的な企業の成長を掴んでいきましょう。